第19話 姫とギャルと洞窟
・現在のプレイヤーの状態
レベル:57
HP:100/100
MP:60/60
最大スタミナ:300
武器:右手【ロングソード+5】、左手【ナイトシールド】
防具:頭【なし】胴体【姫のドレス】腕【姫の手袋】足【姫の靴】
アクセサリー:【逆転の指輪】
所持アイテム:【エンチャント・雷×2】【エンチャント・闇×2】【ショートボウ】【自血刀】
装備重量:28%
攻撃力:250
防御力:ダメージ5%カット
所持金:38,193G
保持経験値:65,423デッド
「それじゃ、まずはレベルアップね〜♡」
いい加減溜まった経験値を消化しようと“屍石”に触れた。
今回上がるレベルは8、多少貯めても確実に上がりにくくなっているわね。ちゃんと考えて振らなきゃ。
HP(ヒットポイント):12
MP(マジックポイント):8
ST(スタミナ):30+8=38
STR(筋力):27
DEX(器用):27
MAG(魔法適性):14
なので、中途半端に振り分けても仕方がないと、もう全てを割り切ってスタミナにガン振りしてやった。
「これでどう?」
「そろそろ火力上げても五十歩百歩になってくるからそれでいいと思うよ。同じ状況
ならウチもそーする」
ということで、本格的にダンジョンを進めていくことになった。
「それじゃ、とりあえず右に寄って歩いて」
「はーい♡」
なったのだけれど……。
「その次は道なりに真っ直ぐ。そろそろ敵が湧いてくるから盾構えといてね」
なんていうか、風菜の指示に従っている内に妙な感情が生まれてきた。ちょっと突っ込んでおこう。
「これ、目隠しプレイか何か?」
びっくりするぐらい奥が暗くて見えないし、なんか身動きがうまくとれないのよね、一瞬素の声に戻ってしまうぐらいには。
人生で一番松明という道具そのものが欲しくなった瞬間かもしれない。
「いや、流石にそこまで考えてないから」
「良かったぁ♡」
本人はそう言ってるけど、絶対安全圏で楽しんでるでしょ!
しかも、風菜は盾を構えるよう言ったのだから、当然敵が現れるワケで……。
「うわっキモ!」
目の前には全身に真っ黒な粘液状でスライムみたいになっている物体が纏わり付いていて、顔や素肌が焼け爛れた全裸の中年男性がいた。
忘れそうになるけど、現実に置き換えられたら女子として耐えられるもんじゃないわねこのゲームのエネミー……。
そして、全裸中年男性、違う、〈纏われる者〉はこちらに向かって飛びついてきた。
「あっもう、やめなさいコラ!」
ガンッ! と音を立ててその攻撃を受け止め、スタミナを1/4削られながらもダメージを受けるのだけは防げた。
いや、でも、黒い粘液の塊が自分に飛んできたのはちょっと気が滅入るわね……。
「よし、じゃあそこからダッシュで助走つけて合図したタイミングでジャンプしてもらえる?」
ガード後は速やかに走り抜けて〈纏われる者〉をスルーしていったのだけれど、その次の指示はまた厄介なものだった。
何もない暗闇の中をジャンプしろってのは酷じゃない? 微妙にだけど岩状の床に対して見えてる先の足場が途切れているように見えるんだけど?
ま、風菜を信じない理由はもうないし、言われたらやるだけだけど。
「分かった。早速行くよぉ〜♡」
少し呼吸を整えつつ、足を動かして走り出した。
スタミナの限り闇の中を走る、やるのはそれだけだ。
「飛んで!」
風菜の声を聞いて直ぐに私は足を地面に叩きつけながら大きく飛び上がる。
ダッシュによる助走もあって2mぐらいは飛躍したと思う。
流石に現実の私じゃこんな動き無理よね、無理して足の骨が折れそう。
「うん、成功☆」
「ちょっとヒヤヒヤしちゃったけど、上手くいってるならいいかな♡」
足元を見渡すと背後あたりは完全に断崖絶壁の崖だった。
奥を見るとさっき飛び上がった地点であろう岩崖が見える。
そうか、これは昔見たRTAでもあったダンジョンの半分をすっ飛ばすジャンプショートカットだ。3Dグラフィックゲーム故の自由な操作の中で、その自由度を利用して本来作り手が想定していない通路間を移動を行ってしまうというモノ。バグというよりは
もちろんこのジャンプショートカットもタイミングを間違ってたら落下死していただろうし、風菜も相当に緊張していたに違いないわ。そういう意味では、リスクのある賭けに勝利した報酬がダンジョンのギミック無視になる相応なバランスとも言えるんでしょうね。
「風菜ちゃんも結構怖かったんだ♡」
「いやいや、姫チーこそ怖かったんじゃないの? でも、なんかあそこで告白してから妙に息が合ってきたっていうか、多少の無茶も効率の内に変わったなぁって」
風菜も風菜でわかってきてるじゃない。これなら精神的にも楽に動けるわね。
「とにかく真っ直ぐダッシュして!」
「はぁ〜い♡」
「1回左斜め前に
「オッケイだよ♡」
それからは、半分以上道をスキップしたダンジョンを風菜の案内を元にサクサクと、全てのエネミーをスルーしながら駆け抜けて行った。本来は〈天界〉の〈大天使〉のような倒さないと先へ進めない中ボスエネミーもいるのだけど、ジャンプショートカットをしてしまったのでそのエネミーが塞ぐ壁の部屋を通ることすらなかった。
「そこの宝箱を開けて」
『入手:【強化石・大×3,】』
「そっちのも!」
『入手:【強化石・大×2】』
「あ、そこの光るアイテムオブジェクトにも触れてね」
『入手:【強化石・中×1】』
また、闇の中を駆け抜けていく中で、幾つか強化素材を回収した。
確かに“リビコン”では下手にレベルを上げてステータスを割り振るよりもまずは武器強化を施した方が攻撃力を上げられるところもあるし、こういうアイテム回収は安定チャートの中に組み込まれてるんでしょうね。
「よくこんな真っ暗な場所でエネミーどころかアイテム配置までわかるね〜♡」
そうしているうちに敵が周囲におらず一息付けるタイミングになり、どうしても気になったことを質問していた。
「1回さ、目隠しでクリアできないかなーって検証したことがあって、その時の練習のお陰かな? もちクリアはちゃんと出来たよ」
「心眼使い!?」
「太鼓を叩く音ゲーのリモコンでやったこともあるよー」
「超人過ぎない!?」
流石は“リビコン狂人”、想像の遥か上をいくプレイを平然とやっている。それはもう完全記憶能力だとか、天性の反射神経だとか、本人の才能以上の所業じゃないの。ある意味“リビングデッド・コンティネント”そのものへの愛で成り立ってる技術とすら言える。
そうやって会話を続けていく内に、今の間に聞きたいこともどんどん頭に湧いてきた。ならば全部聞いてしまおう、死んだら一生聞けないし。
「じゃあ、風菜ちゃんが1番キツかった初代“リビコン”関係のプレイってどんなの?」
「
「ハハハ、流石は風菜ちゃん」
「あ、今でも記録抜かれたら走り直してるよ、あくまで初めてのときはそう思ったってだけだから」
「ハハハハハハ」
こうやって話をしているだけでも、本当に凄まじい逸材に助けられているなと自分の豪運に感謝しちゃうわね。当然風菜本人にもだけど。
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