ⅩⅥ
夕日の堤防は、来た時よりも美しかった。
「きれい……」
二葉は自転車を漕ぎながら景色に見とれていた。
夕方は、お年寄りやランニングをしている人が多く、昼間とは真逆の感じがある。
「そうだな。二葉は、平気なのか?」
「何が? ほら、俺と二人っきりだし、まぁ、あの二人は性格があの性格だから仕方ないが、お前は……いや、違うな。お前ら三人一緒だな」
「どういう事なの?」
二葉は困った表情をしていた。
翔也の何を言っているのか、分からない意図を完全に理解することができない。
そもそも、翔也にとっては、三つ子と一緒に居ること自体が奇跡である。
普通、こんな奇跡などはない。
翔也は自分で言うのをやめたが、それ以上言ったら、また、面倒なことになりかねないと思ったからである。
「いいや、別に気にしなくてもいい。ただ、俺の独り言だ」
「そ、そう……」
二人は自転車でそれぞれの家に帰る。
「じゃあ、また」
「ああ、明日な……」
二人は手を振って、家の中に入った。
そして、二人を追っていた達巳達もまた、二人が家の中に入ったのをしっかりと確認すると、それぞれも明日の練習があるため、自分の家に戻ろうとする。
「それで、どうだった?」
「なにが?」
「分かるだろ? あの二人の関係だよ」
「どうかしらね。うまくいったのか、いっていないのか、私にも分からないわ」
「そうかい。ま、これで三人とも一直線上の同じスタートラインに立ったというわけだ」
「あんた、一応、山下君の味方なのよね?」
唯は、達巳の顔を窺う。
「そうだな。俺的には翔也が一番だが、残りの三人で誰を応援しているか、までは教えられないね」
「気に喰わないわね……」
「はははっ!」
達巳は笑う。
(本当にこの男、苦手だわ)
唯は改めて思った。
明日も部活がある。そう思うと、憂鬱になるのか、少し思うところのある唯だった。
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