「そうか。チョコレートね……」

 翔也は小さく頷いた。

「でも、なんでそんなことを訊くのですか?」

 疑問に思った一花が質問した。

「まぁ、暇な時に食べるものはどれがいいのか、そんなことを思っただけだ。別に大した理由ではない」

「そうなんですね」

 一花は、はぁ、と胸をなでおろす。

 その後、翔也は真剣に選び、再び違うところへと歩き出す。

「あの、どこに行くつもりなんですか?」

「ジュースだよ、ジュースを選びに行くんだ」

 一花は翔也の後を追う。

 一番端にある商品棚の手前を右に曲がり、ペットボトルのジュースが並んでいる棚の前で足を止める。

 翔也は、二リットルのオレンジジュースを手に取ると、一花の方を振り返る。

「夏海は、おそらく肉のコーナーの近くには、来ているはずだから帰るぞ」

 と、二人は夏海がいる方へと歩き出す。

「あ、あの……」

 一花がいきなり話しかけてくる。

「なんだ?」

「最近、三咲と仲いいですよね? 何かあったのですか?」

 一花は、勇気を振り絞って聞いてみた。

「ああ、そのことか……」

 頭を掻きながら、翔也はちょっと安心する。

「まぁ、別に一緒に遊んだだけだよ。それ以外何もしてねぇ。そもそも、何かないといけないのがおかしいだろ? 俺は、別に誰が相手だろうと今まで通りに普通に接しているし、何とも言えないな……」

「そうですか……」

「他に何かあるか?」

「いえ、すっきりしました。なんとなく、心のどこかでモヤモヤがあったので……」

「そうか」

「はい!」

 二人は、夏海が丁度、お肉のコーナーにいるのを確認する。

 それからは夏海と合流し、さっさと食材を買い込み、雑貨屋へと向かい、時間になるまで十分に楽しむ。

 帰りも一緒にバスに乗り、家に帰る。

「じゃあ、ここで……」

 一花が二人に言う。

「ああ……」

「じゃあね。一花ちゃん!」

 三人はそれぞれの家に入った。

「ただいま!」

 夏海が先に上がる。

 翔也は夏海の後に続き、両手に持った買い物袋を玄関に置く。

「つ、疲れた……」

 靴を脱ぎ、再び両手で荷物を持て、リビングへと向かう。

「夏海、開けてくれ……」

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