Ⅸ
「はい、はーい」
夏海は手を洗ってきて、リビングの扉を開ける。
翔也は、テーブルの上に荷物を置き、洗面所へ向かう。
再び、リビングに戻ると、ソファーに座り、夏海は翔也の置いた荷物の中身を一から確認しながら冷蔵庫へと一つずつ入れていく。
翔也は、ポケットに入れていたスマホを手に取り、LINEのメッセージを開く、すると、何件か着信が入っていた。
そこには新規登録の表示と、テニス部のグループ、そして、達巳からのメッセージだった。
とりあえず、達巳のメッセージを見る。
『翔也、暇?』
『一応、勉強しているかな? と、思って連絡してみた?』
『ああ、そうそう。お前のIDを知り合いに教えたから連絡来ていると思う』
『知らない奴じゃないから見るように…』
『まぁ、俺から言えた義理ではないんだが、せいぜいがんばれよ』
と、メッセージが書いてあった。
「はぁ?」
翔也は新規登録メッセージの所を見る。
すると、思わぬ人物の名前が書いてあった。
——有馬一花——
(おいおい、一体どうしたんだ?)
そして、メッセージの送信が十数分前になっている。
(と、なると、バスの中でメッセージを送ったってことか……)
翔也はメッセージの内容を見る。
『お、お疲れ様です』
『あの……少し相談がありまして……』
『明日、その……勉強会とかしませんか?』
(なんで?)
そのメッセージを見て、疑問に思った。
そもそも、一花は勉強会とか開かなくとも学年トップクラスの成績を持つ人物であり、それに比べて、学年の中で中の上を行ったり来たりしている翔也にとっては疑問になっても不思議ではない。
(さて、どうしたものか……)
翔也は、少し悩みながらもメッセージを送る。
『ええと、なんで、勉強会を?』
と、送るとすぐに既読が付く。そして、返信が来る。
『そ、その……あれです! ほら、人と勉強すると効率的にいいかと!』
『だったら、二葉や三咲とすればいいんじゃないのか?』
翔也はすぐさま送り返す。
『そ、それはそうなのですが……だ、駄目でしょうか……?』
『いや、だめってことはないが……。後一日しかないのに今からやっても無意味だと思っているからな……』
『ですよね』
と、一花は返信する。
『ま、でも、どこが出るのかは知っておきたいな。山を張るのは嫌いではないが……どうせ、明日は暇だし……』
『で、でしたら!』
『……分かったよ。で、どこでやるんだ?』
『明日、私の部屋でどうでしょうか?』
と、一花が答えた瞬間、
「はぁああああああああ⁉」
と、翔也はいきなり叫ぶ。
「お兄ちゃん、うるさい!」
夏海に注意される。
「はい……」
翔也は、息を整えてゆっくりと返信をする。
『い、いいのか? その……迷惑じゃないか?』
『ぜんぜん、迷惑じゃないですよ』
『分かった。明日、行くよ』
『はい。お待ちしております』
そして、一花とのやり取りが終わった。
「ふぅ……」
翔也はゆっくりと息を吐く。どっと、疲れが出た。
「お兄ちゃん、どうかしたの? さっきから騒がしいけど……」
「い、いや、何でもない」
「そう、ならいいけど……」
夏海は、不思議そうに翔也を見ながらリビングを出た。
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