01-02 『何でも屋④』 Side:―――
メモ帳とペンを持ってきたアイヴィーさんが、もう一度私の向かいに座った。
「気にしないで下さいね、いつもあんな感じなので」
後ろではツッコミが発展して口論が始まりそうな勢いだというのに、アイヴィーさんは冷静にお茶をすすっている。
いつも…?という驚愕は一旦置いておいて、後ろの光景は見なかった事にした。
「探偵ハーゼについて、他に知っている事はありますか?」
アイヴィーさんがペンのキャップを取りながら私に尋ねた。
「私もネットでたまたま知っただけなので詳しくはないのですが、妙に評判
が良い探偵社であったのは印象的でしたね。」
アイヴィーさんの握ったペンがスラスラとノートの上で踊る。
「評判が良い?」
「はい、なんでも商店街育ちの方らしいので、そこから良い噂が広まっているのではないでしょうか。…でもその代わり、依頼料が通常よりも高く設定されていたので私には手が届かなかったのですが。」
「商店街ですか。なるほど。」
アイヴィーさんの背後でハイドさんが腕を組んで考え込む。口論はいつの間にか終わっていたようだ、不機嫌そうに頬を膨らませたジキルさんがツンと横を向いている。
「私が知っているのは、これくらいです。」
役に立つには多分情報の量が少ないよな…などと不安になりながら、三人の顔を見上げる。
「では、探偵ハーゼの他に何か、市街地の方で気になる噂などはあったりしませんか?」
「噂、ですか…」
何かあったかな…と必死に頭を巡らせる。
ここに来る道中に聞いたこと。いや、あれは何でも屋の話だったか。
会社で聞いたこと。うーん、上司の噂ばかりで、あまり関係はなさそうだ。
ネットニュースで見たこと。八割方ただの嘘だろうが、あれが良いかもしれない。
「最近、コンテナヤード周辺で頻繁に怪しい人影が目撃されている、という噂なら」
「その噂、俺も耳にしたことがあります」
ハイドさんが横槍を入れる。
「しかしまだ詳細には聞いた事が無くて。詳しく話して頂けると助かります」
良かった、これは彼らの欲しかった情報らしい。コクリと頷いて私は話を切り出した。
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