02
そして現在、前世の記憶を思い出した僕の名前は
学校帰りに双子の片割れである、
「…今、前世の夢を見たんだけど、そっちも?」
「うん。まさかゲームで世界が滅びるなんて…。」
やはり、親友のようだ。一緒に暮らせる双子に転生できたなんて、これから毎日が楽しくなりそう。しかも、主人公が兄で僕たちと攻略対象たちが仲良くならないといけない仕様だから、恋を応援しててもいいってことだよね。
「陽奈くんと一緒に暮らせるなんて夢のようなんだけど、今はさ、オレたち拉致られたんだよね?なんかのイベントだっけ?」
「うーん、拘束されてないし、部屋も綺麗なところだし…。」
あ、思い出した。攻略対象の中の、俺様御曹司、竜宮
「あー…。これ、あのイベントか。あれってどうやって帰ったんだっけ?」
楓君も思い出したようだ。本来であれば探検する途中で竜宮に会い、仲良くなって帰るイベントだけど、僕は知らない家の中を歩きたくない。楓君も歩き回る様子がないところを見ると、人の家を勝手に歩き回るのは嫌なのだろう。この場合はどうなるのだろうか。
「お前たち、乱暴な真似をしてすまないな!」
どうすると2人で困っていたら、この部屋の扉が急に開いて、大きな声が聞こえた。現れたのは橙色の髪に赤色の瞳を持つ、竜宮だった。とても驚いた僕は目の前の楓君に抱き着いた。楓君は優しく頭を撫でてくれて、少しほっとした。
「陽奈くんが怯えるんで、もう少し静かにしてくれませんか?そもそも、拉致なんかしといてすまないで済むと思うの?」
「…そうだよ。楓君の言う通りだよ。さっさと帰りたいんだけど。」
仲良くする気はないと言ったオーラを出して威嚇するが、竜宮には伝わらず、カツカツとこちらに近づいてきた。楓君が僕のことを背に隠し、竜宮と対峙する。
「似てないな。」
そういって竜宮は楓君の顎をつかみ、顔をよく見ていた。これが顎クイ…。実際に見ると恥ずかしいな。さすがBLゲーム…初対面の距離感がおかしい。親友、というか片割れのピンチなのに助ける方法が浮かばない。
「ごめんなさい!」
楓君は竜宮の手を払いのけて、僕を抱えて走り出した。そうだ、楓君って力が強い設定だったな。ちらっと後ろを見れば、使用人っぽい人や竜宮が追いかけてきていた。楓君の足が速いおかげで逃げれているけど、この屋敷の作りがわからないし、こっちのが不利だろう。
「陽奈くん、端末で忍兄さんに電話して!きっと迎えに来てくれるだろうし、その間はどこかに隠れよう!」
「オッケー!」
ポケットに入っていた端末で電話をかけるとすぐに電話に出てくれた。
「忍兄、いま、橙色の髪に赤い目の男の人に攫われて。忍兄と同じ制服だし、知らないかなって。」
「うん。大丈夫だよ。2人が遅いからGPSで探して、今、そこに着いたから。」
「GPS?」
何の話だろうと思っていると、急に楓君が立ち止まった。何かあるのだろうかと、前を向くと、そこには黒髪に紫目の…この世界の主人公が立っていた。忍兄は僕たちを見ると笑顔を浮かべて、両腕を広げた。多分、おいでって言う意味だ。楓君が僕を抱えたまま走り出す。これはサンドイッチにされてしまう。そんな心配は必要なかった。
忍兄は主人公持ち前の包容力を発揮して、優しく僕と楓君を受け止めてくれた。そして僕たちの頭を優しくなでて、頑張ったねと言ってくれる。
「頑張った!じゃなくて、忍兄さん、あの変態と知り合いなの?急に顔近づけてきたんだけど。しかも大きい音立てて、陽奈くんを驚かせたし。」
「そうだよ。楓君に顎クイしたんだよ!」
2人して竜宮に不満があることを告げると、忍兄は僕らの顔に手を添える。じっと見つめたかと思えばもう一度頭を優しく撫でた。
「…俺はあの人とお話ししてくるから、待っててね。」
ほほ笑んだ忍兄に何も言えずにいると、竜宮の腕をつかんでどこかへ行ってしまった。ひとまず、僕は楓君に下ろしてもらい、楓君と目を合わせた。
「…忍兄って攻め?」
「いや、ゲームシステム的にはパラメーターがあって、数値が高い方に傾くんじゃなかった?」
「そっか…。どっちでも忍兄が幸せならいいか。」
「そうだね。」
2人してすることがなくて、ただお互いを見つめあう。双子は一卵性で似ているのだが、楓君がチャラ男系で僕がかわいい系だ。楓君がかっこいいので写真を撮ったら、仕返しだと楓君も僕のことを写真に撮った。
忍兄が帰ってくるまで、お互いの撮影会を十分に楽しめてよかった。
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