第3話
「二人はホントに仲いいよね」
げっそりとした俺と仁を教室で出迎えたのは、桜井だった。
あの後、結局俺と仁は書き終わっても解放されず、村田に放課後までみっちりと説教を受ける羽目になった。
「ただの腐れ縁みたいなもんだよ」
仁が疲れた声で返答する。
流石のこいつも、長時間の正座と説教は堪えたらしい。
「たまたま家が近所で、幼稚園から高校まで一緒だっただけだな」
クラスが別々になっても、クラスに馴染むまでは度々仁とつるんでいた。
男子というのは、友達の友達と知り合えばそいつとも仲良くなり、そこから他のグループの奴らとも仲良くなり、というのを繰り返し、粘菌のように交友関係を広げていく。
一から人間関係を始めようとするのは、少し気が滅入るものである。
「でも、そういうのって憧れちゃうな」
桜井は、俺達を見てそんなことを言う。
「なんでもかんでも言い合える友達って、そうそういないよ」
隣の芝生が青く見えているだけではないだろうか。
「桜井さんだって、友達ならいっぱいいるじゃないか」
仁の言葉に俺も頷く。
昼休みの一件といい、彼女には人を惹きつけるカリスマがある。
桜井率いるマヨネーズ軍結成も、彼女の人望故だろう。
「あれだって結構博打だったんだよ?」
漫才師のコント中に急に飛び込むようなものだし、と彼女は言った。
さらっと俺達の決戦を漫才だと言い放ったのはひとまず置いておくとして、そんなに謙遜しなくても、と思った。
学年の中でも成績優秀、弁も立ち、容姿端麗である。
まさに俺の描くハッピーエンドにふさわしい。
「そんなに謙遜しなくていいんじゃないかなぁ。桜井さんは素敵だって、皆思ってるからこそついてきてくれるんだよ」
仁の言葉に目を見開いてしまった。
こいつはいけしゃあしゃあとこんなことを口走る奴なのだ。
「…ありがとね、高尾くん」
ほら見ろ。
桜井だってちょっと引いて━━━
彼女の顔を見て、ある可能性が頭の中をよぎった。
いやあ、ない。
流石にないな。
桜井の綺麗に切りそろえられたショートカットから覗く真っ白な耳が、少し赤みを帯びていた。
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