束の間の庭
ヒヒーン、という甲高い
恋火は先ほどの風楽の言葉に対し、疑問を募らせた。
「一つ訊いていい?」
「一つでいいんですか?」
「どうして象の鼻は長いの?」
「象? うーん。それはきっと、嘘を吐いてばかりいたからでしょう」
「もう一つ訊く。どうして私がきみを救おうとしたら、記憶が無くなるの?」
「それはきっと、僕への愛情が深すぎたんですね」
「真面目に答える」
「すみません。そうですね。恋火さんが記憶を奪われたのは、あなたが禁忌を犯したからです」
「料理のつまみ食いをしたとか?」
「ふふ。そうかもしれません」
「真面目に答える」
「恋火さんが先に言ったんでしょう!?」
会話をする二人の前を、自動車ほどの大きさの宙に浮く円盤型の物体が横切っていった。それはさも当然というように、ゆっくり堂々と通過していく。その毅然とした態度に、こちらの疑問を挿む余地はなかった。
「それで?」
「はい」
「私は風楽を救うために何かをやらかして記憶を奪われた。誰に?」
「死神です」
「へえ」
「何ですか?」
「いや。そいつは大層恐ろしい格好をしているんだろうなと思って」
「恋火さんも見たことありますよ」
「どこで?」
「ねえ、そろそろ戻りませんか? 彼女たちの置かれた状況が気になります」
「あの重苦しい話か」
「話、ではなく、現実の出来事です」
「私たちがそれを知ってどうするの?」
「僕たちは仲間ですから。より良い方向へ進むようアドバイスをしましょう。彼女たちの次の生のためにも」
「あまり気が進まない」
「珍しいですね。恋火さんが駄々をこねるなんて」
「こねてない」
「そうですか。わかりました」
「こねてない」
「わかりましたって」
優しい風が吹く。頬を撫で、髪を踊らせた。
死は安らぎ。生は苦痛。
それならどうして、自分たちは生へ向かうのだろうか。生と死を繰り返すのだろうか。
魂の成長とは何だ? そんなに重要なことなのか? 苦しい思いをしてまで手にすべきものか?
恋火にはまだ、わからなかった。
もしかすると、それを知るきっかけになるかもしれない。
恋火たちは再び、あの球体の内部、
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