第5話


「危ない!」


その声は蓮の声だった。

声のした方を向くと蓮と蒼太がいた。

優は蒼太に向けて剣を振り下ろしていた。

蒼太はそれを持っていた盾で食い止め、こちらに被害が出ないようにしているようだった。


「急いで逃げるぞ!」


そう、蒼太は言った。

海月は頷いて僕の手を引いた。


「急いで!蒼太くんもいつまで持つか分からないから。」


蓮が少し強めに言った。

僕は訳の分からないまま蓮の行く方へついて行った。

着いた場所は少し大きめのログハウスのような場所だった。


「多分ここは襲われたりしないから大丈夫だと思う。」


そう言って蓮はログハウスの中へ入っていった。

僕たちもそれに続く。

中は綺麗で落ち着く雰囲気のいい感じの家だった。


リビングらしき場所に大きな丸テーブルとそれを囲むように6個の椅子が並べられていた。


そのログハウスに入り、すぐ僕は切り出した。


「小夜と嬉歌は……?」


2人は黙ったままだった。

もし2人も迷い込んでいたとしたら?

そう考えたらゾッとした。


「僕探してくる。」


いてもたってもいられなくなり、僕はログハウスから出ようとした。


「俺も行く。」


と、海月も言ってくれた。

だが、蓮に止められた。

「何も分からないまま外に出るのは危ない。」と。


そんな話をしていると、こう言いながら蒼太が帰ってきた。


「そっちは全員無事か?」


それに対し僕は頷き、こう質問した。


「蒼太は?大丈夫なの?怪我とかない?それと、小夜や嬉歌を探しに行かなくちゃ。」


僕はまだ少し取り乱しており、たくさん質問してしまった。

それに対し、蒼太は少しほっとしたように「俺は大丈夫だよ。それと……ほら。」と返した。


後ろには小夜と、うずくまり小夜の陰に隠れている嬉歌がいた。

それを見て僕は少しほっとしてしまった。



そして長い沈黙が続いた。

最初に口を開いたのは小夜だった。


「これ、なんなの?」


みんな少しの間黙っていた。

そして蒼太がこう言った。


「アナウンス通りだと、ゲームだろうな……。本体を倒すゲーム。」


とても言いずらそうに言った。

そしてまた沈黙が続く。

沈黙に耐えきれず僕が質問した。


「倒すってどうやって……?」


誰も口を開こうとしない。

それもそうだろう。

こんなこと話し合いたくもない。

僕だってそうだ。

できることならもっと楽しい話がしたい。

だが、そんなことできる状況では無い。

そんなことを1人で考えていると蓮が答えてくれた。


「みんなここに来る前に役職選択とかしなかった?その役職にあった武器や装備があるはずなんだけど、それを使って倒すんだと思う……。」


役職選択したな。

さっき蒼太が使っていた盾も役職の装備ってことだろう。


「なるほど。ありがとう。」


僕がそういうとまた沈黙が続いた。

空気がとても重い。

そんな中、嬉歌が小さくこう呟いた。


「本体を倒すって……?優くんを倒すってこと……?」


その声はここにいる全員に聞こえていたはずだ。

だが、僕を含め誰もそれに答えられなかった。

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