第13話

「でね、この前桜井さんに告白されちゃってさ。困っちゃうよねぇ」


「死ね」


 それから数日後の仁の誕生日。


 俺達はいつもと変わらず食堂で昼食を食べていた。


 いつもと少し違うのは、仁が食べているものである。


 仁は、弁当を食べていた。


 見るとコロッケやらタコさんウインナーやら卵焼きやら非常にうまそうなものばかりの、それはそれは豪華なものだった。


「桜井さんって料理上手いんだね。憧れちゃうなぁ」


 控えめに言って、ぶん殴りたかった。


 それはさておき、手作りの弁当まで渡しておきながら、一緒に食べようと誘っていない辺りまだまだ彼女は詰めが甘い。


 気が利かない仁も仁である


 ため息を吐きながら、目の前にいるろくでなしに声をかける。


「ちゃんとお礼言っとけよ」


「うん。それはもう特大のやつをね」


 こいつなら言うまでもないか。


 苦笑して、鞄からぬいぐるみを取り出して仁に投げつける。


「仁」


 一息ついて続ける。


「精一杯幸せを享受して死ね」


 仁は、くしゃっと笑っていた。


「んじゃ先に行くわ」


 空になった皿とトレイを持って席を立つ。


「あれ、どっか行くの?」


「ちょっと野暮用がな」


 スマホを開いて、『そいつ』に電話をかけた。


「よう、ツラ貸せよ」


 もうひとつだけ、やることがあるのだ。

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