常識について
町の歯医者さん、白瀬先生のところへ行く途中に、ゴミがポイ捨てされていた。
横断歩道を渡ろうとすると、信号無視をした車にひかれそうになった。
まったく大人たちは常識がない。
先生に言いつけよう。
「先生!最近の大人は常識を知らないよ」
先生は大きくうなずいてくれた。
「確かに常識がない大人が多いね。悪いことをする人が多い。だけど君の常識だけで何もかも判断してはいけないよ」
僕は首を傾げた。
「君の常識は君だけの判断なのだよ。人の数だけ常識があると言っていいね。みんなが普通だと思うことをそれぞれ尊重しなければいけない」
やはり先生は大人だ。
常識という言葉を軽はずみに使っていたことが恥ずかしい。
僕は反省した。
「先生、大人はやっぱり子供に物事を教えるのが常識なんだね」
はははと先生が笑う。
そんなのどかな時間をすごしていると、クリニックのドアが荒々しく開かれた。
現れたのは怖いお兄さんだ。
お兄さんは怒鳴っている。
しかし先生は、はははと笑って対応する。
「借りた人が借金を返すというのは君の常識だ。しかし僕の常識では、返せる人が返すことになっている」
お兄さんが先生になぐりかかる。
危ない!
先生は倒れ、虫の息でお兄さんに伝えた。
「僕はもう、歯を削れない。あとは彼に返してもらってくれ」
子供に肩代わりを!
「詳しい話は当人同士でするのが常識だ」
一方的な常識!
倒れたまま先生は薄目を開けて僕を見つめている。
その常識は尊重できない。
〜常識は曖昧だ〜
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