自尊心を保てないときに
僕は勉強も運動も苦手だ。
取り立てて優れたところがない。
町の歯医者さん、白瀬先生は大人だ。
僕のような子供をどう思うのだろう。
僕は先生に聞いてみた。
先生は優しい笑顔をみせる。
「君がいるというだけで貴重なことだと思うよ。君は生きていることを誇ればいい」
自分の存在を肯定する。
それが自尊心を保つための一歩なのかもしれない。
「やっぱり先生はすごいよ。先生ならたくさん誇れるところがあるんだろうね」
先生は、いつものようにはははと笑う。
「先生の一番の自慢は何?」
先生はしばらく考え、待合室を見渡した。
「町のみんなの歯を守っていることだね」
待合室にはひとっこ一人いない。
「僕は予防を重要視しているんだ」
先生は嗚咽している。
自尊心を保つのはなかなかに難しいようだ。
〜自尊心を保つための建前は、自分をより苦しめる〜
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます