第15話◆ギルド職員の休日

 最後の最後で少し面倒な冒険者の相手をする事にはなったが、残業は一時間足らずですんだ。

 あの少年少女のパーティーは、素直にDランクの依頼と簡単なCランクの依頼を受けて行った。

 素直でよろしい。よその町のギルドに行っても迷惑かけんなよ。


 夜勤明けの日は休みと決まっている。

 つまり、今日は休みなのだ。

 爽やかな朝の空気、目に染みるほど眩しい朝日、澄み渡る空!!

 いい天気だなぁ! 俺は帰って寝るけれど!

 夜勤明けの朝は、これから仕事へ向かう人々とすれ違いながら、ちょっとした優越感に浸る。

 ふははははは!! 君たちが働いている間、俺は家でダラダラ寝るのだ!! どうだ、羨ましいだろ!!

 妙にバタバタした夜勤の後とは言え、明るいうちに帰れるのはいいな。思わずスキップしたくなる。


 開店して間もないパン屋で焼きたてのパンを買い、アパートメントに戻ってきた。

 いつものようにモッフモフの番犬ケルベロスが、猛スピードで走って来て俺の目の前で腹を上にしてゴロンと転がったので、これでもかというほどワシャワシャと撫でてやる。

 あまり地面でゴロゴロすると、土まみれになって管理人さんに怒られそうだけれど、怒られるのはユウイチロウであって、俺ではないから気にしない。


 ひとしきりユウイチロウと遊んだ後は、部屋に戻ってシャワーを浴び、貯まった洗濯物を、洗濯用の魔道具に突っ込んで、買ってきたパンを囓る。

 洗濯が終わるのを待ちながら、少しだけ部屋の掃除もする。洗濯物を干したらゆっくり寝るのだ。


 夜勤明けなので休みと言っても、どこかへ出かける元気はない。

 いい天気の日に寝るのは勿体ない気がするが、日頃から残業残業で睡眠時間を削られまくっているので、寝られる時に寝るのだ。

 幸い夜勤明けは、ギルドも気を遣ってくれるので、切羽詰まらない限り連絡は来ない。

 夜まで寝て、夕飯を食ったら明日に備えて早く寝るぞ!!

 早く目が覚めたら少し出かけてもいいかな。


 洗濯物を干したらベッドにゴロン。

 シャワーを浴びてさっぱりして、飯を食って腹も膨らみ、天気が良いので部屋の中は暖かい。

 連勤後の夜勤で疲れた体に、心地の良い睡魔がやって来る。

 夜勤明けはギルドから連絡が来る可能性は低い、今日はこのまま目が覚めるまで思う存分寝る事ができる。






 チリンチリンチリンチリンチリンチリンッ!!






 職員用の通信用魔道具が鳴る音で目が覚めた。

 夜勤明けに連絡が来ないと思ったか!? 緊急事態なら普通に連絡が来るよ!!

 え!? 何かあったのか!?


 窓の外を見れば、西の空が少しずつ赤くなり始めている。

 思ったより寝ていたようだが、こんな時間にギルドから連絡なんて、間違いなく碌でもない事だ。

 

「……はい、ユーグランスだ」


 しょうもない用事であってくれと思いつつ、通信用の魔道具を取った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る