ⅩⅤ

「そ、そうです……。私にはお姉ちゃんと妹がいるというか……。同じ年だからちょっと分からない感じ……かな?」

「本当に三つ子なのね。それで、あなた達、三人はそれぞれ好きな人がいるわけ?」

 唯は、当然、話の流れで続けて訊いてみる。

「たぶんだけど……皆、翔ちゃんの事が……好き。小さい頃からの幼馴染だから……。でも、私が一番、翔ちゃんの事が……」

「ああ、もういいわ。それ以降の言葉は大体分かるから……」

 唯は本をそっと閉じる。

(どうみても、アニメやドラマのような話ね。面白いと言えば、面白いけど……。これはこれで、うずうずするわね)

 唯はそっぽ向いて、クスクスと笑った。

「分かったわ。でも、あの男を落としたいなら、なぜ、告白しないの? 好きなんでしょ?」

「好きだけど……勇気がないというか……怖いというか……。翔ちゃんの好きな人が分からないし……」

「なるほどねぇ……。あんた、臆病って訳なんだ」

「……」

「いいわ。私が、サポートしてあげるから告白でもしなさい!」

「え、ええ⁉」

 二葉は意識が飛んで、倒れそうになる。

 クラスメイトがこっちを見る。

「ば、馬鹿! 声が大きいわよ、あんた!」

 唯は、小声で話しかける。

「だ、だって……迷惑じゃ……」

 二葉は、申し訳なさそうな表情をする。

 唯は、髪の毛を掻きながら、面倒くさそうな表情をする。

「私にとって迷惑なのは、あんたがずっとうじうじしている所よ。それならとっとと相手の心を掴んで、付き合いなさい」

 唯は、ため息をした。


   ×   ×   ×


「なるほどね。唯ちゃんが、二葉ちゃんの背中を押したのは中学校の頃だったか。いやー、面白い話を聞いた」

 達巳は、腹を押さえながら笑った。

「はぁ、話すんじゃなかった」

 ため息をつく唯。

「でも、それで二葉ちゃんと仲良くなったんだし、いいんじゃないの? 今となっては、親友なんじゃないの?」

「そうね。親友ね。あの子が、私の事をどう思っているかは分からないけど、そうだといいわね」

 二葉は、微笑み、空を見上げた。

 二人は翔也たちより先回りして、自転車を移動させ、翔也たちが来るのを待つ。


 一方、その頃——

 翔也と二葉は、山を下りてから焼き鳥とたこ焼きを買って、自転車を止めている駐輪場へと向かっていた。

「二葉はこれからどうするんだ?」

「え?」

「ほら、帰るのはどうせ一緒だけど、他に見たいものとかあるかな? と、思ってな」

「そうだね。私は十分に楽しんだし、今日はこれ以上、高望みはしないよ。高望みすると、逆に幸せが逃げていきそうだからね」

「そうか。それならいいんだが……」

 翔也は難しそうな顔をしていた。

 それを見た二葉は、キョトンとした表情をして、首を傾げる。

 二人は駐輪場にたどり着き、翔也はかごに夏海へのお土産を入れる。

「さて、帰るか……」

「そうだね」

 二人は自転車を漕ぎ始めて家に帰る。

 帰る時間帯は、来た時よりも人通りは少なく、自転車をスムーズに進むことができる。

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