第5話 [冒険者]上

「おい!だれか!包帯を持ってこい!人が倒れてるぞ!!」


 おいら達の村にボロボロになった冒険者が現れた。冒険者は村に入るとパタリと倒れ、看病を受ける為しばらく村長の家にいる事になった。


 小さな村では、冒険者が来ると大騒ぎになるのだ。荒くれ者が多い冒険者は、村の皆から嫌われている事も多い。良い冒険者もいれば悪い冒険者もいる。村では療養が受けた後出て行ってもらう事になっていた。


「おかぁさぁーん。冒険者見に行っても良い?」


「ダメです。」


「えぇぇー」


「チョコレートみたいな可愛い子は食べられちゃうかもよ?」


「ーーーひっ!!」


どうやらチョコレートは冒険者に興味が有るらしく昨日からずっとこんな感じだ。やはり子供達からすれば強い敵と戦う冒険者は憧れの様だ。おいらも気になるしこっそり見に行ってみようかな。


 ご飯のどんぐりを食べ終わりおいらは外へ向かう。村長の家ってどっちだっけ?いつも通り村をプラプラしてると見かけない男が歩いていた。あっ冒険者だ!探していた男はすんなりと見つかりおいらは後をつける事にした。


 しばらく歩いていると急に止まり後ろを振り返った。


「誰だ!………リスか。」


 おいらを見つめボーとしている。誰だ!って言った手前リスだった事に恥ずかしがっているのだろうか。誰も見てないから大丈夫だよ。おいらも何もいないところに誰だ!って言ったことあるから…あれは痛い思い出だ。


 冒険者がおいらに近づき両手ですくう様に持ち上げた。


「逃げないなんて、人懐っこいリスだな」


冒険者がおいらに話しかける。おいらは敵意も無かったから問題ないと冒険者を判断していた。動物は敵意に敏感だ。反応しないと言うことは危険な相手ではないだろう。


「俺はルイン。この村に訪れた冒険者だ。この近くにある森の中に赤い薬草が生えてるって本当か?」


 赤い薬草?そういえばあったようななかったような。赤い薬草とは、C級ポーションを作るための素材だ。


「ってリスに俺は何言ってるんだ……。時間がねぇ。急がなきゃワンダが死んじまう。」


ルインもかなりボロボロだぞ。治療終わる前に抜け出しただろ!どうやらルインは傷を負った仲間の為に赤い薬草を取りに来たって所だろう。不運にも途中で襲われて村に着いたって感じかな?


「死ぬかもしれねぇから、リスにでも話聞いてもらいたかったんだよ。ありがとな。」


 あの森にはそんなに強いモンスターいないぞ。決死の覚悟で行くような場所では無いはずなんだけど。何かあったのか……?思い当たる節が…………



 グレード・モス。キャーピラの進化系のモンスター。まさかキャーピラを逃したせいで…いやいやそんなバカな。



 ルインはおいらを地面に戻し森へ向かって行った。やばいやばい。おいらのせいだ!おいらが助けなきゃ。


 おいらも赤い薬草を探しに森へ向かった。


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〜始まりの森〜


 颯爽と大地を駆けるおいら。風を斬り猛スピードでルインを探す。随分と奥まで来たようだ。辺りが暗くなり不気味な空気が漂う。


 足場が悪くヌメヌメしていた。おいらどこまで来たんだ?ゆっくりと前に進む。うわっ!蜘蛛の糸に引っかかった。もぅ〜。


 「ギャオオオオオオオアオオオオアア」


 なんなんだ!この鳴き声は!!草が振動で震える。おいらは声がする方に目線を向けた。


 巨大な蛾の様な姿。グレード・モス……。やっぱり居た……。おいらは息を潜める。あっちいけぇ。あっちいけぇ。


ガサッガサッ。


 ドクンドクン。心臓の音が大きく聞こえる。落ち着け。ゆっくり息を吐け。


バサッ!!


 しばらくするとグレード・モスはどこかに消えて行った。


はぁぁぁぁ


 めっちゃ怖かった。おいらあんなのと戦ったら死んじゃうよ。まだ足がブルブル震える。おいらは警戒を解いて、森の奥に向かうのであった。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>

〜始まりの森〜(渓谷)


 あっあれは!


 渓谷があり反対側の崖の上に大量に生えている赤い薬草を発見した。おいら空飛べないしどうしようかなぁ。距離は大体10メートルくらいだ。


 タイミング良く下から風が起こるタイミングでジャンプするか。何かに捕まって連れて行ってもらうか。


おいらジャンプするの怖いし、二番目の作戦で行こう。誰かいないかなあ〜。


 辺りを見回すと1匹のオオカラスが木に止まっていた。


「カラスさん!カラスさん!おいらを向こうまで連れてって!」


おいらはオオカラスに話しかけた。オオカラスはニヤニヤと馬鹿にした目でおいらを見た。


「獲物が自分から話しかけるなんてどうかしてるぜ。仕方ねぇな。条件があるのじゃ。」


「条件?」


「お前を食わせるのじゃ!!」


「ーーーなっ!?」


「嘘なのじゃ。お前なんか食べても腹の足しにもならないのじゃ。木の実を大量に持ってこい。そしたら向こう岸まで連れて行ってやるのじゃ!」


「帰りも……」


 行きだけだったら帰れなくなる。おいらそんなに馬鹿じゃないぞ!


「ちっ。帰りも木の実を集めさせようと思ったのじゃが。」


ふぅ危なかった。ちゃんと確認して良かった。


「わかった!行ってくる。おいらはポン太。君は?」


「俺はブラッドなのじゃ!さっさと行ってくるのじゃ。」


 おいらは向こう岸に渡る為、木の実を集めるのであった。

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