第2話 フィクション 2
「なに、って──」
見ればわかるでしょ!という意思を込めてスニーカーの主を睨む。
そこには、男が居た。
「え、あ、東雲くん!?」
気怠げにぼんやりとした男、クラスメイトの
なんで、そんな彼がこんなところに居るんだろう!
例にも漏れず、私も彼に憧れている。
──甘ったるい少女漫画フィクションとは違う、ちゃんとしたリアル。それが今、私の目の前にある。
「……なに、してるの?」
再度そう聞かれて、思わず辺りを見渡す。もしかして、誰か他に人が居たりして──
「……? どうかした?」
私以外、だれも居ない。
居るのは私と東雲くんだけで、どうやら東雲くんは本当に私に話しかけているらしい。
「や、えっと、その……」
憧れの人を睨みつけてしまった。いくら気分が悪かったとはいえ──というか、あの独り言、聞かれてないかな……。
「その、そ、掃除当番で、ゴミを捨てに、来ました」
あぁ、もっと気が利いた台詞はないものだろうか。それこそ、そんなこと見れば分かる事だろうな。
「1人で?」
「え? あ、はい……皆、カラオケに行くって言って。」
こ、これは!
まさか、気にかけてもらっている?そんな都合の良い展開、現実に起こりうるの!?
「……そう。」
東雲くんは緩やかに頷くと、転がっていた紙パックを拾い,ゴミ箱へ捨てた。
あ、今更手伝ってくれた──なんて考えが頭を掠めた時、がこんという音と共にゴミ箱が持ち上がった。
「……えっ!?」
「手伝う」
東雲くんがゴミ箱を持ち上げていた。
手伝う、と言うことはゴミ箱を持ってくれるということらしい。そのまますたすたとごみ収集所まで歩いて行く東雲くんをぼんやりと眺めていて、彼が数メートルも進んでようやくハッとして落ちていた残りのゴミを素早く拾うと、慌てて彼を追いかけた。
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