第28話 ちょっと3回切ってあげたら消えたよ?
リリアスの5人の姫のうち一人目の眷属化を終えた俺だったが、眷属解放までまだ早いと判断した。
まぁ解放した方が俺の力が増すと思うかもしれないが、確かに眷属化自体が結構力を持っていかれるので、眷属解放した方が使った分の力を回復可能だ。
解放してトントンくらいになればいいんだけど、それでも俺の力は5人解放したところで全然増えないという事になってしまう訳だ。
なので今すぐ全員眷属化するにしろ、しないにしろ、俺の力を増やすことにはならないし、レスティアには少し休んでもらった方が良い。
つまり何が言いたいかと言うと……ちょっと休みたい。
そういえば……レスティアに眷属化すると、寿命が無くなるって言ったっけ?
◇◇
今日はリリムを連れてリリアスの周囲にある巨大な湖シールヴェン湖に釣りに来ていた。
釣り糸を垂らしているが、さっきから一向に釣れない。リリムは俺の左側に座り、釣り糸を眺めていた。
今日のリリムは何時もより可愛く見える。あ、……服が変わっているんだ。精霊の森で出会った時は地味なチュニックを着ていたけど、今のリリムは白いワンピースがとても似合っていた。
「どうしたのさ、急に釣りに行こうだなんて」
「いや、偶にはいいだろ?リリムとは、こうしてゆっくりしてみたかったんだ」
「そんな……ボクで良かったのか?」
心配そうに見るリリムはとても可愛くて……とても500年以上生きているとは思えない。
「いや、リリムは最近出番が少なくて寂しがっていると思ってね?」
「そんな事……」
「俺は釣った魚に餌をあげない男にはなりたくないんだよね」
「ぼ……ボクは魚じゃない!」
「いや、例えだよ?眷属解放した時のリリム……とても可愛かったよ」
「え?あ……あの時は……えっと本当に久しぶりだったんで……自分もあんなにアリマと……その……いっぱいしちゃうなんて……今考えても恥ずかしいよ……あんなにエッチなリリムは嫌いになった?」
リリムは頬を染めて……左手の拳を口に当て、俯き加減で目をそらしながら言った。
「いや?リリムにはもっと色々と教えて貰いたいことが、いっぱいあるし、それに俺、リリムが大好きだから……エッチなリリムも素敵だったよ?」
「もう!エッチエッチって言うな!恥ずかしいよ!」
リリムは、真っ赤になってポカポカと俺の左腕を叩く。
「あはは!だってリリムが自分で言ったんじゃないか?」
「そうだけど……自分で言うのと言われるのじゃ違うんだよ!もう!」
俺はリリムに伸し掛かられた。
その時。垂らしていた糸が勢いよく伸びて、竿が引っ張られてしまった。
「うわ!引いてる!引いてる!」
「ホントだ!うわ!引っ張られる!」
俺の竿に何かがかかったようだ。竿が引っ張られるのを抑えて思いっきり手前に引っ張ると……手のひらサイズの魚がかかっていた。
「おお魚だ!釣れたよ!リリム!」
「すごーい!本当に釣れた……」
「なんだ?俺の腕を信じてなかったのか?リリム」
まぁ……見よう見まねでしかないんだけどね?
取った魚はアイテムボックスに入れておく。生きたままでも問題ない。
次の獲物を釣るかともう一度糸を垂らした時、リリアスの結界を破って入って来た不審な魔物を感知した。
デカいな……この気配は……。
禍々しいオーラを感じる。
「リリム……ちょっと邪魔が入ったんで行ってくる。竿を見ててくれないか?」
「え?何?あ、アリマ?」
俺は飛行術を使い結界の破れた場所に急行した。
結界が丸く切られている?
俺がそこに近づくと、巨大なオークがこちらを見ていた。
「オーク?いや……でもあの大きさは違うかな?」
どっちでもいいけど、今日はエリス神聖国の宝物庫からもらった剣を持ってきていて良かった。
ゴブリンロードの時は力の加減を間違えてやり過ぎたけど……。今ならもう大丈夫?
俺は宝物庫の剣……を構えるとオーク?に向かって瞬時移動すると、剣を一閃した。
「貴様!なに!俺は魔王様配下の四天王第一の!!ちょ!待った!!ガガ!ウガガ!!オノレ!グォオオオオオオオオ!!!!」
まだか?その勢いで、さらに3連続攻撃を加えるとオーク?は光を巻き知らし、消えて行った。
何か言っていたような気がするけど?オークがしゃべる訳が無い。
「ん?……気のせいかな?」
俺は破壊されていた結界を修復すると、また壊されても困るので強化しておいた。
これでまた壊されることもないだろう。
リリムの所に戻ると……。まだ釣れていなかった。
「あ、アリマ!帰って来た!釣れたんだけど……逃げちゃったよぉ」
「なんだ残念だったね?……でも、また釣ればいいと思うよ?」
うん、リリムは頑張ったと思う。
◇◇
芳しくない釣果に気落ちすることもせず、リリアス城に戻ると何やら騒がしかった。
城に戻ると国王のセーグリッドに呼ばれたので、行ってみると何やら結界が破られたとの事だった。さっきのアレの事だろう。
因みに俺は託されただけで、まだこの国の王にはなっていない。まだ婚約という話だしね?
「おお、お待ちしておりました!使徒様」
「どうしたんだ?」
「実は……魔王軍の四天王を名乗るオークキングに、この国の外部結界が破られたとの情報があったのだ!」
「あーそれならもう直しておいたよ?ちょっと結界が弱すぎたから強化しておいたからもう安心?」
「はぁ!?ではすでに侵入されてしまったオークキングの対策を……」
「大きなオーク?だったら倒したよ?何か良く分からないけど、俺は配下とか四天王だとか、そんな事しゃべってたかも?」
「倒した?ええ?魔王軍でも最強と言われている……あの、オークキングを?」
「でも弱かったよ?ちょっと3回切ってあげたら消えたよ?あれって死んだのかな?」
「3回……ははは……流石は使徒様!これでこの国の安泰ですな……ははは!」
セーグリッド王は何が面白いのか分からないけど、楽しそうだった。
「ところで魔王っているの?」
「うむ、魔王は魔大陸に封印されているのだが、確か……復活してるかどうかは分からないと聞いているな……」
「へぇ……いるんだ?」
こうして人知れず……魔王軍の襲撃から人々は守られていた。
あとがき
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