03

 3人で家に帰りのんびりと過ごしていた。僕は入浴を終えてクマの耳が付いている可愛いパジャマに着替えていた。こんなパジャマを着ていても可愛い中学生男子、僕くらいじゃないかと思いながら自撮りをしていると、お風呂から出てきた楓君が僕と同じパジャマを着ていた。とても似合っている。さすがは双子と思い、じっと見つめると楓君が近づいてきた。


「陽奈くん、オレより先に上がったのに、まだ髪乾かしてないでしょ。」

「うん。だってさ、ゲームでは双子のパジャマ姿って数回しか出てないじゃん。見なきゃもったいないなって。」

「これからいくらでも見れるんだからさ…。でも、オレ的にはもっとシンプルなのがいいかも。」

「じゃあ、今度パジャマ選びに買い物行こうよ。」

「いいね!美味しいものとか食べに行こうね。」

 どこへ行こうか、何をしようかと話し合っていると、忍兄がやって来た。忍兄も入浴を終えたようで、シンプルなパジャマ姿だった。何を着ても似合うなぁ、さすが主人公と思っていると、忍兄は僕に近づいてきた。


「こら!仲良くしてるのもいいけど、陽奈は早く髪を乾かそうね。陽奈が風邪をひいたら楓が心配して離れなくなっちゃうんだから。そのあと2人が風邪をひいて、面倒を見るのは俺なんだから。」

 確かにそうなんだけど、めんどくさいよね。楓君の袖を掴んでじっと見つめ、にっこりと笑った。


「…お願い。」

「はい!喜んで。」

 楓君はにこにことしながら僕の髪を乾かしてくれる。甘えるととても喜んでくれるのは昔からだし、あと、もともとゲームの中でも仲良し双子って説明されるくらいだったしね。前世を思い出した後の僕たちでも、忍兄は怪しまないだろう。むしろ仲が悪くなったら怪しまれそう。


 楓君に髪を乾かしてもらいながら、なんとなくつけていたテレビを見る。恋愛ドラマが流れていて、ちょうどお金持ちのお坊ちゃんが一般女性に告白するシーンだった。竜宮もこんな感じで薔薇の花束を忍兄に渡すことがあったよなぁ。なんのイベントの時だっけ?


「…そういえば忍兄、結局、僕らを攫った人は何だったの?」

「竜宮先輩はうちの生徒会長だよ。2年生にして生徒会長をするすごい人なんだけど、面白そうって思ったことに突っ走っていくんだよね。」

 忍兄が頭を抱えている。こんなに悩ませるなんて…。まぁ、個人的には好きじゃないけど、ゲームで攻略した時はかわいらしい一面もあって、いいやつなんだけど…。仲良くなるまではかなり迷惑だった気がする。


「オレたちが連れて行かれた理由って何だろう?」

 楓君が言った。わかっているけど知らないふりするの大変だよね。僕もわからないといった風に首をかしげて、忍兄を見つめた。


「…2人が可愛かったからじゃないかな。」

 忍兄は困ったように笑って誤魔化した。確かに自分が好意を寄せられているかもしれないというのは言いづらいことかもしれないけど、その言い方だと、竜宮が自制できない悪い男になっちゃうから。


「確かにオレたちは可愛いけど、流石に誘拐されるほどじゃないし。別の理由がありそうだよね。」

 楓君の言葉に頷くと。忍兄が僕と楓君の肩に手を置いた。そして僕たちのことを見つめる。


「そんなことはないよ。2人ともこの世の天使だから。」

 …マジで主人公ってこんなに双子のこと好きだっけ?何かがおかしい気がするけど、忍兄の顔が良すぎてそんなこともどこかに吹き飛んでしまう。


「忍兄さんもかっこよくて、可愛いよ。」

「ホントそれ。」

 2人で忍兄のことを褒めると、照れくさそうに笑っていた。これぞ主人公って感じの表情だ。僕らが高校に入ったら、ゲームの世界を満喫して、いろんな表情の忍兄を見よう。そのためにはイベントを逃さないように、あとで楓君と話し合おう。

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