第4話
完全下校のチャイムを聴きながら、校門まで歩く。
『今日発売のゲームを買いに行く』と仁は一足先に帰ってしまったため、寄り道もせず、真っすぐ家に帰ろうかと思っていたのだが。
「先輩、ちょっと付き合ってくださいよ」
後ろから声をかけられた。
「断る」
見えている地雷を踏みに行くほど、俺は間抜けではない。
「今からあたしがここで一芝居打って、先輩をクソ男に仕立て上げることもできるんですよ?」
三股くらいでいいかな、などと声の主は恐ろしいことを呟いている。
下校中の生徒だらけの校門で、俺に対しての根も葉もない噂が広まってしまったら、これから俺は大手を振って登校できなくなるだろう。
「ちょうど暇で死にそうだったんだ、
振り返って、目の前の悪魔と会話をすることにした。
俺の一つ下の後輩である。
最初の出会いは、小鳥遊達の入学式が終わった頃だっただろうか。
友達とはぐれ、教室の場所が分からなくなったから教えてくださいと道を聞かれ、親切心が服を着て歩いている俺は、こいつを無事に送り届けてやったのだ。
道案内の間、小鳥遊となかなか意気投合した俺は、こんなことを口走ってしまった。
何かまた困ったことがあれば、聞きに来てくれ。
ご丁寧に自分のクラスまで教えてしまったのは、こいつの魔性のせいだろうか。
こんな感じで、仁とつるんでいない時は大体小鳥遊とつるむようになり━━━
「やったあ!先輩っていつも優しくって頼りになりますね!」
気が付けば、完全に舐められていた。
「それで?どこに行くんだ」
俺と小鳥遊は校門を抜け、少し歩いた先にある繁華街まで来ていた。
こんなところを教師にでも見られたら、また生徒指導室行きかもしれない。
「映画館です」
100mほど先を指差して、小鳥遊は言った。
「映画ねぇ」
映画は好きだ。
迫力ある映像や音を大画面で楽しむことができるのは、映画の醍醐味である。
しかし、問題は小鳥遊が何を観るか、だ。
別々の映画を観てもいいのだが、こいつの性格上、ゴネてくるのは明白だった。
無駄に体力を消耗したくないので、大人しく彼女の選んだものを観ることになるのだが、できればバッドエンドになりそうなものはやめていただきたい。
ただでさえ今日は疲れているのに、バッドエンドなんて見せられたら、俺は二日ほど寝込んでしまうかもしれない。
そんなことを考えているうちに、目的の映画館へと辿り着いた。
「今日はこれを観ます」
小鳥遊が胸を張りながら、ばんとポスターを叩く。
見ると、三年ほど前に大ヒットしたアニメ映画監督の最新作が写っていた。
あの映画は自分の中でも非常に印象に残っていたので、その監督の作品であれば、信頼できるものである可能性は高い。
ほっと胸をなで下ろし、ひとつ小鳥遊に聞いてみた。
「もちろん個人でチケット代を払うんだよな?」
「先輩はこんないたいけな後輩にお金を払わせる鬼畜だったんですか?」
最初に会った頃は、かわいかったんだけどなぁ
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