第二章

第9話 [トビペンギン]上

 おいらは今日も森の中で薬草を集めていた。スキル[抽出]と[錬金]を覚えたのでポーション作り熟練度上げをしている。いつか役に立つかもしれないし出来ることはやって行きたい。


 草が揺れる。現れたのは[トビペンギン]

モンスターだ!おいらは戦闘態勢に入る。トビペンギンは、おいらを見つけると勢いよく近づいて来た。速い!やられる。


「やっと見つけましたぞぉぉ!」


「????」


「貴方様は、ポン太様ですね?」


「そうだけど……。」


 トビペンギンは、嬉しそうに腕をパタパタさせている。おいらと君初対面だと思うんだけど……もしかしてどこかで会ってたりした?


「初めまして、私トビペンギンのペンペンと申します。実は頼みがあって探しておりました。」


「おいらを探してた?」


「はい!どうやらモンスターの全ての言語を操る動物がいると噂を聞いてやって参りました。」


「えっ。誰が言ってたの?」


「すみません。あくまでも噂でして、誰が言ってたかまでは……。」


「そうだよなぁ。噂だもんな。」


「ポン太様は、とても優しくてお願い事を聞いてくれると、ここ最近の多くのモンスターに広まっています。」


 モンスターと動物の違いは体内に魔石があるかどうかで決まる。魔石を持っていると力が増しやすいが、体が力で溢れると暴走して人を襲う。人はそれを恐れてモンスターを敵対視している。モンスターも殺されたくないので反撃を繰り返し終わらぬ戦いを繰り広げていた。


「おいらに出来ることなら頑張るよ。」


 そう言うと、一枚のハンカチを取り出した。


「このハンカチの持ち主に返したいのです。」


「どうして?」


どこから見ても人間が使っているハンカチにしか見えなかった。


「私がまだ幼い頃、人間に襲われて腕に傷を負いました。森の中に隠れて過ごしていると、決まった時間に狩りをする少女と出会いました。隙を見て襲ってやろうと思い私は物陰から隠れて少女の様子を見ていました。


 とても強く。そして気高くモンスターを狩る姿は美しくて見えました。日に日にもっと近くで見たい。もっと近くで見たい。その気持ちが大きくなり不用意にその女性に近寄ってしまったのです。


 私は治りかけた腕にその少女が放った弓が刺さってしまいました。そして慌てた様子で私に近づき何かを言っていたのですが私には、伝わりません。


 伝わってない事がわかったのか、少し残念そうに私に刺さった弓矢を抜いてハンカチを巻いてくれました。そして私の頭を撫でて帰って行きました。返そうと思い何日も待っていたのですが、その日から少女は来ることがありませんでした。


 私はそろそろ人間を襲うモンスターになってしまいます。だからせめてこのハンカチだけでも返したいのです。お願いします。どうかお助けください。」


 ペンペンは、深く頭を下げた。おいらは頷き、ハンカチを預かる。おいら、このペンギンの力になりたい。


「その人の特徴ってわかる?」


「とても美しい少女としか……。」


 少女って事は子供だろう。それさえ分かれば後は匂いを辿っていけばなんとかなる。おいらはハンカチに残るわずかな香りを覚えた。


「その少女が現れた森ってどこにあるの?」


「寒冷の森です。」


寒冷の森って事はここからそう離れていないな。向かってみるか。


「わかった。時間がかかると思うが、ここで待っててもらってもいいか?」


「わかりました。」


 ハンカチをアイテムボックスに仕舞い、おいらは寒冷の森に向かうのであった。


>>>>>>>>>>>>>>>>

〜寒冷の森〜


 始まりの森を抜けて一時間。おいらは寒冷の森に着いた。うぅ〜寒っ。匂い残ってるかな?しばらく探し回ってると二匹の雪の子を見つける。雪の子は人形みたいな可愛い容姿をしていて和服の服を着ていた。


「リスだ!」

「変なの」

「可愛いね。」

「可愛い。」


「雪の子さん。少女を見なかった?」


 交互に喋る雪の子においらが話しかけた。雪の子はモンスターではなく妖精だ。気に入った土地に長く居座る習性があるから何か知ってるはずだ。


「知らない。」

「しらなぁい。」

「人間は見た!」

「人間は見た?」


「人間はどこで見たの?」


「あっち!」

「あっち?」


 雪の子たちが指を刺した。


「ありがとう」


 おいらはお礼を言って刺された方向に向かう。少し進むとハンカチと同じ匂いを見つけた。最近この森に来たみたいだ。おいらは匂いを辿り森を抜ける。段々と匂いが強くなる。顔を上げると村があった。


>>>>>>>>>>>>>>>>

〜ミナナ村〜


 村だ。おいらたちが住んだるマルタ村より少し大きな村。マルタ村より人口が多いのか、人が多く出歩いている。おいらは匂いが強くなる方に向かって行くのであった。

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