第21話 あ♡見てます♡見られてます♡



 風呂から上がるとルリ姫が来て、食事の準備が出来たからご案内すると言って来た。

 これは楽しみでもあった。エリス神聖国では、まともに食事をした記憶が無い。

 

 あれ?おかしいな?俺、一応国王だよね?


 そしてルリ姫に案内されたのが、これまた豪華な迎賓館のような建物だった。いやここまでしなくてもいいのに……。


「これってもしかして……」


「こちらは、リリアス迎賓館になります」


 ですよねー。


「どうりで豪華な造りだと……」


「こちらは国賓をご案内して接待……いえお食事を楽しんでいただく場所となります」


「普通に食堂とかダイニングとかで良かったんだけど?」

  

「そんな、神様に対して食堂など用意させられません!責任を取らされて責任者の誰かが死にます!」


「いや、ここでいいよ?」


 怖いよ?誰か死んじゃうの?


 迎賓館に入るとまた姫様のような人が出迎えてくれた。


「あ、ご紹介します。アリマ様……女神様。こちらはラミレスお姉さまです」


 ルリ姫はちょっと緊張しているのかな?

 

「私はリリアス教国第一教女、ラミレス・ド・リリアスと申します。貴方がアリマ様ですか?」


「はい。俺はアリマ・エリスロード。エリス神聖国の国王でエリス様の婿になります」

わらわが女神エリスロードじゃ。出迎えご苦労じゃったな。ほめて遣わすぞ」


「え?あ、ありがとうございます?他の方は」


「他はわらわの眷属達5人と護衛とペットじゃ」


 御者もいるけど今は言う必要もない。


「そ、そうでしたか……この度は、妹のルリアナを盗賊からお救い頂き、さらには死にそうな所を命まで救って頂いたとお聞きました。本当に有難う御座いました」


「あれは、死んで欲しくなかったので、俺が勝手に助けただけですよ?」


「アリマ様は、妹の……ルリアナの命の恩人です」


「いえ、まぁ、とにかく無事で何よりですよ」


 俺は苦笑いを浮かべつつ横に控えているルリ姫を優しく見つめると、照れくさいので後頭部を掻いて誤魔化した。


「満足して頂けるか分かりませんが……ささやかですが、本日は歓迎の宴をご用意しましたので……ご案内いたします」


「気を使わせちゃってすみません」

「うむ、良い心がけじゃ。案内せよ」


 さすがはエリス様、貫禄はあるな。


 俺たちが案内されたのはホールになっていて……パーティー会場のように沢山の料理がテーブルの大皿に盛りつけてあった。


「凄いなこの料理の量は……」


「残しても大丈夫ですよ?この国では王族が残したものは全て市民へと配られるのです。それに、この国には貴族はいません。身分は神様を除けば、王族か市民の二択になります」


 ご説明ありがとう。えっと、ラミ姫?


「今宵は歓迎の宴です。好きなようにお皿にとってお食べ下さい」


 どうやら立食タイプのようだ。自由に食べたい分だけ取れるし、気兼ねしなくて済むから良い。


 気兼ねなくと言ったらみんな一斉に料理に手を出し始めた。


「これは!美味じゃの♡ほめて遣わす!もっとよこすのじゃ」


「いただきまーす。ボク何食べようかな?パーラの料理より美味しそう」

「リリム?いいけど……少しアイテムボックスにしまってもいいかしら?」

「食べ残したら、市民に配るって言ってましたわよ?パーラ?持ち帰りは禁止ですわ!」

 リリムは美味しそうに頬張っていた。リスみたいで可愛い。

 パーラは持ち帰るなよ?明日からパーラだけ食事抜きにするぞ?


「マリ姫も食べてるか?遠慮はいらないからね」

「遠慮はしていませんわ、でも美味しいです!」


 マーニャは猫耳獣人だから魚は好きなんだろうなぁ。あ、マーニャが魚をめちゃよそっている。


「お魚!これはうまいにゃ!もっとよそるにゃ!」

「マーニャは魚好きだもんな」

「このお魚……味が染みていて美味しいですね。あたし、これ好きかも」

「確かに美味いな。これはエリス神聖国でも食べられたら……作り方を教えてもらいたいな」


 プリステラも魚料理が気に入ったようだ。ティナ姫はもう作り方を考えているな勉強熱心で関心するよ。


「リリアスは魚が主食なんですの」

「ええ?そうなのパチェ?でも主食に魚はちょっと……」


「ふぅ……やっと食事なのじゃ!ドラ子はこれでも大食いじゃから足りるかのう?」

「ほらドラ子餌だぞ?」

「餌じゃないわボケ!」

「だってお前はペットだろう?ペットには餌をあげないとね?」

「覚えておれよ!でも餌は食べるのじゃ。ほれもっとよこすのじゃ」


 俺が一人になって食べ始めるとパーラが寄って来た。眷属解放出来ていないのを気にしているのかな?


「アリマさん食べてますか?」

「……パーラか。うん食べてるよ?」

「パチェの件ですが……やっぱり眷属解放されるのですか?」

「うん、条件はもう整っているしね。やらない理由が無い」

「そうですか……」

「パーラはどう?俺の事好きになった?」

「どうでしょう。好きか嫌いかで言ったら好きになります」

「そうなの?」

「でも、それが本当に好きな気持ちなのかが……」

「パーラ?キスしていい?」

「え?今ですか?」

「今」

「ちょ、ええ?」


 俺はパーラにキスしてみた。


「んん♡……はぁ♡……いい♡……あ♡見てます♡見られてます♡」


「どう?俺の事は好き?」

「はぁ♡……はぁ♡……はい♡大好きです♡」


 パーラは、実は結構チョロインだったみたいだ。


 結局今日の眷属解放については、候補が2人になった。



◇◇



 俺たちが食事を堪能していると、来客があった。


「ちょっといいかな?あたしは第二教女のリンスレットだ。よろしく頼むよ?」


 リンスレットと名乗る男っぽい言動のリン姫は美人で、青い瞳にキラキラ光る明るい茶髪は肩まで無い。


「あの……私は……第三教女……レスティア……です。よろしくです」


 レスティアと名乗ったレス姫は、大人しい性格のようで、透き通ったルビーの瞳に綺麗な白銀色の髪をしている美少女だった。髪の長さはセミロングで胸の上あたりまである。


「わたくしは、第四教女のアンジェリカよ?今日は別に来たくて来た訳じゃないんだからね?ちょっと、妹の命を救ってくれた人が、どんな人なのか気になっただけなんだから!」


 ツンデレぽい言動の美少女は、アンジェリカというらしい。アン姫はサファイヤのような綺麗な瞳にサラサラした金髪をツインテールにまとめていた。


 ルリ姫が第五だからこれで姫が5人揃ったことになる。

 

 こう、5人集まると……ラミ姫とルリ姫がまとも?に見えてくる。それほどに個性的な姉妹だった。



◇◇



「悪い悪い、娘たちが粗相していないか?」


 そこに現れたのは、この国の王様だった。


「改めて自己紹介させて欲しい。俺はセーグリッド・ド・リリアス。この国リリアスの国王だ」


「俺はアリマ・エリスロード。俺もエリス神聖国の国王だ」


「アリマ殿とお呼びすればよいか、使徒殿か?」


「別に気にしないから好きに呼んで構わないよ?でも神様はやめて?」


「では、アリマ殿、国王同士腹を割って話さないか?」


「いいけど?何か相談でもあるの?」


 セーグリッドはちょっと悩んだような顔を見せると……この国の事情を話し始めた。

「実はな?俺には息子がいないんだ」


 ん?このくだりどこかで聞いたような?


「それで?跡継ぎがいないと?」


「そうなんだよ!良く分かったな?そこで俺には5人の娘がいるんで婿を取ることにしたんだが……揉めてな……」


「分かりますよ?その気持ち。誰も結婚を望んでいないとかでしょ?」


「そうなんだ……ってなんで分かるんだ?」


「なんででしょうね?」


 そんな気がしただけですけどね?


「そこで、丁度いい所にアリマ殿が現れてくれたと言う訳だ」


 既視感デジャヴがあるのは気のせいかな?


「はぁ……」


「神様に匹敵する、いやもう神様としか言えない使徒様であるアリマ殿ならば娘を託すことが出来る」


 えっと……天罰が怖いんですけど?


「それで?どうしろと?」


「5人の娘を全員託すから貰ってくれ、あとこの国もやるから娘の中から子供が出来たら、継がせてやってくれ!」



 エリス神聖国と同じパターンかい!しかも5人に増えてるし!?



 ……さてどうなることやら?






あとがき


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