第13話
ドアを開けると小夜が立っていた。
小夜と嬉歌はドアの前で少し話をしていた。
話終わると嬉歌がこちらに向かってきて「小夜も一緒に話してもいいかな……?」と言った。
僕は頷いた。
嬉歌はそれを見てまたドアの方へ行った。
すこし待つと小夜と嬉歌が少し暗い顔をして戻ってきた。
(大丈夫だろうか……。)
そう思いながら話し合いを再開した。
しばらく沈黙が続き、小夜が口を開いた。
「夢叶はほんとに優くんを倒すことできないって思ってる?」
そのストレートな言葉が胸に刺さった。
本当に倒せない、倒したくないとは思っている。
だけどそれをどう証明していいか分からなかった。
ただ、「本当に思ってるよ。」と言うことしか出来なかった。
それを聞き、小夜は「そう。」とだけ返しそれ以上聞いては来なかった。
またしばらく沈黙が続く。
とても空気が重い。
なので僕は思っていることを全部2人に話すことにした。
「あのさ……。僕がなんでクローンを倒すことに賛成したか話してもいい?」
そう聞くと2人は1度互いに目を合わせ、そして頷いた。
「ありがとう。」と言い、僕は話し始めた。
クローンを倒し続ければみんなで帰るヒントがあるかもしれないこと、本当は誰も倒したくなんてないこと、そして今のみんなのギスギスとした空気をどうにかしたい、また仲良くしたいと思っていること。
全て話した。
2人は静かに僕の話を聞いてくれた。
話終わると小夜がこう聞いた。
「じゃあ夢叶はみんなで帰るためにクローンを倒すってこと?」
僕は頷く。
「それならよかった。」と小夜は言い、笑った。
久しぶりに見た。
誰かが笑っているところを。
それを見て嬉歌も頷きながら笑った。
(2人が笑ってくれてよかった。嬉しいな。)
と、僕は呑気なことを考えていた。
でも今くらいはいいだろう。
少しだけ休もう。
--------キリトリ線--------
優side
くらい部屋の中で1人。
もう慣れてきた。
その中でぽつりと声が漏れてしまった。
「誰か早く助けて……。俺がおかしくなっちゃう前に……。」
その声は広い空間に悲しく響く。
そしてその声に反応してくれる人はいなかった。
まだこの辛い時間は続くようだ。
(頼む。早く着てくれ。)
そう願うことしか出来なかった。
優side終わり
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