Ⅶ
「ふーん、そっか」
三咲がちょっと不安そうな表情を見せた。
翔也が、あまり他の女子となれていないから気を使っているのだろう。
(まぁ、三咲があまり詮索しないでくれるところは、これはこれで楽なんだけどな)
「そうだ。俺にも俺の休日があるってもんだ」
そう言ったところで、三咲の不安そうな視線は変わらなかった。
(……でも、こんな俺を見て、三咲が一人にしてくれるわけないよな)
翔也は今、三咲を見て少し悩んでいる。この後、もし、一緒に行動することになれば、三咲は友達を選ばず、自分を選んでしまうかもしれない。
翔也は普段のやり取りを思い出す様に、なるべく、触れないように話をする。
「まー、その……なんだ? 今日は、家に居づらくてな。気分を変えると、いいだろ? 本当のことを言えば、今日一日は、静かにしておかないといけないんだよ」
「何かあったの? 家はそうでもないけど」
「お前の家は関係ないんだよ。何というか……。夏海がな……熱を出したんだよ。だから、今日は一人で外に出ているんだよ」
「そうだったんだ……」
(今頃、夏海は眠っているんだろうな。早く、良くなっているといいんだが……)
翔也は夏海の事を思い浮かべる。
(それにしても夏風邪って、普通の風よりもきついんだよね。帰りにりんごか甘いものでも買っていってやるか)
「それにしても夏海ちゃんが体壊すなんて、珍しいね」
三咲に言われ、翔也はすぐに答える。
「そうだな。ああ見えて、あいつ、繊細だからな。兄妹だと、身近にいる他人だからな」
「身近にいる他人ね。それ分かるかも」
三咲はうんうんと、頷く。三咲には、一花と二葉がいるから翔也の気持ちが分かるのだろう。
(分かるのね。あいつらも以心伝心とかしてそうだしな……)
「身近の人間ほど気づきにくいところもあったりする。そういう時こそ、厄介なんだよ」
「一花も二葉も、違う人間だから、私も行動が読めない時があるわ」
「三つ子、なのにか?」
「三つ子だからだよ。三つ子だからこその悩みだってあるの!」
三咲が声を張り上げる。
(おいおい、周りにその声は迷惑すぎるだろ……)
「ほら、俺の家は夏、クーラーとか節約しているし、夏風邪も熱中症から来るんじゃないか? 知らんけど……」
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