第25話 五等分しない花嫁


 リリアス城の、とある一室に5人の花嫁が集まっていた。第一から第五まで数字の付けられた姫達だ。別に五等分はしない……多分。



 長女の第一教女ラミレスが口火を切った。


「既にお父様から聞いているかもしれませんが……私達の婚約が決まりました」


「ラミレス姉様?それは本当なのかしら?」


「アンジェリカ……そうよ?先ほどお父様よりお話がありました」


「前聞いた話だと、継承権争いで一人ずつ婿候補を連れてくる話じゃなかった?」


「アンジェ!あたしは争いは嫌いだ。この中から一人だけしか国を継げないなんて……。あたしには継承権を賭けて争うことなんて出来ない!だから……今まで国を乗っ取る事しか考えない下衆ゲスな連中からの求婚は拒否して来たんだ」


「男みたいなリンスレット姉様に、求婚なんてあったかしら?聞いたことないわ」


「何だと!アンジェ!」


「喧嘩はだめ……」


 喧嘩を止めようとしているのは第三教女のレスティアで口数は少ないが、大人しくて優しい性格をしている。


「わたくしだって、スタール王国から打診はあったけど、年寄じじいばかりだったから全てお断りしたわ!」


「あはは!年寄など、乗っ取り狙いに決まってるぞ」


「きぃぃぃぃぃ!」


 アンジェリカは第四教女でちょっと勝気な性格で、しいて言うならツンデレ属性となる。


 第二教女のリンスレットは男勝りの短髪で、良くアンジェリカとは言い争いになるらしい。


「姉さま達?もう姉妹で争う事はありません。わたくし達姉妹の婚約者が決まったのです」


「ルリアナの言う通り、私達の婚約者は一人です」


「えぇ!?一人だけですって?たった一人に全員が嫁ぐんですの?」


「そうです……その方の名前は……アリマ・エリスロード様。女神エリスロード様の使徒様です」


「「「ええええええええ!?」」」


「そして、わたくしの命の恩人です!……ぽっ」


 そう言った第五教女ルリアナの顔は耳まで赤くなっていた。



◇◇



 俺はパチェを眷属解放する事で、エメラダに取られた分の力を大分取り戻すことが出来た。


 これで5人の姫の眷属化を進めることが可能になったが、全員を纏めて出来るわけでもない。今の所は一人が限界と言ったところか……。


 俺は、例によって誰を最初に眷属化するかを決めるために、お見合い?をすることにした。



「入ってくれ」


「失礼します」


 まずは第一教女のラミレスという人から入ってもらった。

 ラミレスは長女ということで歳は20歳、まぁ俺のゾーンは広いのでOKだ。

 綺麗な赤い髪は長く伸ばしていて、目はこの国では珍しく黒だった。これは好感が持てそうだ。


「わたくしは、第一教女ラミレス・ド・リリアスと申します」


「うん、俺はアリマ、アリマ・エリスロードだ」


「よろしくお願いします。使徒様」


わらわは女神エリスロードじゃ」

「我が女神エリスロードの姉エメラダじゃ。今はアリマちゃんが、我のご主人様じゃ」


「……はい?女神様がお二人……使徒様がご主人様??はい?」


 このエリス様と自称破壊神エメラダは余計だったか?どうも理解できていないようだ。

「この二人は気にしないでくれ。怒らせると怖いからな?」


「は、はい!分かりました!」


「それで、婚約の件だけど……ラミレスはどう?俺と結婚する?」

「はい、それは喜んでお受けいたしますが?何か?」


「いや、嫌じゃないならいいんだ。俺は無理矢理はしない主義だから」


「はぁ……わたくしも、もう20ですし……行き遅れとも言われておりますので……どうか貰って頂けないでしょうか?」


「え?そっち?あの好き嫌いとかの感情は?」


「使徒様は……」


「あーその使徒様ってやめない?」


「それではアリマ様で?」


「うん、それで」


「アリマ様はルリアナの命の恩人でもありますし、恥ずかしながら、そのかっこいいと思います」


「うん、ありがとう」


「ラミレスは俺の好みだし、とても綺麗な人で守ってあげたいと……俺は思ったよ。だから婚約の話受けて欲しい」


「はい!謹んでお受けいたします」


「それじゃ次と交代してくれるかな?次は……第二のリンスレット?」


「はいリンスレットですね?」


「では、入ります」


 次はっと、次女で第二教女の……リンスレット18歳か。リンスレットは男っぽいと、髪の毛はブラウン系の明るい色で目は透き通った青い色。


「あたしは、第二教女リンスレット・ド・リリアスだ。よろしく頼む」


「うん、俺はアリマ・エリスロードだけど……」

わらわは、以下略じゃ」

「我もじゃ」


 エリス様とエメラダは名前を言わないどころか略しすぎ!

 

「いやそこ!略すとこじゃないからね?」


「何のことだ?」


「もういいや、えっとリンスレットは、結婚をどう思ってる?」


「結婚は政略そのものだが、愛のない結婚などつまらん余興にすぎん」


「なんかごめん……俺は政略なんかよりも愛を優先したいんだ」


「これが政略でなくて何だというのだ?全員娶るなどとは」


「リンスレットの言う事も分かるが、これは国のため、しいては5人の為と聞いている。こうでもしないと5人は争う事になり、5人のだれかに死人も出たかもしれないと聞いているよ?」


「そ、それは……」


 リンスレットの顔は苦しそうな表情をしていた。図星を付かれてるのだろう。

 

「しかもリンスレットは争いを望んでいなかったと聞く」


「そうだ、争いは望んでいない」


「ならばこれが最適解だとは思わないのか?」


 これなら5人全員が幸せになれる。よな?


「かもしれんな。負けたよ。あたしは、あんたと結婚しよう。いや、結婚してくれ」


「うん。いいよこっちからもお願いするよ。物分かりのいい子は好きだよ?リンスレット」


 こうして、2人の面接は終わったけど、あと3人の面接が残っている。


 残るは第三教女のレスティアと第四教女のアンジェリカ、それから俺が助けた第五教女のルリアナの三名だ。







あとがき


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