第40話 うちは、筋肉が好きなんだ!



 スタール王との会談も終わり、俺達は次の眷属を探す旅に出る事になるが、流石に人数が多くなって来たので、旅に同行する人数を減らす事にした。


 転移門を使えばいつでも会えるので、寂しい思いはさせないつもりだ。


 連れて行くのはまず、エリス様、エメラダにドラ子だ。

 エメラダは俺が保護しているし、ドラ子はエリス様のペットだからな?


 それから、エルフのリリムと、エリス神聖国からはマリ姫とティナ姫、リリアスからは代表してラミレスを連れて行く事にした。


 御者にはマーニャを連れて来ていたが、この先は何があるか分からない。なので念のため、パーラと共にリリアスに残ってもらう事にした。


 リリアスに残ってもらうのは、パーラとプリステラ、それからパチェッタとリリアスの残り4人の姫達だ。


 アンリは学生だったが、俺達と一緒に行動する事になった。


 御者には代わりにドラ子にやってもらう事になったんだけど……ドラ子は古代龍なので、馬車を引く竜が萎縮してしまうトラブルがあった。


 えっと……同行する人数を減らしたはずなのに増えていないか?


 とにかく旅の準備を終え、俺達は城の前で待ち合わせを行った。


「あとは……ラミレスだけか?」


 集合時間まではまだあるけど、皆早く集合していた。


「ちょっと、待って下さい!はぁ……はぁ……」


「ん?ルリアナ姫……わざわざ見送りに来てくれたのか?」


 今回、国王が国外に外出するのは、お忍びとなるので見送りは良いと事前に言っておいたんだけどなぁ……。


「はぁ……はぁ……わたくしも!連れて行って下さい!」


 ルリアナ姫は、いつも走ってくるよな?


「連れて行くにも、学校の方はどうするんだ?」


「大丈夫です!」


 何が大丈夫なんだ?


「だって、アンリさんも連れて行くんですよね?」


「アンリは最終学年だから問題ないけど、ルリアナ姫はまだ一年生だろ?しっかり勉強はしといた方がいい」


 卒業しているリンスレットとレスティアなら別だけどな?


 すると、荷物を抱えた色白の銀髪美少女のレスティアが現れた。


「ルリアナは……待っていて?私が、付いていくから」


 え?


「レスティア姉さま?」


「アリマ様?私なら……いいですか?」


 まさか……レスティアが自分から、俺について行きたいと言うとは思っていなかった。


「もちろん、レスティアならいいよ?」


 俺が許可すると、レスティアは頬を染めて喜んでいた。


「ありがとう……ございます」


 レスティアの頭を撫でていると、長く伸ばした艶のある赤い髪を靡かせてラミレスがやって来た。


「すみません……お待たせしました。……あの……わたくしが最後でしょうか?」


 やっとラミレスが来たので、これで全員そろった事になる。


「大丈夫だラミレス。それじゃ、ラミレスとレスティアも馬車に乗ってくれ」


 馬車と言っても竜が引くんだけどな。


「では出発だ!次の目的地はスタール王国!」


 ドラ子が操る俺達を乗せた竜車は、次第に速度を増していった。



◇◇



 これから行くスタール王国の特徴は、親父の話によると……獣人が比較的多いと言う事と、多宗教で複数の宗教があるらしい事。それに王国には多くの貴族がいて、貴族による領地支配が進んでいるようだった。


 リリアス教国は、ほぼ人族の国だったので、獣人はほとんどいなかった……獣人といえばパーラとかマーニャは獣人だったな?


 エリス神聖国では獣人自体は少なかったけど、パーラの店のように獣人相手の店がある事から、それなりに獣人の人権は守られていたようだ。


 俺は、眷属レーダーを見ながら空飛ぶ竜車の行く方向を指示した。


「うわぁ……雲の海です……」


 竜車の窓から見える景色は、雲の上だった。


 高度を上げ過ぎると気圧が低くなるので、結界魔法を使って魔法で竜車の中の気圧を調整している。


「レスティアは、空を飛ぶのは初めてか?」


「はぃ……」

 

「あたしも!空飛ぶ竜車なんて初めて見たわ?」


「ええ、そうね普通は無いと思いますよ?」


 アンリとラミレスも乗ったことは無いようだ。そもそも……この竜車が変なのか?


 エリス様とエメラダは、すぐに寝てしまったので……快適なのは確かなんだよな?


「マリ姫とティナ姫は大丈夫か?」


 この二人は、エリス神聖国から乗ってきてるから大丈夫だと思うけど……。


「……だ……だいじょうぶれす……わ」

「問題ない……うぅ……」


 大丈夫じゃなかった。


「気持ち悪かったら寝てていいぞ?」


「「はい……」」


「ボクは大丈夫だよ?」


 うん、リリムは元気そうだな。 


「リリムはスタール王国に行ったことはあるのか?」


「ボクは精霊の森からは、なかなか出られなかったからね……」


 そうか、リリムは結界に包まれた精霊の森に住んでいたんだよな?


 リリムはエルフだったし、多分……神気の濃度が改善したことで、俺に付いて来られるようになったんだよな?


 眷属開放したことで、その心配はなくなったと言う事だけどな。


 俺たちは空を飛んでいるので、スタール王国でもいくつかの領地を飛ばして、真っすぐに目的地へと向かっている。


「随分飛んできたようだけど、そろそろかな?」


 レーダーの反応が下を向いたので、この辺りが目的地のようだ。


「ドラ子!この辺りに下ろしてくれ」


「了解じゃ!」


 俺達を乗せた竜車はゆっくりと高度を下げて行き、見えて来た街道へと降りて行った。


 降りてくる最中にすでに町は見えていたので、そこが今回の目的地であろう。


 ここがどこで何という町なのかは、町に着いてみないと分からない。


「ふぅ……無事についたな?」


 町の入り口には門番が立っていた。スタール王国も、町の仕組みは同じようだな。

 門番にスタール王からの通行許可証を見せると、すぐに町へと入れてくれた。


 さすが王の許可証は効果抜群だな?


 ちなみに門番に聞いたらここは、ディスモルト伯爵領のザンスタルの町というらしい。


 伯爵が住んでいるのがこの町という事で、他の町よりも大きな町らしい。


 門番も獣人だったけど、この町の人は、ほとんどが獣人だった。どうやら、伯爵自身が獣人らしい。


「さて、着いたはいいけど……手がかりが無いね?」


 眷属レーダーは、領主の館の方向を向いていたので、領主の館の中に目的の眷属がいるのかもしれない。


 俺達は、まずは領主に挨拶することにした。


 領主の館へ行くと、まずは怪しまれるので、国王の紹介状を持って館を訪ねる事にした。


「すまんが領主に会いに来たんだが、これが国王からの紹介状だ」


「少々お待ちください」


 館から出て来た羊の執事のような人に紹介状を渡すと、すぐに返答があった。


「領主様がお会いになるようです。こちらへ」


「ありがとう」


 執事に案内されて、俺達一行は屋敷へと入っていった。


「どこを見ても獣人しかいないな?この町は」


 案内された部屋へ入ると、猫?ライオン?みたいな艶のある美人な獣人が俺達を迎えてくれた。


「歓迎しよう!うちは、サフィーネ!サフィーネ ・ディスモルトだ。これでも伯爵をやっている……ん?あれ?うそん?エリスロード様ですか?」

 

「そうじゃ!ひさしぶりじゃの!サフィーネよ」


「びっくりですわ!下界に何用で?」


「そうじゃの!紹介するのじゃ!わらわの旦那様じゃ!」


「どうも、エリスロード様の婿のアリマ・エリスロードです」


「我はエリスロードの姉、エメラダじゃ!」


「儂がエリスロード様のペットのドラ子じゃ!」


 ドラ子は張り合ってどうするの?


「えええ?って、どっから突っ込めばいいの?女神様、結婚されたんですね?おめでとうございます!お姉さまもよろしくお願いします」


「実は、俺達はエリス様の眷属の方々の眷属解放をしているんですよ」


「ほう、それは……うちに眷属解放されろというのかな?」


「そうじゃの?」


 サフィーネさんは、獣人だけど……とても美人だ。眷属の人って美人ばかりだよな?基準でもあるのかな?


「眷属解放するメリットは?あるか……元の力を取り戻せるし、今よりもっと強くなる。うんいいね」


「それで、ですねじつは眷属解放するには、条件があるんですよ……」


「なんだ?その条件とは?」


「俺を本気で好きにならないと、眷属解放が出来ないんですよ?」


「ほう、うちに……お前を好きになれというのだな?ならば筋肉を見せよ!」


 え?筋肉?どういう事?


「うちは、筋肉が好きなんだ!筋肉を見せてくれ!はぁ!はぁ!早く!」


 俺はサフィーネさんの言う通り、上着を脱いで上半身裸になった。俺はエリス様に鍛えられているので、それなりに筋肉は付いている。


「おおう!素晴らしい筋肉だ!さ、触ってもいいか?」


「もちろん。どうぞ?」


「はぁ……はぁ……いい♡……うほお!この胸筋♡堪らない!♡……うん♡だめ♡感じちゃう♡」


 俺はサフィーネさんに、あちこち触られて……興奮してしまった。


「あ♡……ここも♡……逞しい♡」


 そこは……あの……触られると、やばいんですけど?


「ん♡……いいよ♡……合格だ♡」


 何がですか?何が合格だったの?


「それでは……」


「条件がある。ここに滞在する間。アリマ様?はうちと寝る事!」


 えええええ!?何?その条件?


「むぅ……仕方あるまい。婿殿よ。頑張れよ?」


 丸投げされたよ?


 こうして、スタール王国で探し当てた眷属サフィーネとの条件で、俺は毎日サフィーネと寝ることになってしまった。







あとがき


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