第38話 まぁ、私もエルフですのよ?


 式が終わると、パレードの準備だ。今回のパレードに使用するのはスタール王国から提供されたという魔道自動車だった。


 自動車って……。自動車があるなら、転移者か転生者がいるんじゃ無いか?


 俺達6人が乗っても余裕のあるオープンカーに乗って、ゆっくりと首都リリルメリアの決められたルートを走る。少し離れた沿道には国民が集結していた。こんなにいたんだな……。


 太鼓や音楽を奏でる人たちも一緒に、歩きながらパレードに参加しているので、進みは本当に遅かった。


 俺は恥ずかしいけど、手を振るだけでいいです。と言われていたので無心で手を振るようにしていた。


 護衛は何人かついてはいるけど、俺達6人は全て眷属なので、護衛の必要も本当は無い。


「慣れないなぁ……」


 パレードなんて見世物だと思っていたので、いざ自分が主催者が側になると……。見られるのが恥ずかしい。しかも俺の嫁は5人もいるし?


 別に自慢したい訳でもないし。


「アリマ様?笑顔ですよ?」


 笑顔笑顔……。これって結構疲れるんだよね……だんだん顔が引きつってくると笑顔が苦笑いになってしまった。


「疲れた……」


「アリマ様?もう少しの辛抱ですよ?」


 ラミレスは俺の事を心配して言ってくれているのだけど、やはり慣れない。


 慣れないパレードも終わり、休憩をはさんでから披露宴となる。


 披露宴には。臨席している他国の重鎮もいるので、俺は新郎としてはもちろん2国の王としての初の接触となる。

 

 披露宴はパーティ形式で行われ、たくさんの御馳走が準備されていた。


 俺達は服を着替え、今度は皆白いドレスを身に纏っていた。俺も白い儀式用の服に着替えて会場へと向かった。


 パーティなので、俺たち以外の出席者は、祝いの言葉と贈り物を持って俺達に挨拶をしに来ることになっていた。


 そして、隣国スタール王国の王が挨拶にやってきた。


「おめでとうございます。新しきリリアスの王よ。私は隣国スタールの王、クラウド・ザン・スタールと申します。こちらは私の嫁のアムレイシアです」


「スタール王国の姫、アムレイシアです。新しきリリアスの王様。よろしくお願いしますね?」


「こちらこそ、よろしくお願いします。私の名はアリマ・エリスロードといいます。エリス神聖国の王でもあります」


「え?有馬?」


「どうかなされましたか?スタールの王」


「いや、まさか……しかし面影がある……」


「ん?私の顔に見覚えでもありましたか?」


「アリマ王よ……実と言う名前ではないのか?」


「ははは……懐かしい名前を知っておられる。確かに私の以前の名前は、有馬実といいましたが、この世界では……誰も知らないはずですが?貴方は何者ですか?」


「やっぱり!実か!俺だ!俺は有馬大悟だ。20年前!俺は、この世界に転生した!」


「え?親父?だって、俺の親父は20年前くらいに亡くなって……は?」


 転生?親父が?嘘だろ?


「俺は、勇者として転生してから20年、姿も年齢も違うが……有馬大悟だった記憶は残っていた」


「勇者?親父……いやクラウド王は勇者だったのか?」


「おお!ダイゴ!久しいな、我が魂を拾って以来じゃの?」


 そこに割って入って来たのは、まさかのエメラダだった。


「おお、女神様!お久しぶりです。転生させて頂いた恩は忘れておりません。あれ?でも……女神様は封印されていませんでしたか?」


「ふふん!ご主人様が封印から解放してくれたのじゃ!」


「ご主人様?え?実が?」


「訳あって、女神エメラダは俺の配下になったんだよ。ちなみに俺は女神エリスロード様と結婚しているので、ほぼ神に近い」


「は?女神様が配下?さらに他の女神様と結婚していて、さらに5人の姫と結婚したのか?」


「いや、エリス神聖国の姫とも結婚しているよ?」


「おいおい、俺の息子はどこまで行くつもりなんだ?ハーレムが多すぎだろう?」


「俺の嫁は、他にもいるけど?」

 

 そして俺は、眷属達を紹介する事になった。


「こちらが、リリム。この世界では珍しいエルフだ」


「まぁ、私もエルフですのよ?」


 え?クラウド王の嫁は確かに耳が長い。エルフってリリムしかいないんじゃなかったか?


「ボク以外のエルフっていたのか?だってこの世界では生きられないじゃないか?」

「私は、隔世遺伝でエルフとして生まれてしまったのです。死にそうになっていた所、転生された勇者クラウド様に救われました」


「そうでしたか」


「ただ、クラウド様とは歳の差が10もあったので……私が待つことになりましたけど……」


「大丈夫だよ!ボクなんか歳の差400もあるから!」


「え?400って……」


「俺の嫁たちは、神の眷属達なので、死なないんですよ?」


 さすがに、勇者の親父もびっくりしていた。


「それで、こちらがパーラとプリステラ」


「アリマさんの嫁のパーラです。アリマさんのお父様?よろしくお願いしますね?」

「あたしは、同じくアリマ様のお嫁さんにして、アイドルのプリステラです。アリマ様のお父様も王様ですのね?」


「ああ、息子をよろしく頼むよ?なかなか個性的な人たちじゃないか?」


「パーラは猫系の獣人で、プリステラは本当のアイドルですからね?」


「どこかで見た事があると思ったよ。あの人気アイドルが息子の嫁になっていたとはなぁ……」


「親父には、あげないよ?」


「無理だって……」


「さて、次がエリス神聖国の姫で、俺の嫁のマリーシャだ」


「私は、エリス神聖国の第三王女でアリマ様の嫁のマリーシャと申しますわ。お父様にご挨拶出来て嬉しいですわ」


「これは、どうも……マリーシャ様も息子の事、よろしく頼みます」


「最後に……」


「……ん?まだいるのか?」


「こちらが、俺の嫁のパチェッタで、この国では魔道具屋をやっていた呪術師だ」


「ご紹介されました、パチェッタですの。アリマ様は私の運命のお人ですのよ?」


「運命ですか?運命でも良いので、息子をよろしくお願いします」


 嫁の紹介を親父にしていたら、見かねたのか……エリス様がやって来た。


「ほう、婿殿の父は転生しておったか?」


「紹介しましょう……」


わらわが、女神エリスロードじゃ!アリマは、わらわの旦那様なのじゃ!」


 流石の親父も、これには絶句といったところのようだ。


「えっと……創造神エリスロード様。お初にお目にかかります。前世では、そのアリマ様の父をやっておりました。クラウドと申します。息子のことよろしくお願いします!」


 その後、各国の重鎮が挨拶に来たが、1番の衝撃的な親父との邂逅が頭から離れず、その後の事は、よく覚えていなかった。





あとがき


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