第1話
俺が作者だったら、絶対にあんな結末は書かん」
昼休みの食堂で、俺はそう結論付けた。
「あの時の先生達の慌てようったらなかったね」
俺の幼稚園からの付き合いである
あの後、園長先生が俺達に別の絵本を読み聞かせることで事なきを得た。
園長先生からは、「あなたの感受性は素晴らしいわねぇ」と褒められたのだが、当時の俺にはなんのことだかさっぱり分からなかった。
「今でも泣いた赤鬼について熱く語る高校生なんて、多分キミぐらいだと思うね」
そう指摘されると少し恥ずかしい。
先ほどの講釈を、他の生徒にも聞かれていたかもしれないと思うと少し耳が熱くなってきた。
「キミのそういうとこ、嫌いじゃないけどさ」
にやにやしながら仁はそんなことをほざいてくる。
「やめろ。俺は男なんぞに興味はない」
気分を害されたので、頼んだ唐揚げ丼を口に放り込む。
「あはは。でもさ、僕はバッドエンドも好きだなあ」
仁は生粋のホラー映画好きである。
「積み上げてきたものとか過程とかをさ、最後の最後に台無しする感じ。あれはひとつの芸術だよ」
そんなことを言いながら、うまそうにコロッケを咀嚼している。
「…たまになんでお前とつるんでるのか分からなくなるときがあるよ」
まるで水と油である。
「やだなぁ、キミが水なワケないじゃないか」
「お前自身が油なのはいいんだな」
自己分析の鋭い奴だなと思った。
「醤油とごま油を混ぜたら美味しいドレッシングになるだろ?」
一度こいつをぶん殴っても許されるのではないだろうか。
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