第5話

 一言で言うと、セカイ系だった。


 主人公が世界を取るか、ヒロインを取るか。


 とてもかいつまんでいるが、こう表現したほうが分かりやすいだろう。


 前作に負けずとも劣らない、非常に面白い作品だったのだが━━━


「あれはハッピーエンドといっていいのだろうか…」


 主人公は世界ではなく、愛する人の手を取った。


 確かにラブストーリーとして見たのならば、これはハッピーエンドといっていい。


 しかし、主人公の選択によって世界は少しずつおかしくなっていくのだろう。


 これは、見方によってはバッドエンドともいえるのかもしれない。


「あたしは、万々歳のハッピーエンドだなって思いますよ」


 小鳥遊が自分の意見を述べてきた。


 よく見ると、目元が少し赤くなっている。


「作中でも言われてたじゃないですか。これは世界が元のあるべき姿に戻りつつあるのかもしれないって」


 そういえばそんなことを登場人物が言っていたような。


「だからきっと、あの選択は間違ってなかったんです」


 なんだか今日は、小鳥遊から情熱のようなものを感じる。


「でもいいですねぇ…あたしもあんな風に一途に想ってくれる人がいたら、他はもう何もいらなくなると思います」


 恍惚とした表情で、軽くトリップしていた。


 仕方がない。


 変なところまでトんでしまわないよう、ここは先輩として声をかけてやるか。


「お前だったら真っ先に自分で能力を使って金儲けに走りそうだよな」


 この後、小鳥遊によって俺の財布の中身がどうなったのかは、言うまでもない。

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