ゲーム世界に転生したら農家の息子だった
ろうと
一章 プロローグ
第1話
一心不乱に木製のスコップを使って地面を掘った。汗まみれ、泥だらけになりながらも疑問に対する答えがそこにある筈だと期待しながら一生懸命に掘った。
子供の身体では力は弱く、掘り進めるスピードは遅いが、それでもしばらく掘り続けるとスコップが土とは違う何かに当たる手応えを感じた。石か、それとも...。
スコップを放り投げ、手ごたえを感じた場所を素手で掘っていくと何やら箱のような物の角っこが見えてきた。
身体もずいぶんと疲れが溜まっていたけどそれを目にした瞬間に期待感が一気に溢れてきて疲れも忘れて掘り進める手に力が入った。
そしてついにそれを掘り起こした。
自分の手、子供の手よりも一回り大きい、いかにも宝箱といったデザインの箱を手にして、思ってたより小さいなとか思いつつ、箱を開けた。
宝箱の中には米粒位の大きさの青い宝石がついたピアスが2つ。
予想した通りの物がそこにはあった。
「本当にここはゲームの世界なんだ」
「ネール!よかった!目が覚めたんだね!」
パッと目をさますと心配そうな顔した母ちゃんの顔があった。
「もう!心配かけるんじゃないよ。頭は大丈夫かい?」
頭?そういえば、いてててっ。
なんか後頭部が痛い。
寝てる身体を起こして痛いとこを触ると、腫れてるっぽい。
「母ちゃん、頭痛い」
「たんこぶ出来てるけど大丈夫みたいね。崖から落ちてそれだけの怪我で済んでよかったわよ。遊ぶときは気をつけなっていつも言ってるでしょ」
家の裏にある崖の上で虫を追っかけて、崖から落ちちゃったみたいだ。
どうやら頭を打って気を失ってたみたいだ。
「ごめんよ母ちゃん。次から気をつけるよ」 「父ちゃんも心配してたから、あんたが目を覚ましたって伝えてくるわね。今日はとりあえず大人しく寝ときなさい」
そう言うと母ちゃんは部屋を出た。
とりあえず寝とこ。
あー、頭がガンガンする。
母ちゃんに心配かけちゃたなぁ。
母ちゃん泣きそうな顔してたもんなぁ。
銀色の目が潤んでたもんなぁ。
でも銀色の目って、母ちゃんカラコンでもつけてんのかなぁ。
...カラコンってなんだ???
すると部屋に父ちゃんが来た。
父ちゃんも随分心配してたみたいで部屋に入ってくるなり僕を抱き寄せ頬擦りしてきた。
心配かけて申し訳ないけど、まるでハリウッド映画の悪役みたいな風貌のゴツいおっさんに、もじゃもじゃの髭を擦り付けられるのは微妙な感触。
...ハリウッドって、映画って、なんだ?
「ネール!無事でよかった!」
父ちゃんに抱きつかれながら頭の中にどんどん疑問が湧いて来た。
母ちゃんは母ちゃんだし、父ちゃんは父ちゃん。
でも、母ちゃんと父ちゃんの顔立ちとか瞳の色とか日本人の親としたら違和感だらけ...日本人...
「あ!?」
「ど、どうしたネール。頭が痛むのか!?」
急に思い出した。
僕は父ちゃんと母ちゃんの息子ネール。
だけど、山田恵一。
僕は山田恵一だったんだ。
日本で生まれ育ち、学校を卒業して、就職して、結婚して、子供が出来て、孫だっていた。
思い出したら止まらない。
山田恵一として一生を過ごした日々が走馬灯のように駆け巡り、一瞬で山田恵一としての86年間の人生を思い出した。
だけど今の僕がネールである事は間違いない。8才になった農家の一人息子。
まさか...輪廻転生ってやつをしちゃったのか!?まじかよ、生まれ変わりって本当にあったのか。
僕の様子をみて心配している父ちゃんをよそに驚きのあまり、その場で固まり続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます