01-02 『何でも屋⑤』  Side:―――

「目撃情報はいずれも深夜、特に十一時から明け方二時の時間帯に集中しているそうです。その時間帯になると、黒く長いフードで、頭からつま先まで覆い隠した集団がコンテナヤードの影でゆらゆらと揺れ動いているのだとか」


自分で話していても支離滅裂すぎて不安になってくる。

しかし目の前の三人、特にハイドさんは真剣な目つきで私の話を聞いていた。


「黒く長いフード、…まるで死神ですね」


アイヴィーさんがペンを走らせながら呟く。


「はい、実際に大きな鎌を持った人影を持った人も居たそうで、私が読んだ記事では死と神の間にカタカナの二を入れて死二神と呼ばれていました。」


「そのネーミングには何か理由が?」


不可解そうに眉をひそめてアイヴィーさんが尋ねる。

確かに、と私も疑問を抱く。

二を挟んだだけでは音も変わっていないし、一体誰が付けた名前なのかも気になるところだ。


「分かりません、ただ彼らがそう名乗ったそうです」


「なるほど、情報はそれくらいですか?」


「はい。不確かな情報ばっかりですいません。」


自信の無さから視線が泳ぐ。


「そんな事ありませんよ、情報提供ありがとうございます」


ハイドさんが優しく頷いて、私の手を握る。


私がもう少し若かったら、ここで少女漫画のようにキュンとしていたのだろうか。


「では、交渉も終わったことですし、」


ハイドさんが私の額に向かって右手を伸ばす。


「――記憶は消させて頂きますね」


気がつくと、私は繁華街の道のど真ん中に立ち尽くしていた。


動こうともしない私を不信に思ったのか、人の波は私を避けるようにして歩いていく。


(あれ、私……あ、そうだ、何でも屋に行って……?)


いつの間にか、右手に下げられた紙袋には、私が探し求めていた証拠品が入っていた。


(行って、どうしたんだっけ?)


いくら思い出そうとしても出てこない。いったい何が起こったのだろう。


(……でもまぁ、いっか)


そう思って、私は日が暮れだした街を彷徨い出した。

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