自分のデッキからカードを5枚選択して相手に見せる。相手はその中から1枚を選択する。相手が選択したカード1枚を自分の手札に加え、残りのカードを墓地へ捨てる。

@unkonow931

プロローグ

 ハッピーエンドが好きだ。


 真の愛によって呪いが解けたり、七つのボールで皆が生き返ったり、全国大会で優勝したり。


 そんな胸がすくような物語を、幼少期から好んで読んでいた俺は、バッドエンドが大の苦手になっていた。


 足掻き、苦しみ、困難を乗り越えようとしてきた登場人物の彼らには、それ相応の報いがあって然るべきなのだ。


 思い返せば、このバッドエンドアレルギーなるものを発症したきっかけは、幼稚園の頃に園長先生に読み聞かせてもらった『泣いた赤鬼』が原因ではないだろうか。


 人間と仲良くしたい赤鬼のために、親友の青鬼が汚名を被ってまで彼に尽くすその姿は、日曜に早起きをする園児であった俺にはヒーローのように思えた。


 問題はその結末である。


「赤鬼くん、人間たちと仲良くして、楽しく暮らしてください。もし、ぼくが、このまま君と付き合っていると、君も悪い鬼だと思われるかもしれません。それで、ぼくは、旅に出るけれども、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。ぼくはどこまでも君の友達です」


 そう置き手紙を残して青鬼は姿を消し、赤鬼は涙を流すのだ。


 納得がいかない。


 あまりにも救いがないではないか。


 胸の中に次々浮かんでくる、もやもやとした霧がかかるような、そんな感覚。


 はじめて味わう『それ』に、当時の俺は一緒に聞いていた園児達の前で大泣きをしたものである。


 園長先生は「赤鬼さんみたいねぇ」と微笑んでいたが、泣き止まない俺や、釣られて泣き始めた子供の対処に追われる他の先生達の助太刀をするべきだったのではないだろうか。


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