3
おばさんが亡くなってから、おやじさんはぼんやりとしていることが多くなった。「先にお母さんが逝くとは思ってなかったみたい」
店先のベンチでタバコをふかしているおやじさんを見てマチが僕に言う。
「あたしで本当によかったの」
「マチはどうなの」
「あたしは幸せ」
「それなら良かったんだよきっと」
やって来ては消えていく星たち。僕はその星にもなれなかった。でもこうしてマチが僕のそばにいて、僕の歌を聴いてくれる人もいる。
昼間はマチと二人で惣菜を作り、売って、夜はブルースを歌う。
「お兄ちゃんたちどうしているんだろうね」
「きっとどこかで生きているよ」
「どこかで同じ星を見ている」
ジャニス・イアンの「スターズ」という曲が聞こえてきた。誰かがラジオを聞いているのだろうか。
「あたしこの曲好きなの」
「あと17才っていう曲も」
マチが17才の頃っていうとちょうど春樹さんと彼女が消えてしまった頃だった。
おばさんが逝って半年後、おやじさんも逝ってしまった。春樹さんの行方はいまだにわからないまま。
何年か前に近所の人が大阪で見かけたということで、おばさんとマチは大阪に捜しに行ったけれど見つからなかった。
そう、あの頃からおばさんは塞ぎがちになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます