達巳はとぼけた顔をする。

「ああ、聞いてない。どういう事なんだ? なぜ、竹下と、その……二葉がいるんだ?」

 翔也がさす方には二葉の姿があった。

 二葉は唯の後ろに隠れて、コソコソと唯に話しかける。

「ねぇ、な、なんで、こんな所に翔ちゃんがいるの?」

「ええと……。そうね、私が北村君を呼んだら来たみたいな感じ?」

「ええ~! 聞いてないよ、そんなの! 唯ちゃん、騙したの⁉」

 そう言われて、唯は二葉に肘打ちをする。

「いたっ! な、なんで肘打ちするの⁉」

 二葉は腹を押さえながら唯に言った。

「それはあんたが分かってないからよ」

「え?」

 唯が振り返って二葉に小声で話しかける。

「あんた、このままでいいの⁉」

「え?」

「一花ちゃんに三咲ちゃん。二人に抜かされて、このままでいいわけ?」

「そ、それは……」

 二葉は困った表情をする。

「いいからシャキッとする!」

「はいっ‼」

 と、二葉は唯から背中を押されて、バランスを崩し、翔也の前に立たされる。

「―と、大丈夫か?」

 翔也は、右腕で二葉の体を支える。

「あ、うん……。ありがとう……」

 二葉は礼を言った。

「本当にうまくいくのかい?」

「んー、私の考えが甘かったかしら?」

「いや、あれはあれでいいんじゃないか? あの二人らしいし」

「そ、そうかしら?」

 その様子を見ていた唯は呆れており、達巳は面白そうに見ていた。

「さて、今日はこの四人で祭りを楽しもうじゃないか」

「はぁ⁉」

 翔也は声を上げる。

「ちょっと待て。達巳、もしかして、最初からこれが目的だったのか?」

「さぁ、それはどうかな? そんなことより先に進もうぜ」

 達巳は最後のたこ焼きを食べ終わり、近くのごみ箱にごみを捨てた。

 翔也も食べ終わり、ごみ箱に捨てる。

「あーちょっと、待っていてくれ」

 達巳は突然声を上げる。

「なんだよ。まだ、何か企んでいるのか?」

 翔也は達巳を、じーっと見る。

「いや、ただのトイレだよ。トイレ」

 そう言って、達巳は男子トイレに向かってトイレを済ませ、すぐに戻ってくる。

「お待たせ、お待たせ。じゃあ、行こうか」

 四人は、今山の階段を上り始める。


 男子トイレの裏側——

 トイレに行ったはずの達巳は、スマホを鳴らした。

「もしもし」

『やっほー、達巳君』

「相変わらずだね。それで翔也の場合、あんな感じでいいのかい?」

 達巳は誰かと電話していた。

『まぁ、まずまずだね。一花ちゃんや三咲ちゃんとは、何かしらイベントあったみたいだけど、流石に二葉ちゃんだけじゃあ、面白くないよ』

 電話の声は女の子の声だった。

「それもそうだね。でも、君も結構なお節介だと思うよ」

『そうかな? 私は面白ければそれでいいかな?』

「いやいや、これは見てる側にしてみれば面白くなるかもしれないけど、それをサポートする側も意外と疲れるんだぜ」

『分かっているよ。じゃあ、報告待っているから』

「分かったよ」

 達巳はそのまま電話を切った。

(さて、始めますか。唯ちゃんの考えはある程度分かっているし、それを俺が応用すればいいだけの話)

 達巳は、ニッ、笑い、決意した。

「おおおっ!」

 翔也は武者震いをする。

「あんた、大丈夫?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る