Ⅳ
達巳はとぼけた顔をする。
「ああ、聞いてない。どういう事なんだ? なぜ、竹下と、その……二葉がいるんだ?」
翔也がさす方には二葉の姿があった。
二葉は唯の後ろに隠れて、コソコソと唯に話しかける。
「ねぇ、な、なんで、こんな所に翔ちゃんがいるの?」
「ええと……。そうね、私が北村君を呼んだら来たみたいな感じ?」
「ええ~! 聞いてないよ、そんなの! 唯ちゃん、騙したの⁉」
そう言われて、唯は二葉に肘打ちをする。
「いたっ! な、なんで肘打ちするの⁉」
二葉は腹を押さえながら唯に言った。
「それはあんたが分かってないからよ」
「え?」
唯が振り返って二葉に小声で話しかける。
「あんた、このままでいいの⁉」
「え?」
「一花ちゃんに三咲ちゃん。二人に抜かされて、このままでいいわけ?」
「そ、それは……」
二葉は困った表情をする。
「いいからシャキッとする!」
「はいっ‼」
と、二葉は唯から背中を押されて、バランスを崩し、翔也の前に立たされる。
「―と、大丈夫か?」
翔也は、右腕で二葉の体を支える。
「あ、うん……。ありがとう……」
二葉は礼を言った。
「本当にうまくいくのかい?」
「んー、私の考えが甘かったかしら?」
「いや、あれはあれでいいんじゃないか? あの二人らしいし」
「そ、そうかしら?」
その様子を見ていた唯は呆れており、達巳は面白そうに見ていた。
「さて、今日はこの四人で祭りを楽しもうじゃないか」
「はぁ⁉」
翔也は声を上げる。
「ちょっと待て。達巳、もしかして、最初からこれが目的だったのか?」
「さぁ、それはどうかな? そんなことより先に進もうぜ」
達巳は最後のたこ焼きを食べ終わり、近くのごみ箱にごみを捨てた。
翔也も食べ終わり、ごみ箱に捨てる。
「あーちょっと、待っていてくれ」
達巳は突然声を上げる。
「なんだよ。まだ、何か企んでいるのか?」
翔也は達巳を、じーっと見る。
「いや、ただのトイレだよ。トイレ」
そう言って、達巳は男子トイレに向かってトイレを済ませ、すぐに戻ってくる。
「お待たせ、お待たせ。じゃあ、行こうか」
四人は、今山の階段を上り始める。
男子トイレの裏側——
トイレに行ったはずの達巳は、スマホを鳴らした。
「もしもし」
『やっほー、達巳君』
「相変わらずだね。それで翔也の場合、あんな感じでいいのかい?」
達巳は誰かと電話していた。
『まぁ、まずまずだね。一花ちゃんや三咲ちゃんとは、何かしらイベントあったみたいだけど、流石に二葉ちゃんだけじゃあ、面白くないよ』
電話の声は女の子の声だった。
「それもそうだね。でも、君も結構なお節介だと思うよ」
『そうかな? 私は面白ければそれでいいかな?』
「いやいや、これは見てる側にしてみれば面白くなるかもしれないけど、それをサポートする側も意外と疲れるんだぜ」
『分かっているよ。じゃあ、報告待っているから』
「分かったよ」
達巳はそのまま電話を切った。
(さて、始めますか。唯ちゃんの考えはある程度分かっているし、それを俺が応用すればいいだけの話)
達巳は、ニッ、笑い、決意した。
「おおおっ!」
翔也は武者震いをする。
「あんた、大丈夫?」
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