第2話 [薬草]

「わたし、チョコレート!リスさんは?」


「おいらは、大河!よろしくね!」


おいらは少女の問いに応えたつもりだった…。胸に堂々と手を当て高らかに声を上げた。つもりだったんだ。


「チュチュ、チュチュ!チュチュチュチュ!」


 おいらが発生した音は、言語では無く鳴き声だった。なーんてことだぁぁぁ!!この世界にチャット機能なんて物は無い!おいら今リス!喋ることが出来ないだなんてぇぇぇ。


おいら決めた。【人間】を目指す!【人化】のスキルが手に入れば、おいらも人になる事ができる。

おいら、みんなから感謝されて人になる!!


「あははっ。変なリスさん。あのね、私薬草を取りに来たの。どこにあるかわかる?」


やくそう……やくそう……あっ!!おいらが目覚めた所に、確かたくさん生えてた気がする。


 おいらは、チョコレートの手のひらから降りて、2メートルほど進み、”こっちに来い”のハンドサインを出した。


 伝わるかなぁ。おいらは手をクイクイさせている。チョコレートが戸惑った目をおいらに向ける。少女は、拳を構えて戦う姿勢を取った。


 「やっぱりリスさんもモンスターなんだね。助けてくれたのは、気まぐれだったんだ……。お母さんに薬草を届けたら食べてもいいよ…。だからそれまで待って欲しいな。」


 伝わらなかったかぁぁぁ。確かにおいらの今のハンドサイン”かかって来い”とも取れるよな。まずはチョコレートの誤解を解かなきゃ。


 おいらは首を振ってから、1メートル先に進んでもう一度“こっちに来い"のハンドサインを送る。

つぅたぁゎれぇぇえ!!


「ーーーあっ!?」


 チョコレートが驚きの声を上げる。どうやら伝わったようだな。おいらは、ホッとため息をつく。



「今なら見逃して上げるって事?」


 おいらはずっこけた。そうじゃない。ついて来いって事!!言葉が通じないだけで意思疎通がこんなに難しいなんて……。


「うそうそ。ついて来いって事だよね。」


「チュ!」


 おいらは短く鳴いた。伝わってたんかい!!まったくおいらを揶揄うとは意地悪なお嬢さんだ。わざとらしく笑うチョコレートは、無邪気な子供のようだった。子供なんだけど。


 おいらの後ろを付いてくるチョコレートが質問をした。


「人間の言葉を理解できるモンスターは、竜と神獣だけだと思ってた。なんでリスさんが理解できてるの?もしかして…。とてつも無い強いリスさんだったりして……。」


 おいらは最弱のリスさんですよ〜。駆け出しリスですよ〜転生したから言葉が理解できるんですよ〜。って言っても伝わらないからなぁ。無視をする事にしよう。


 「モンスターと心を通わせるなんて、わたしテイマーの才能あるのかも!」


 お嬢ちゃん〜。キャーピラに思いっきり襲われてたじゃ無いっすか。どう考えてもそんな才能持ってませんよ。


「チュ!」


ほら、着いたですよ。の意味を込めて短く鳴いた。チョコレートの表情がぱぁぁっと明るくなった。


「やっぱりリスさんもそう思う?冒険者になってお金バンバン稼いじゃうんだから!!」


 違うから!そう言う意味じゃ無いから!足元!!足元見て!チョコレートが森に来た理由の薬草生えてるから!!おいらは歯で薬草の付け根を切り裂いて、チョコレートに渡す。


「リスさんも一緒に行きたいって?ってそれ薬草じゃ無い!どこにあったの?!」


もっと周り見ようよ……。おいらは薬草に指を刺した。ほら、いっぱい生えてるだろ。好きなだけ取っておいで。


「薬草の群生地じゃない!ありがとう!リスさん」


 チョコレートは、地面に膝をつけて薬草を抜いた。スカート汚れちゃうよ?


『スキル【恩返し】を発動しませんでした。

一度感謝された相手だと発動しません。』


 うん。知ってた。リスが最弱職の理由。その一!

同じ人に感謝されても発動しない。この世界に置いては、更に厳しい条件だと思う。掲示板も無いから困ってる人を探すのにも苦労しそうだ。


 チョコレートは、薬草を集め終わったのかおいらに近づいて来た。泥まみれのスカートと手には、大量の薬草を持っていた。


「さぁ、帰るわよ!」


 おいらの帰る所ここなんだけど…。森の中の生物なので森が実家なんだけど…。チョコレートがおいらを持ち上げる。


「チュ?」


「私の家で飼うわ!!」


 突拍子もないチョコレートの発言にビックリしたが、森に居るより街にいた方が感謝されやすいだろう。行ってみるか。


「お菓子もあげるわ!」


 おいら達は森を抜け、街を目指すのであった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


人外は最強。これしか勝たん

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