第5話
2機の濃蒼色の騎士型
「そういや、接地面とのショックアブソーバー、いつの間に改善されたんだ?」
濃蒼色の騎士型
バイザーを上げたヘルメットから覗く無精ひげを右親指で弾く。
素朴な疑問へ『Sound Only』と表示されたサブウインドウから苦笑い混りの声が聞こえる。
『確か直近の
「それは、流石に改善するわな……」
最初から今のような仕様で開発しとけよという言葉を言外に滲ませた声で応じる。
オフィスビル群を抜けると、全天周囲モニター前面に
鳴り響く警報のためか無人となった検問を
アラームと共に『Engagement Zone』というラベルが上部についた表示されたサブウインドウが開かれる。表示されたサブウインドウに
「……なんじゃこりゃ!?」
『……移動速度からみると、報告にあった中華大国と露西亜連邦のドローンのようですね。』
「蚊蜻蛉の群れを各個撃破とか、面倒クセェ……」
『共同作戦上は、北米連合とカナダの軍管特区に展開する『
「……あんなの一々相手してられんから、その話が本当なら助かる。だが、フレディ中尉、北米連合の軍管特区に展開している『
『……確か『
「あいつに『
『それは、問題ないはずです。』
「根拠は?」
『端的にいうと『
「……1個小隊規模なら問題なく稼働するってことで開発完了してなかったか?」
『オペレーション・サンライズで1個大隊を投入する関係で、追加のテストケースでバグを潰し込まないといけなくなったそうです。』
「確か1000機の
『
「練度が高い『
『対軍陣形って聞きましたよ。『密集陣形』か『魚鱗の陣』だと思うので、
「なるほど……まずは、
『恐らくは。あと、
「『
『……コメントしずらいですね……』
フレディの微妙な声音と同時に、ビープ音が鳴る。
視線を『Engagement Zone』というラベルが上部に表示されたサブウインドウへ向ける。100近い動きの遅い赤いポイントがプロットされている。全天周囲モニター正面に黒いマントで全身を包んだような装甲の人型
「おいでなすったか……というかあれは新型か?」
『……データに無いので、新型ですね……』
「まったく……次から次へと……」
愚痴を言いながらも、オーレンは不敵な笑みを浮かべていた。
◇◆◇
集団を率いるように突出している、1機の黒い人型
回避行動を取ろうとしない黒い人型
「なんだこれ?」
『なにかの力場……ですかね……』
『Sound-Only』と表示されたサブウインドウから怪訝な声が聞こえる。
オーレンは、背筋にゾクリとした寒気を感じると、リクライニングシートのコンソールを器用に操作しながら、黒い人型
同時に、それまで騎士型
「……ぬ……今、攻撃の兆候はなかったよな……」
『これは……オーレン大尉、相手に攻撃させると厄介です。』
「そうはいっても、どうするんだ?」
『最初から
「……出し惜しみ無しか……何が出てくるか分からんかったから温存したかったが……」
『正直、魔獣以外に
「なにッ!久間が
『作戦方針に、
「……現場の判断は必要ねぇってか……」
『戦場で躊躇してたら死にますからね……今回、魔獣相手でないため余計に躊躇するとご判断されて、作戦方針に明記されたんでしょうね……』
「……判った。久間の指示ってところが気に入らないが、まずは生き残ることが最優先だな……」
一瞬の逡巡をかぶりを振って振り払うと、オーレンはリクライニングシートの前面のコンソール画面下部に表示されている赤い鍵マークのアイコンを親指で押す。
『Arm-Claise Extra-Function Activated』というラベルが上部についたサブウインドウが、全天周囲モニターの左に表示される。サブウインドウに順次ログが出力されていく。
『Arm-Claise Type2 のリリースシステムが有効化されました。』
『
『AICEの制限機構を解除します』
『
『
『
『
『
「ええい……ままよ……」
オーレンは、険しい表情を浮かべたまま、リクライニングシートの足元のペダルを踏み込む。
リクライニングシートのコントロールパネルを操作し、黒い人型
回避行動を取ろうとしない黒い人型
「……
『いえ……問題ないようです。』
『Sound-Only』のサブウインドウからやや険しい声が聞こえてくるも、全天周囲モニターの前面に、波紋のような揺らぎを切り裂きながら、黒い人型
力なく膝から崩れ落ちた、2つに分かれた黒い人型
『まずは、
引き続き険しい声が『Sound-Only』のサブウインドウから聞こえてくる。
同時に、全天周囲モニターに僚機の
「……これは、一方的だな……」
苦々し気な口調とは裏腹に、黒い人型
◇◆◇
◆◇◆◇
『Zoom 300%』というラベルのついたサブウインドウに濃蒼色の騎士型
「へえ……
レーサーのつなぎ服に似た黒いパイロットスーツ姿で全天周囲リニアシートに片肘をつきながら、黒いヘルメットのバイザー越しに興味深い表情を浮かべる。
『……この黒い
『Sound Only』と表示されたサブウィンドウから唸るような声が聞こえる。
「エネルギーフィールドのようなものをバリアにしている?」
『現象だけみるとバリアのようにみえるが……この兵装、どこかで見たような……』
「多分……
『なんだそりゃ?』
「10年前、セトニクス・エレクトロニクスで開発していた実験機に搭載されていた兵装だよ。」
『10年前だぁ?』
「少なくとも、完成度80%程度と言われたものしか見たことないけどね……」
『で、その80%とやらの性能は、目の前のと比べて、どうなんだ?クロノ。』
「目の前の兵装が遥かに高性能だね……」
クロノは、黒いヘルメットのバイザー越しに思案気な表情を浮かべる。
『で、そんなものがなんで中華大国の新型に実装されてんだ?』
「10年前、中華大国と露西亜連邦が同じ様に
『強奪だぁ?』
「当時の状況を考えると、中華大国か露西亜連邦が主犯だろうとは言われていたんだけど、巧妙に痕跡を消されていてね。追跡できなかったんだよ。」
口調とは裏腹に、黒いヘルメットのバイザー越しにクロノは鋭い目つきで『Zoom 300%』というラベルのついたサブウインドウに映る戦闘映像を眺める。
『これは?』
「
『これがそうか……』
「段階ごとに
『久間……
「まあね……元々は、
『あ、悪い……』
「いいよ。今は今。過去は過去さ。納得はしてないけどね」
『……』
「っていうか、
2振りの蒼光の刃を両手で広げるように肉薄する
『いや……そうでも……』
波紋のような揺らぎを切り裂きながら、黒い人型
「そうでもあるだろ。」
『確かにな……』
「あとは、中華大国が切ってくる次のカード次第かな。」
そういうと、クロノは、全天周囲リニアシートに片肘をつきながら、黒いヘルメットのバイザー越しにつまらなそうな表情を浮かべた。
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