Ⅷ
「そうか。チョコレートね……」
翔也は小さく頷いた。
「でも、なんでそんなことを訊くのですか?」
疑問に思った一花が質問した。
「まぁ、暇な時に食べるものはどれがいいのか、そんなことを思っただけだ。別に大した理由ではない」
「そうなんですね」
一花は、はぁ、と胸をなでおろす。
その後、翔也は真剣に選び、再び違うところへと歩き出す。
「あの、どこに行くつもりなんですか?」
「ジュースだよ、ジュースを選びに行くんだ」
一花は翔也の後を追う。
一番端にある商品棚の手前を右に曲がり、ペットボトルのジュースが並んでいる棚の前で足を止める。
翔也は、二リットルのオレンジジュースを手に取ると、一花の方を振り返る。
「夏海は、おそらく肉のコーナーの近くには、来ているはずだから帰るぞ」
と、二人は夏海がいる方へと歩き出す。
「あ、あの……」
一花がいきなり話しかけてくる。
「なんだ?」
「最近、三咲と仲いいですよね? 何かあったのですか?」
一花は、勇気を振り絞って聞いてみた。
「ああ、そのことか……」
頭を掻きながら、翔也はちょっと安心する。
「まぁ、別に一緒に遊んだだけだよ。それ以外何もしてねぇ。そもそも、何かないといけないのがおかしいだろ? 俺は、別に誰が相手だろうと今まで通りに普通に接しているし、何とも言えないな……」
「そうですか……」
「他に何かあるか?」
「いえ、すっきりしました。なんとなく、心のどこかでモヤモヤがあったので……」
「そうか」
「はい!」
二人は、夏海が丁度、お肉のコーナーにいるのを確認する。
それからは夏海と合流し、さっさと食材を買い込み、雑貨屋へと向かい、時間になるまで十分に楽しむ。
帰りも一緒にバスに乗り、家に帰る。
「じゃあ、ここで……」
一花が二人に言う。
「ああ……」
「じゃあね。一花ちゃん!」
三人はそれぞれの家に入った。
「ただいま!」
夏海が先に上がる。
翔也は夏海の後に続き、両手に持った買い物袋を玄関に置く。
「つ、疲れた……」
靴を脱ぎ、再び両手で荷物を持て、リビングへと向かう。
「夏海、開けてくれ……」
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