第46話 ミファイラと魔大陸

 ミファイラは500年の間、未婚を貫いたそうだ。


 それは賞賛に値する。


 500歳を超えて処女というのは……彼女にとっては、想像を絶する苦悩と思いがあったに違いない。


 魔神教の教祖と言う重責から解放されて、エメラダが復活した今、彼女はこれから自由の身となる。


 寿命の無い眷属である彼女にとって、心の支えとなってやれるのは、俺くらいだろう。


 俺がミファイラにキスして告白したその日、ミファイラには心の準備が必要だった。


「少し考えさせて下さい……」


 当然の反応だろう。一目惚れした訳でもなく、出会ったその日に告白されれば、考えたくもなるってもんだ。


 500年越しの恋愛ともなれば、警戒しても不思議では無い。


「ああ、でもなるべく早い方が助かる……こちらも魔王について対策を考えないといけないしな?」


 それから、魔神教の幹部達は、アリマ教となった事、魔神様が復活なされた事を末端の組織まで伝える為、全員が世界中に散っていった。


 最後に残ったミファイラだったが、俺は一緒に来ないかと誘った。


 旧魔神教の本部は無人になってしまうが、ならば俺が結界を張っておこうと提案してみたら、俺と共に来てくれる事になった。


 ミファイラに、俺の事をもっと良く知ってもらう為にも、一緒に行動出来るのは、都合が良かった。


 

◇◇



 一旦、俺達の拠点に戻ることも考えたが、これから向かう場所の事を考えると……このまま行ったほうが良さそうだ。


 この先は、もっと危険な場所に向かわなくてはならない。


 魔族の領域だ。


 最後の眷属マニエラは、魔族の領域に住んでいるらしい。


 幸い魔族であるミファイラがいるので、この先どこに向かえばいいかは分かる。


 今は 眷属である仲間がバラけている為、レーダーが役に立たない。


 だから、ミファイラ頼みという事になる。


「頼んだぞ?ミファイラ」


「お任せ下さい。アリマ様」


 ドラ子の上にエリス様とエメラダを乗せて、俺は、ミファイラを背負った。


 ミファイラの大きな胸の感触が、とても気持ちがいい。ミファイラは、かなり形の良い巨乳なのだ。


「重く無いですか?」


「大丈夫だ」


 重さなんて些細な事は、気にしない。


「それじゃ行こうか?」


「そうじゃの」


 ミファイラは、まだ眷属解放出来ていないが、残るはあと一人だ。


 マニエラをクリア出来れば、俺の試練は終了する。


「魔大陸は……南の果てにあります……」


「それじゃ、取り敢えず南に向かえばいいか?」


「はい……魔大陸の周囲は、潮の流れが早く……船では行くことが出来ません」

 

「大丈夫だ。空から行くからな?」


 そう言うと俺とドラ子は、空へと舞い上がった。


「きゃ!……と、飛んでる?」


「お姫様?しばらく空の旅をお楽しみ下さい?」


「お、お姫様ぁ!?私なんかがお姫様だなんて……」


 ミファイラは、俺の首に手を回し、しっかりと俺に抱きついていた。


「しっかり、掴まってろよ?」


「ええ、落ちても助けてくれる?」


「当たり前だ……それに、絶対に落とさない」


 気持ち……ミファイラが俺に抱きつく力が強くなった気がした……。


「アリマ様……私は………………す」


「なんだって?」


「何でもありません!!」


「そうか?……」


 背負っているため、ミファイラの顔は見えないが、体から熱っぽさを感じた。


「そろそろ、何か見えてこないか?」


「何も、見えません……」


 そりゃ、見えないだろう……俺の髪で顔を隠していれば……。


 そう考えていたら……遠くに黒い島?大陸のような物が見えて来たのだった。


「あれか?」


「そうです……あれが……魔大陸です」


 あそこにいるのか?最後の眷属マニエラ……。


 そして……魔王!



◇◇



 魔族と強大な魔物が跋扈ばっこする魔大陸の北西部に、山と見間違える程に大きな大樹、魔界樹が葉を茂らせていた。


 その魔界樹の高さは軽く500メートルを超え、その直径にしては150メートルをゆうに超えていた。


 その魔界樹の麓は世界一魔素が濃い場所で、その一帯は誰の侵入も許されない保護地区とされていた。


 その保護地区の周囲には、魔素の濃い環境に適応した魔族の都マゼルハーゼンがあり、保護地の管理を行っていた。


 魔王の眷属ゴブリンロードとオークロードが何者かに倒されて、マゼルハーゼンの都の中心部、魔王城の一角では会議が行われていた。


「ゴブラスとブリーザまで殺られるとは、何物の仕業なのだ!?」


 魔王の眷属オーガロードのガロックは、声を荒げて言った。


「ガロック様、正体不明の者より、勇者対策をした方が良いのでは?」


 コボルトロードのゴルドは、鋭い犬歯を鳴らしながら、勇者の脅威を主張した。


「ぬぅ……しかし、既に二人も幹部が殺られているのだぞ!」


「何を弱気な事を言うておるのじゃ?」


「「魔王様!!」」


 そこに現れたのは、漆黒の大きな両角を生やした美少女。魔王ラグザリードだった。


 魔王ラグザリードは、褐色の肌に赤い目、肌の色に似合わね金髪の髪、肌の露出の多い黒のビキニアーマーに、赤いマントを羽織っていた。


「ですが、魔王様!ゴブラスは我ら四天王の中で最弱とはいえ、魔王様の眷属でした。それに……我ら最強のブリーザまで殺られたとなると……」


「であるか……我の眷属を倒す程の敵ともなると……このまま放っては置けぬな?」


「その通りでございます。魔王様」


「マニエラも、そう思うか?」


「はい」


「では、我が出るとしよう!良いな?」


「は!御心のままに……」


 このままでは、アリマ達と魔王との邂逅は、不可避であった。








あとがき


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