Season 01

01-01 『宣戦布告①』  Side:Hyde

エレベーターから降り、指紋認証を使って、重いドアを開ける。

時刻は夜中の3時だというのに、暗い地下室は目が痛くなりそうなネオンカラーの電気で照らされていた。


「おかえりー」「おかー」


気の緩んだ2つの返事に、「ただいま」と返す。やっぱり、この空間は外とは違って安心できる。


俺たちの秘密基地は、一見ただのボロい賃貸アパートだ。しかしその一室に入り、幾つかの仕掛けを解除すると、エレベーターから地下室に降りれる仕組みとなっている。


この頑丈なセキュリティのお陰で、今までにこの秘密基地を見つけた者は一人としていない。


それもこれも、ほぼ全て一人で用意してくれたアイヴィーのお陰だ。


彼女は、一言で言って天才だ。


今は、情報を盗み出す際の遠隔ハッキング、セキュリティシステムの運営などのサイバー関連から、物資や資金の調達、作戦のサポート、それから、警察に怪しまれないようにと、この賃貸アパートの運営まで切り盛りしてくれている。


ただ一つだけ欠点があるとすれば、それは運動神経がほぼ無に等しい事だろう。特に体力の無さは壊滅的だ。


そんなこんなで、アイヴィーは、ほぼ一日をアパートの中で過ごしている。


他にも理由はあるみたいだが、あまり深追いはしない事にしている。


「ほい」


そう言ってコンビニの袋を渡すと、彼女はプレゼントを渡された子供のように興味津々にそれを開けだす。


「…!抹茶チーズケーキ…!」


アイヴィーの目がキラキラと輝く。


彼女は甘いものには目がないのだ。なんでも「頭を働かせるには糖分が必要」とかで、彼女の机の上には常に十数個の飴玉とガムが置かれている。


そんな食生活だから運動神経が無いんじゃないか。


俺がそんな事を考えている間に、彼女は早速パッケージを開け、いかにも幸せそうな顔を浮かべながらフォークを取りに行った。


「んで、ジキルは何してんだ?」


備品を片付けながらジキルに目線を向けると、何やらノートパソコンとにらめっこしている。


「今日の成果の解析。アイヴィーが手伝えって」


「だって…ジキルは一度もお土産買ってこないんだもん」


アイヴィーがお茶を入れながら付け足す。


USBが刺されたジキルのノートパソコンを覗いてみると、緑の文字列がずらーっと黒い画面を埋め尽くしている。作戦後の疲れ果てた頭では見たくない光景だ。


「…頑張れよ……」


そう言ってジキルの椅子の肩を軽く叩く。

とその途端、パソコンの文字列が自動で動き出した。


「うおっ、なんだ!?」

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