第6話 [冒険者]中

 おいらは今、木の実を集めている。そこらじゅうにあるので見つけるのは難しくないがあのブラッドの事だ。数が少ないとか言っていちゃもんを付けてくるな違いない。


 と言う事でありったけの木の実を集める為に根こそぎアイテムボックスに入れた。


 数時間ほど経ち、アイテムボックスには千を越える木の実が集まった。


 このぐらい集まればどんないちゃもんを付けられてもなんとかなるだろう。おいらはオオカラスの元へ向かって行った。


「終わったか?ポン太。」


 ニヤニヤと馬鹿にした目を向けるブラッドも前にアイテムボックスから木の実を出して行く。


「これじゃ…。おい。えっ?!」


 どんどん積み上げられる木の実にブラッドは、戸惑いを見せる。おいらは千個の木の実をブラッドの前に積み上げた。


「バカもーん!」


 えっ?たくさん集めてきたのになんでおいら怒られてるの?


「こんなに集めたら他の動物が食べるものが無くなって困るじゃろ!常識と言うものを弁えろ!!」


 そう言うとブラッドは翼で風を起こし木の実を飛ばしてしまった。


「ごめんなさい。」


 おいらはシュンとなった。まさか鳥に常識を教わるなんて……。


「まぁ良い。俺の背中に乗れ!約束通り連れて行ってやる。」


そう言うとブラッドは、おいらの所まで来て背中を低くしてくれた。その背中に乗ってバサバサと翼を羽ばたき空を飛んだ。


 すごい。自由に空を駆け回るブラッドはとても美しく少し羨ましかった。おいらも空を飛べたらなぁ。


「飛べるのが羨ましいと思っているのだろう?」


ブラッドがおいらに話しかける。なんでわかったんだ。まさか、読心術?!


「それぞれ生きて行く上で役割があるんのじゃ。ポン太にもきっと何かあるはずなのじゃ。自分と違うやつを羨ましがるな。」


「おいらに一体何があるの?」


「自分で考えろ。人から貰った役目などなんの役にも立たん。そうだなぁ。お前はどう死にたい?」


「……みんなに囲まれて笑って死にたい。」


「ならその為にどうすれば良いかを考えろ。ほら着いたぞ。」


 ブラッドが着陸する。辺りには沢山の赤い薬草が生えていたが、必要な分だけ持って帰る事にした。


「それだけでいいのか?」


「うん。他の人が取りに来る時、全部無くなってたら可哀想だから。」


「ハハハッ。そうかそうか。では帰るぞ!」


そう言っておいらを乗せて元居た場所に戻るのであった。


「ありがとう。ブラッド」


「また遊びに来い。今度は適量の木の実を持ってな。」


「もぅ。からかわないでくれよ。」


 おいら達は、笑い合いながら別れるのであった。ブラッドって何者だろう?妙に落ち着いてるし説得力もあって……おいらと転生者だったり。ないない。考え事をしながら村へと向かう。


 ジメジメしたエリアに戻ったぞ。敵が居ない事を確認しながら戻ろう。おいらは警戒をしながらゆっくりと前に進む。


 「ギャオオオオオオオアオオオオアア」


 グレード・モスの鳴き声が近い。あれ……誰か戦ってる?戦闘音が聞こえたので草陰に隠れながらグレード・モスに近づいた。居たっ。おいらはグレード・モスを視界に捕らえる。うぉぉ。やっぱデケェ。圧倒的な迫力に押されながら更に近づいた。


 ルイン??グレード・モスと戦っていたのはルインだった。


 どーしよ。流石に無理だよ。何度か窮地を乗り越えたおいらでもあれは助ける事が出来ない。隙を作ったらルイン逃げてくれるかな?逃げないよなぁ。


 うーん。おいらは作戦を考える。頭の中では逃げろ。おいらに敵う相手じゃない。そんな言葉ばかりリピートされる。うぁぁ。なんも思い浮かばない。


 そうしている間にルインは吹き飛ばされ気を失った。ルインに向かってグレード・モスの大きな口が開く。


 あぁ。もうダメだ。そう思ったおいらはルインの元へ駆け出していた。本当。何やってんだろ。死ぬってわかってるのに。体が勝手に動いたんだ。助けろって。



「コノハ!!」


 おいらは、グレード・モスに向かって葉っぱを放つ。おいらの方を向いたグレード・モスが糸を吐き出す。糸に絡まりおいらは動けなくなった。


 あっもうダメだ。死んだ。おいらは自分の死を悟る。


「カァァァァァァァァ」


 次の瞬間グレード・モスが地面に叩きつけられていた。目を開くとそこにはブラッドが相手を押さえつけている。


「何やっとんだ!さっさと逃げんかい!」


「糸が絡まって動けない。」


「ったく。仕方ないのう。」


 ブラッドが軽く翼を振るとおいらに絡まってた糸が切れた。


「ブラッドありがとう!でもルインが!」


「その男なら放っておくのじゃ!」


「嫌だ!」


「人間なんぞろくなもんじゃ無いぞ。それでも救うのか?」


「うん。」


「五分だ!それ以上は持たん。」


 おいらはルインに近づいて頬を叩く。起きる気配がない。急がなきゃいけないのに。うぅーー。そうだ!


「豆鉄砲!」


  おいらはルインの鼻の穴に木の実の種を埋め込んだ。するとルインがフガッと音を立てて目を覚ます。


「うぅぅう。俺生きてる。鼻の穴に種?何が起きてる?」


 そんなの良いから早く逃げるよ!!おいらは必死にズボンの裾を引っ張った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る