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 おばさんが亡くなってから、おやじさんはぼんやりとしていることが多くなった。「先にお母さんが逝くとは思ってなかったみたい」

 店先のベンチでタバコをふかしているおやじさんを見てマチが僕に言う。

「あたしで本当によかったの」

「マチはどうなの」

「あたしは幸せ」

「それなら良かったんだよきっと」

 やって来ては消えていく星たち。僕はその星にもなれなかった。でもこうしてマチが僕のそばにいて、僕の歌を聴いてくれる人もいる。

 昼間はマチと二人で惣菜を作り、売って、夜はブルースを歌う。

「お兄ちゃんたちどうしているんだろうね」

「きっとどこかで生きているよ」

「どこかで同じ星を見ている」

 ジャニス・イアンの「スターズ」という曲が聞こえてきた。誰かがラジオを聞いているのだろうか。

「あたしこの曲好きなの」

「あと17才っていう曲も」

 マチが17才の頃っていうとちょうど春樹さんと彼女が消えてしまった頃だった。

 おばさんが逝って半年後、おやじさんも逝ってしまった。春樹さんの行方はいまだにわからないまま。

 何年か前に近所の人が大阪で見かけたということで、おばさんとマチは大阪に捜しに行ったけれど見つからなかった。

 そう、あの頃からおばさんは塞ぎがちになってしまった。

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