第44話 ええ、もちろんこの体も差し出しましょう!


 サフィーネとの騒動も終息し、俺たちは騒動から2週間後に出発する事になった。


 なぜ出発するまでに2週間もかかったかは、ご想像にお任せする。新たな眷属開放はしていない事は言っておこう。


 一応、戻ってこれるようにサフィーネの所にも転移門を設置しておいた。


 さて、次の目的地は東の方角を指していたのだが、ちょっと反応が弱い。


 エリス様の話では、他の大陸では無いかとの事だった。


 ここは中央大陸で、東にあるのはトリスティ大陸という名前だと言う事は分かったけど、詳細までは分からなかった。


 サフィーネは、ここの領主だから置いて行くしかない。でも子供が出来て本人も納得しているので、このまま出発しても問題ないと言われた。


 逆に言えば、子供が出来なければ俺は、このまま出発出来ずにまだ軟禁されていたことになる。


 止めてくれ……もうこういったのは無しにして欲しい。


 さて、気分を変えてみんなを竜車に乗せて出発だ。同行するのはメンバーは、リリアスを出発してから変わらず同じだ。


 御者は、またドラ子にお願いした。竜車の竜もドラ子に慣れたからでもある。


「では、出発しようか?」


「ご主人よ!子供と一緒に帰りを待ってるぞ?」


 サフィーネは、見送りに来てくれたようだ。


「サフィーネ!待っててくれ!必ず戻ってくるからな!」


 俺達を乗せた竜車は、東に向け飛び立った。


 竜車の癖に飛ぶのは今までと同じだ。


 さて、隣の大陸には何が待っているのかな?


 大陸間の移動になるので、今回は今までと違い、移動距離が半端なく多い。

  

「そろそろじゃないのか?」


「まだじゃの?レーダーをよく見て見るのじゃ」


 まだ眷属レーダーの光は弱い。反応が弱いと言う事だ。


 まだまだ先という事か……。


「ところで、本当にトリスティ大陸について知らないのか?」 


「森しかない大陸じゃな」


「私も、森の大陸としか……」


「情報無しか?昔はどうだったんだ?」


「そうじゃな……遠い昔は魔族や小人族が住んで居ったな」


 大昔の話か……何かヒントになればいいけどな。


「魔族……小人族?パチェッタは小人族じゃなかったか?」


「遠い昔の事じゃから、今は大分変っておるじゃろうな?」


 暫くすると、段々とレーダーの反応が強くなってきた。トリスティ大陸に近づいて来たという事だろう。


「そろそろみたいだな……」


 今は雲の上を飛んでいるので、雲の下までは見えない。


「ん?通り過ぎてしまったぞ?」


「よし降下するぞ」


「ドラ子!降下用意!」


「任せるのじゃ!」


 ドラ子が手綱を引くと、竜車はゆっくりと降下して、雲を突き抜けた。


 雲の下には……さっき聞いた通り、一面の森があった。


「おいおい……本当に森だな……」


「ちょっと待って……森の中に神殿が見えるわ?」


「お?あれか?」


 よく見ると、大森林の中にポッカリと開けた場所があり、その中心に白い神殿のようなものが建っていた。


 流石に竜車は森には下ろせないので、開けた場所に下ろしたいが……いきなり神殿の近くに下ろすのは危険だ。まだここがどういう場所なのか分かっていないのだから。


 となると……皆を連れて来たのは、失敗だったか?


 まさか……こんなに未開の地だとは思わなかったからだ。


 開けた場所に竜車を下ろすのを逡巡していると……神殿から竜車に向かって光が放たれたのを確認した。


 まさか攻撃?


「まずい!避けろ!」


 俺は咄嗟に結界魔法を展開し、神殿からの攻撃を受け流した。


「何?攻撃されたの?」


「のようだな……この先は危険だ。いったん引き返して体制を立て直すか?」


「悪いドラ子!いったん海岸線まで戻ってくれ!」


 大陸の入り口まで戻って、捜索隊を編成してから調査を開始するか?


「それ!戻るのじゃ!」


 未開の地ならば……まず、安全を確保してからの方が良い。


 大森林を抜け、海が見えた所で丁度良い場所があったので竜車を下ろして、皆を集めて話をすることになった。


「聞いて欲しい。さっき攻撃を受けたので分かっていると思うけど、この大陸は危険だ。だから、この先は人数を絞って行こうと思う」


 俺は連れて行く人選を行った。姫は全員駄目だ、それにアンリもリリムも待っていて欲しい。


 なので、連れて行けるのはエリス様、エメラダ、ドラ子の三人となる。

 

 やばい組み合わせだ。


 転移門を使って、竜車に乗せた皆をリリアスの城に送り届けた俺は、女神二人と龍のドラ子を連れて森の奥地にある神殿へと向かった。


 エリス様を連れて行くのは、俺から離れないからで、自分の家に帰らないからでもある。またエメラダもしかり、俺の元から離れないからである。ドラ子は最強の龍でエリス様のペットなので問題ないと判断した。


 本当は、俺一人で行こうと思ったんだけど、そういう事だ。


「飛んで行くかの?ドラ子よ」


「了解じゃ」


 ドラ子は、そう言うと白古龍の姿に戻った。やっぱりドラ子は、龍の姿だと迫力が違うな。


「俺は飛行魔法で行こう」


 ドラ子の上にエリス様とエメラダが乗り、俺達は再度移動を開始した。


 目立たないように低空を飛んで移動する。ドラ子はどうしても目立ってしまうので、小型龍の姿に変化して貰った。そこまで出来るのか?


 神殿が見えてきたが、今度は攻撃魔法の襲撃は無かった。


 森を抜け、開けた大地に足を下ろすと、不自然なほどに大きな神殿が目の前に現れた。


 眷属レーダーは、この神殿を指していた。


「凄い……この神殿。リリアスの封印の神殿に似ているけど……」


「止まれ!怪しい奴め!」


 神殿を見ていたら、褐色の肌に角が生えた現地人に囲まれてしまった。


「へぇ……ここは、森しかないから誰も住んでいないかと思ったよ……」


「うむ、あの角が生えておるのは魔族じゃの」

「確かに、あれは魔族じゃぞ?ご主人様!」


 確かに幼女二人とドラ子を連れた俺は不審者かもしれないが?


「ここは、我ら魔族の聖なる地!今すぐに立ち去るが良い!」


 立ち去れと言われてもねぇ……俺はここに用事があるんだよ……。


「エリス様?魔族にも眷属っているんですか?」


「もちろんじゃ!魔族は二人じゃな」


 ええ?って事は、残りの眷属は二人とも魔族って事か?


「眷属の名前って、教えて貰えたりしますか?」


「ミファイラとマニエラじゃ」


 ミファイラとマニエラ?そのどちらかがここにいるという事か?

 ならば聞いてみるしかないか?


「俺達は怪しい者じゃない!ここに、ミファイラかマニエラがいると思うんだけど知らないか?俺は、そいつに会いに来たんだが?」


 俺がそう言うと……褐色の魔族たちはざわついていた。


「貴様!教祖様に何用だ!ミファイラ様は、我ら魔神教の教祖様であられるぞ!」


 ええええ!?何?魔神教?そんな人、眷属解放しちゃっていいの?


「うむ?ミファイラじゃと?」


「エメラダは知っているのか?」


「知っているも何も……ミファイラは、破壊神たる我の忠臣じゃ……まぁ以前は、我の封印に加担しておったがの……我がちょっとチョメチョメしてやったら我に忠誠を誓いおったのじゃ」


 破壊神に忠誠を誓った忠臣で、魔神教の教祖?かなりやばい奴じゃないか?


「貴様達!何を騒いでいる?」


「はは!教祖様!この者たちが……教祖様に会わせろと申しまして……」


 教祖様?こいつがミファイラなのか?


 教祖様と呼ばれた女はとても美人で、褐色の肌に漆黒の髪は腰まで長く、瞳は黒く切れ長でキツイ目をしていた。体は豊満でスタイルも良く、かなりの巨乳で……黒いビキニの様な露出度の高い服を着ていた。


「この者たちか?オレ様が、教祖ミファイラだ!何用でここまで……き……た?……はあ!?」


「久しぶりじゃの?ミファイラよ。我は、こちらのご主人様に封印を解かれたのじゃ」

「ま、まさか……エメラダ様!ああ♡このミファイラ!エメラダ様の復活のため魔神教を作り、何百年と封印の解除のために生きてきました!ああ!やっと……やっと封印がとけたのですね……ああああ」


 ミファイラは、そう言うとエメラダの前に跪いた。


「ミファイラよ……わらわを無視するとは何なのじゃ?」


「え?ええ?ええええ?エリスロード様!?えええええええええ!?」


「エメラダはわらわの姉じゃ!それに封印を解いたのはわらわの旦那様の、このアリマじゃぞ?礼を言わんか!」


「あああああああ、エリスロード様!申し訳ございません!このミファイラ!エメラダ様に懸想し、エリスロード様には大変申し訳ない事を!え?旦那様?ええええ?今、旦那様と?ひえええええ!ありがとうございます!エメラダ様の封印を解いていただき大変ありがとうございます!この大恩!お礼はさせて下さい!ええ、もちろんこの体も差し出しましょう!アリマ様のためならば何をされても構いません!あああ!この感激をどう表現して良いか!こんなに嬉しい日は無いです!」


「えっと……エメラダは、俺のだから……ミファイラも俺の物ってことでいいかな?」


「もちろんです!なんなら今すぐにでも、この体使って頂いても構いません!」


「「「「「「教祖様?」」」」」」


「馬鹿者!こちらのお方は、我らの神!破壊神様に創造神様であらせられるぞ!頭を下げんかぁ!」


「「「「「「ひぃいい!!ははあ!」」」」」」


 教祖ミファイラがそう言うと、魔族の者たちは全員が跪き、頭を垂れたのだった。







あとがき


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