第4話母のガン

丁度、大学受験の冬に母は倒れた。

検査をすると、子宮がんのステージ3だった。4年前に乳がんの手術をしたのだが。

僕は大学まで進学して、教師か警察官を目指していた。

だから、受験が失敗したら働き、合格したら夢を追いかけようとした。

母は1ヶ月で退院した。


既に、大学の法学部に合格しており、全ての準備は僕がした。

入学金が必要だ。

母は自分のガン保険で下りたお金を、入学金にした。

僕は心が痛かった。だが、4年の頑張りで卒業したら、親を楽させようと思っていた。

大学はホントに金がかかる。

バイトを3つ掛け持ちした。


だが、それは1年しか持たなかった。

僕は自主退学して、夢を諦め肉体労働に勤しんだ。

貯金箱からお金を数える生活はここで終了した。

また、転職して団体職員になると数十万単位で家に仕送りしていた。それは、毎月ではなく、農家が不作の時に工面し、5万円程度は毎月送っていた。


そして、一昨年、父は亡くなった。実家は取り壊し、土地を売った。

母は実家を出て、うちのマンションに住んでいる。

小銭を数える生活をしていた頃と比べて生活は向上した。だが、まだまだ貧乏である。

田舎の土地代は、めちゃくちゃ安いのだ。

今日の晩御飯は、また、カップラーメンにしよう。

何だかんだ言っても、今が幸せだ!


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貯金箱から小銭を出して 羽弦トリス @September-0919

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