第4話:マテ


 忠司、羽澄、友広と酒を飲むペースが上がっている。

 この辺の酒豪はつまみにより飲む速さが数段と早まっている。


 私の予定通りだ。


 しかし他の連中を見るとまだまだ強敵が残っている。

 マイペースを崩さずに飲んでいるのはみねけん(仮名)と誠(仮名)、そして後輩君の三名。


 うちの みさき はもうへべれけになりつつあるので放っておいても大丈夫だろう。



 さて、この三人をどう飲ませるかだが……



 わんわん!



 足元で飼い犬が騒いでいる。

 そう言えばまだ晩御飯をあげていない。

 とりあえず飼い犬の餌を先に準備する。

 そしていつもの儀式をするのだが。



 「何でこいつ少しふらふらしてるんだ?」



 飼い犬のおわんに餌を入れて呼ぶとなんか足取りがおかしい。

 私の前まで来たからお座りをさせる。



 ゆらゆら~。



 一体どうしたのだろう?

 

 「お手っ!」



 しゅたっ!



 可愛らしくお手をする。

 そして続けておかわり。

 ハイタッチさせてから伏せ。

 

 「頭も伏せ!」



 ぺこん。



 ちゃんと言われた通りにする。

 そしてお椀を飼い犬の前に出すと立ち上がりふらふらしている?


 「マテ、まだまだマテ~」



 ふらぁ~


 ぽてっ!?



 「えっ!? お、おいタル(飼い犬の名前)っ!」


 「あ~、タルも酔ってるぅ~。あはははははぁ!」


 ギギギと首を回しそちらを見ると みさき がチューハイを片手に騒いでいる。

 まさかこいつ‥‥‥



 「うーん、先輩、犬ってお酒飲めるんですねぇ~?」


 「はいっ!?」


 「ああ、さっき みさき さんタルに面白半分でお酒舐めさせてましたよ?」



 「なんだと!? おいこら みさき っ!」


 「あはっははははははぁ~!!」



 餌を食べたいのにふらついてまともに起てない。

 そんな飼い犬を抱き上げ叫ぶ。



 「タルぅううううううぅぅぅぅっ!!!! ちくしょう、お前の死は無駄にしない」




 くそう、貴様らこの私を本気にさせたな!?

 タルよお前の仇はきっと取ってやるぞ!!



 腕の中でへべれけになっている飼い犬ををゲージに入れてやって私はまたつまみを作るのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る