第4章 春の大師祭りの桜の下で
Ⅰ
テストも終わり、一週間が過ぎた休日の土曜——
いつも通り、朝の九時から十二時までの三時間、テニスに打ち込んでいた翔也と達巳は、フェンスの前で座り込んでいた。
「で、今回のテスト、やけに点数良かったな。一体どうしたんだ?」
と、水筒に入れたスポーツ飲料を飲みながら、達巳は翔也に突然訊きだした。
「あ? 別に山を張ったところが当たっただけだよ。ま、その場しのぎくらいにしかならなかったけどな……」
「いやいや、それで点数が上がるなんて、さすが一花ちゃんだねぇ」
「?」
翔也は、達巳の話を聞いて一瞬、何かが引っ掛かった。
(あれ? 俺、一花に教えてもらったって、こいつに話したか?)
じー、と達巳を見る。
(いや、言ってないな。ただ、勘で言ってみただけか?)
「なんだ? 今、『なんでそんなことを知っているんだ?』って、思っているだろ? そりゃあ、俺の人間観察をなめるなよ。ここ、ここが違うんだよ」
達巳は、頭を指さす。
「で、どうなんだ? そうなんだろ? 俺に隠し事しても無駄なんだよ」
達巳は翔也の方を見て言った。
「はぁ……。なるほどな。で、お前は何が言いたいんだ?」
「んや、別に……何も……」
「あ、そう……」
二人は休憩が終わると、片づけに入る。
コート内を整備し、ボールを片づける。
二人がボールを片づけているとき、達巳が言い出した。
「そういえば、昨日からあれが始まっているよね」
「あれ?」
「なんだ。覚えていないのか? 春と言えば、あれだよ、あれ。お大師さんの祭りだろ?」
「ああ、昼間にあるあれね。そういや小学校以来行ってなかったな」
「暇なら行かないか? たこ焼きくらいなら奢ってやるぞ」
「んー、でも、あんまり祭りとか好きじゃないんだよな。せっかくの休みだし、土曜日だろ。家族ずれも多いからな」
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