第7話 渦 『ヤヴァい写真』
珍しいツーショット。(堀先輩が一方的に絡んでいるのは見かけたことある)
「ガリ勉じゃありませんけど何か?」
橋本先輩が先に行こうとするのを「待て」と、堀先輩が阻止する。
「お前、朝美と同じクラスだろ? 彼女を苦しめてる奴を突き止めたいと思わないか?」
「え? そうですね」
そこまでは思ってなかったけど。
それに捨て垢で批判コメする人をどうやって突き止めるつもりなの?
加奈が言ってたもの。
単なる暇人が面白がってやってる可能性もある、と。
「そこでな、この橋本千尋が登場ってわけよ」
嫌がる橋本先輩の肩を抱いて堀先輩がニヤリと笑った。
「だから何でそこで俺が出てくるんだ?」
それ。
付き合わされる橋本先輩に同情してしまう。
「山城、お前だって、こいつに塩振って貰ってから弓道の腕、戻ったじゃんか」
「それはそうですけど」
少しだけ霊感がある私は、もしかしたら、橋本先輩もその類いなのかもとは思った。
でも。朝美の鬱とか、インスタの悪質なユーザーとか、ちょっと別の問題のような気がする。
私の言いたいことがわかったのか、堀先輩は、ポケットからスマホを取り出して、インスタの画面を私に見せた。
「これ、朝美の最新の写真な。何が写っているように見える?」
私は眉をしかめて、遠目でその写真を見た。
前に加奈に見せた貰った写真より新しいもの?
あの時に見たのは、普通に友達とカフェでケーキ食べてるところだったり、朝美が楽しそうにしてる写真ばっかりだった。
「この自撮り、暗いですね」
それらに比べ、この一人で写ってるのは、いつもみたいにハイライト加工をしてないからか、地味でかなり薄気味悪い。
学園のアイドルのオーラなんて微塵も感じられない。
「別に、素の朝美がこれならファンはそれでいいんだよ。気になるのは彼女の背後にある鏡」
堀先輩が画面を指し示す。
「鏡……?」
薄暗い部屋。
よく見たら、朝美の背後に壁掛け式の姿見鏡があった。
そこには、スマホを手に持ち自撮りをする朝美の背中が写っている。
髪が長いので、それだけで少し不気味だけれど、よく目を凝らしてみたら、うっすらと黒い影に目を二つくりぬいたような顔らしきものも写っていた。
「これ…」
「見た奴は心霊写真だって大騒ぎしてる」
見るだけで息が詰まる。
私は、堀先輩の隣にいる橋本先輩の顔を見上げた。
先輩の反応を見たかったから。
しかし、先輩は面倒臭そうにして、堅く結んでいた口を開いた。
「たとえこれがヤバい写真だとしても、俺には関係ない」
「は!? 何言ってんだよ? あの長野朝美だぞ? お前だって知ってるだろ?」
「知らない。そんな女」
冷たい返しに堀先輩は顔を赤くしていたが、橋本先輩は知らん顔をして自転車に跨り私と堀先輩を置いて行ってしまった。
「なんだよ、あいつ。美女には興味ないのかよ。山城には塩くれてやったくせにな」
「知り合いじゃないってことじゃないですか? それにこのネットの写真が心霊だとしても、橋本先輩が塩を持っていけばどうにかなるってものじゃないと思うんですよ」
「そうかもしんないけどさぁ! せっかく朝美の家にお邪魔できるチャンスだったのに!」
「堀先輩、下心見えすぎです」
この時の私は、橋本先輩は、私と同じレベルの霊感の持ち主なんだろうと、それくらいにしか思ってなくて。
「しかし、こんな薄気味わりぃ自撮りをアップしちゃうって、朝美ちゃん、相当まいってんじゃね?」
「その写真見せないでください、私も気持ち悪いです」
「そう言うなよ、お前んち神社だろ? 何とかできない?」
「私は神様とか信じてないので」
――橋本先輩があと半年もしない内に居なくなるなんて、思ってもいなかった。
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