第5話:次なるステージへ
おにょれ貴様ら、私の可愛いいタルになんて事しやがったんだ!
こうなったら確実に酔い潰してやる。
そう思いあ奴等を見るとビールは無くなり、チューハイを飲み始めているようだ。
友広はコップ酒に移行している。
だから時間の問題だろう。
ちらっと見ると持ち寄った酒の中に危険な物も混じっている。
アルコール度が三十を確実にオーバーしているやつ。
誰だよそんな火の付く酒持ってきやがったのは!?
そう思いながらふと思いつく。
確か強いアルコールには辛い食べ物が合うはず。
私は棚と冷蔵庫を見てみる。
食材はあるな……
では!
まずは土鍋にサバの水煮缶詰を入れる。
この時缶詰の汁も一緒に入れる。
そして火を付けて水、かつおだし、酒、砂糖、味噌、コチジャン、唐辛子、ニンニク、生姜を入れて一煮え立ちさせる。
味を確認してから更にラー油、山椒の粉を入れる。
「ふっふっふっふっ、さあ煮えたからこいつ等だ!」
冷凍エビ(頭付)とイカ、そして厚揚げを切った物も入れる。
そして一煮え立ちした頃にはぐつぐつと辛そうな香りをまき散らしている。
最後に万能ねぎを少し切ってふりかけ完成。
「良し出来た、『ドラゴンの地獄鍋』だ!」
私はそれを鍋掴みで持って行き鍋敷きの上に降ろす。
その際にしっかりと小さなガラスのコップも持ってゆく。
「ドラゴンって、何入れてんだよ?」
「中国ではザリガニの事を『龍蝦』と呼ぶらしい。流石にザリガニは無いので蝦で代用だけどな。これは強い酒が合うぞ?」
「へぇ、ああ、それでこのコップか? 丁度良い、スピリッツを持って来ているからそれで頂くか!」
つられて強い酒に移行したな?
馬鹿め、こちらの思うつぼだ。
私は土鍋の蓋を開ける。
するとまだぐつぐつと危険そうなビジュアルのまさに真っ赤な地獄が待っていた。
「へぇ、辛そうだな?」
「ああ、だから強い酒が合うんだ(ニヤリ)」
言いながらみねけんは箸を出す。
そしてあの真赤なぐつぐつとした鍋からエビや厚揚げを引き出す。
「どれ、はふっ! はふはふ、おおぉ! それほど辛くない? 甘みが感じられるな…… うおっ! 後追いで辛くなってきた!!」
「そこで酒で流し込むんだ!」
がっ!
ぐいっ!
既に小さななコップにスピリッツを注いでいたものをテーブルに置くとみねけんは一気にそれをあおる。
「ぷはぁーっ! おお、これは合うっ!」
「だろう? さあ、誠も一緒にどうだ?」
「ふむ、そちらも美味そうだな。ちょうど日本酒も終わったから私もそちらに参加させてもらおう」
言いながら友広もこちらに来て鍋に手を出し同じく私が用意したスピリッツを手に取る。
「うむ、確かにこの辛さにスピリッツが合うな!!」
「ああ、寒さも吹き飛んでしまいそうだ!!」
「やばいな、辛さと喉を焼くようなスピリッツが更に鍋に手を出させるな!!」
くっくっくっくっくっ、そうだろうそうだろう。
四川では火鍋と言うもの凄く辛い鍋を白酒と言うアルコール度の高い酒で食う習慣があると言う。
だから高濃度アルコールの酒と辛い物が合わないはずはない。
とうとうこいつら高濃度アルコールに移行した。
「ふふ、планировал (予定通り)だ」
私は細く笑むのだった。
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