第4話 捜索
役に立たない相棒の意見を聞き。レイモンドは、
「さて、どう探したもんかね……」
と、考えを巡らせていると、ふと周囲の視線が自分に集まっていることに気が付いた。
(何でこんなに見られてるんだ?)
そう思ったがすぐに、
「おい、チビッ子。そういや、お前は他の人に見えてないし声も聞こえないって言ってたよな?」
「そうよっ! っていうか、チビッ子じゃないし、ディアって言ったでしょ!」
「つまり……、俺は今周りからは一人で喋ってるように見えてるってことだよな……?」
「当然ね!」
レイモンドは急いで視線を逃れるために、最初にディアを見た裏路地入った。気付いてるなら言いやがれ、と毒づきながらも思考を女神探しに切り替える。
「考えたところで、聞き込みするくらいしか案がないんだけど」
「じゃあ、それで行きましょう!」
レイモンドはガックリうなだれつつ、聞き込みを開始する。
********************
当然のことながら手掛かりを掴むこともなく、夜に差し掛かろうとしている。
ディアの言う、綺麗で金髪の長身で清楚な服を着ている。と言う曖昧過ぎるアウラ像では探すことは難しいだろう。
大都市では無いが、この街も結構な広さがあり人口も5千人ほどが暮らしている。
「今日はここまでにして帰るか。もう晩ご飯の時間だし」
「仕方無いね。帰りましょう!」
「ん? 天界に帰るのか?」
「ぇ? レイの家に決まってるじゃない」
何となくそんな気がしていたので、レイモンドは無視して歩き出した。
********************
「ただいま、母さん」
「お帰りなさい。遅かったわね」
「うん、帰りに友達と遊んでたんだ」
「そう」
今朝から変わらず無表情な母親を見て、
(ウザくてもいつもの方がいいな)
と、問題の解決を急がないといけないなと心に決めた。そして、部屋に戻るとディアが話し掛けてきた。
「レイのお母さんって愛想ないねぇ」
「いや、いつもなら抱き締めてきてキスしようとするから毎日大変なんだよ」
「それは……、愛が重いね……」
「まぁ、それでも今よりかはマシかもな」
ただ、このままでは見つかる気がしない。そこで、ディアから少しでも情報を聞き出そうと試みる。
「なぁ、女神アウラが行方不明になるのって今回が初めてなのか?」
「ん~、記録に残ってる分だと今回で108回目かなぁ」
(煩悩かよ!?)
「108回目とか多すぎだろ……。ちなみに、成功率は?」
「アウラ様が誰かとお付き合いしてたって聞いたことないよ?」
「全敗かよ!? 愛の女神名乗ってるのおかしいだろ!」
「常に愛に生きてるから、愛の女神なんだよっ!」
「そうかよ……。まぁ、それは良いとしていつもはどうしてたんだ?」
「えっとね、いつもだとお酒の神様のところに行って、お酒かっぱr…頂戴して、他の神様のところで一週間くらい飲み続けて愚痴言ってるみたい?下界に降りたのは今回が初めてみたいだけど」
「たち悪過ぎだろ……。じゃあ、明日は酒場を探してみるか」
********************
翌日、学校を終えたレイモンドは東西南北4ヶ所ある酒場の中で一番近い、南の酒場に言ってみることにした。
「いらっしゃ……、チッ……ここはガキのくるところじゃねぇぞ」
「わかってる。ちょっと人探しをしてるんだ。大酒飲みの女の人って最近来てない?」
「いや、ウチにはそんな女来てねぇな。あぁ、でも昼間に西の酒場の親父が酒足りないから売ってくれって泣き付いてきたな。」
(それだっ!)
「ありがとう。今度また来るよ」
「へっ、もっとデカくなってから来な。ガキんちょ」
酒場を後にしたレイモンド達は急いで西の酒場へと向かった。
「アウラ様いるかな?」
「恐らくいるはずだ」
そう言って、西の酒場の扉を開けると
「……あぁ、……いらっしゃい……」
と、げっそりした顔の店主がいた。レイモンドは店主の顔色のことは無視し、アウラの容姿を伝え店に来なかったかを聞いた。
「あぁ……、あそこの昨日から入り浸ってる人じゃないかな……。帰ってくれなくてこっちも困ってたんだよ……」
店長が指差した先には、周りに樽を置き、樽から掬って酒を飲んでいる……
……鬼女がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます