第21話◆ギルドに戻るまでが仕事
魔砲の弾を顔面にくらってレッドドレイクが仰け反るがそれで倒れる事はなく、腹と後ろ足に張り付いたテロスとアスを振り払い、後ろ足で立ち上がる。
後ろ足で立ち上がって首を伸ばしたドレイクの高さは、七メートル程だろうか。そしてその位置で口を大きく開き、魔力がそこに収束していくのが感じられた。
「まずいっ! ブレスが来るぞ!! シールドの後ろへ!!」
エリュオンがブレスを防ぐ為に大型の光の盾のような防御魔法を展開し、ポーションで魔力を回復させつつ離れた位置にいつアテッサ達にも防御魔法を投げた。
直後、レッドドレイクから大きな火球が吐き出され、光の盾にぶつかって弾けた。
火球が弾け周囲に炎と爆風が広がり、チリチリとした熱気が全身をこするような感覚に覆われる。
飛び散った炎の光で薄暗いダンジョンの中が、熱く明るく照らされる。
火球を防ぎ切った光の盾が、ガラスが割れるように砕け散り、魔力を一気に消費したエリュオンが、ガクリと床に膝をつく様子を眼下に見た。
飛び散った炎により照らされて、天井に出来たレッドドレイクの影。
そこに俺は影渡りをし、そこから落下しながら、火球を吐き出し終え口を開けたままのレッドドレイクの顔の前で、魔砲を構えた。
ギョロリとしたレッドドレイクの大きな眼と視線がぶつかった。
レッドドレイクが俺に食らい付こうと、口を開いたままこちらに迫る。
「お前が喰らうのはこっちだ」
魔砲の耐久ギリギリまで魔力を込めて、大きく開かれたレッドドレイクの口の中に弾を撃ち込んだ。
柔らかい口の中に吸い込まれた魔力の弾が音を立てて爆発した。
「テロス! 後は任せた!」
魔砲の反動で後ろに吹き飛びながら、後をテロスに引き継ぐ。
「任された」
俺の撃ち込んだ魔砲の弾で、レッドドレイクの顎が吹き飛んでいるのが見え、そこを狙い、地上から頭を串刺しにするようにテロスが槍を投げる様子が、落下する俺の視界に入った。
やべー、もう一度影渡りで地上に降りるつもりが魔力を使いすぎた。
このまま落ちるとめちゃくちゃ痛いぞ!?
なんて思っていたら、ふわりとした風が吹いて落下が止まった。
「ナイスキャッチだ」
風の魔法で受け止めてくれたキルキルにお礼を言う。
「感謝の気持ちはボーナスで!!」
ああ、もちろん今回のメンツにはしっかりボーナスを付けておこう。
「終わったかな?」
ポーションで魔力を回復させたエリュオンが、大きな狼に寄り添われながらやって来た。
「みたいだな」
視線の先では、テロスの槍で頭を上から下へと貫かれたレッドドレイクが、床に崩れ落ちていた。
「あっちも、終わったみたいだね」
キルキルの言葉に振り返ると、返り血まみれのザーパトとその周辺に転がる大量の魔物の死体。
爺さんめちゃくちゃ元気だな!? いつものボケ爺はもしかして演技なのか!?
少年パーティーのメンツもゼェゼェと肩で息をしているが、全員無事で何とか立っているようだ。
アテッサは元気に魔物の死体を回収している。
ああ、魔物の素材はギルドの収入にもなるからな。こんな状況でもギルド職員の仕事を忘れないのは、流石である。
「下に落ちたのはこれで全員か?」
ザーパトを振り返り、確認を取る。
「わしが来た時には、この子らだけじゃったわい」
「落ちたのは僕達だけです。ありがとうございました」
ペコリと少年が頭を下げる。今朝のクソ生意気な態度とは正反対である。
「まだ、安心するのは早いぞ。無事にギルドまで帰って、報告書を書き終えるまで気を抜くな」
そうだよ、帰って報告書も書かないといけないんだよ。
おうちに帰れるのは深夜かなぁ……明日は朝からなんだよなぁ。まさか、ギルドにお泊まりして、明日そのまま仕事とかならないよな。
休日出勤めちゃくちゃがんばったし、明日休ませてくれないかな。世の中そんなにあまくないよなぁ。
回収できた魔物の死体は解体回して精算しないといけないし、流石にこの量は持って帰れないから回収班を呼ばないといけないし、調査がまだだから回収班のメンバーも限られてくるじゃないか。回収の指揮までしろとか言われないよなぁ。
回収しきれなかった魔物は見なかった事にしたくなるな。アテッサがいるから無理か。
とまぁ、仕事の終わりが見えないのだが、とりあえず全員無事に生きていて良かった。
この後、元の階層に戻る為、崖を登る時にテロスが気を利かせて、体力を消耗しているザーパトや少年少女達を馬で上まで運んでくれた。
その際、テロスの首がポロリといって、首芸に耐性がない少年少女達が腰を抜かす事になった。
お前、絶対わざとやっただろ!?
レッドドレイクと戦っている時は、どんなに動いてもちゃんと頭はくっついていたもんな!?
大丈夫か? 漏らしてないか?
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