第10話 もう500年はしてないから、処女なんだ!




 謁見の間には聖王の他に聖女、ミル姫、マリ姫、あと赤い髪の女騎士、あともう一人おじさんがいたけどもう、声をそろえてびっくりしていたよ?信じる信じないは別として、驚かないでって前置きしておいたんだけどだめだった。


 まぁ普通の人だったら信じないだろうね。俺がエリス様と結婚しているなんて事は。


 ここでなんちゃって?なんて言ったら、ですよねーって感じになるのかな?




「エリスロード様からの神託は?巫女はおらぬのか?」


「あなた、気を確かに?巫女はわたくしです!今代は聖女のわたくしの役目になっています」


「そ、そうだったか?」


 神託というのは、神様からお告げを聴く役目の人、神の巫女と言う人が行う神事で、その時に神様からのメッセージを貰う事を言うんだけど?本当に出来るの?


「では、巫女である聖女よ、神託の儀の準備を頼む」


「神託なんて何年振りかしら……」


 ミル姫達の母親であろう聖女も胸が豊満で結構な美人だ。若い頃はミル姫のように美少女だったに違いない。


「あの、それって準備にどれくらいかかるんですかね?」


「五日もあれば女神様よりお告げが得られよう」


「五日!?そんなにかかるんなら帰ってもいいですかね?」


 さすがに五日も待てない。


「そうだな、その真偽はともかく本題を話そうか」


「まずは我が国の生い立ちから説明しようか」


 そこから!?やっぱり帰っていいですか!?


「エリス神聖国と名乗ってはいるが、初代国王は女神様の眷属であるリリム様と共にこの国を建国なされた」


 え!?エリス様の眷属のリリム!?


 俺がリリムの方を見ると、リリムは顔をそらしてボク関係ないみたいな顔をしている。


 リリムにも知られたく無い事が一つや二つあるんだろうな。


 王様に顔を戻して続きを促す。


「そして、眷属の子孫たる我ら一族は、エリスロード様に尽くすためにこの国を守ってきたのだ」


 ちょっと、やんごとない事を言っているんだけど?この国の王族はリリムの子孫?


「えっと、リリム?」


 俺は念のため小声でリリムに聞いてみた。


「あー、今は聞かないで欲しいな?アリマ」


「しかし、いつの日か建国当時の趣旨から外れ、女神様のみを主とし、眷属と亜人を蔑ろにする組織が出来てしまった。それが狂信派として諜報や亜人暗殺、誘拐などの犯罪を行う巨大な軍事組織に成長してしまったのだ。我らは女神様の眷属の子孫だというのにだ!」


 そういえばエリス様も、要らんと言っていたような気がするな。


「その巨大な組織が一夜にして消えたのは知っておるか?」


「え?消えた?」


「皆一様に目の前から死体も残さずに消滅したと証言している事から消えたとしか表現できなかったと言う事なのだ」


 なんか、冷や汗が出てきましたよ?エリス様?


「誰にも分からず説明がつかないこの天災故に皆、これは天罰に違いないと口をそろえて言うようになった」


 天罰って、結局は俺のせい?なんかもう断れない雰囲気になって来たよ? 


「それで、本題はここからなんだが、この国の軍事を担っていた組織の壊滅したところに、災害級の魔物の目撃証言があって、その影響で魔物が活性化しているようなのだ」


 災害級?この間倒した魔物がそんな感じじゃなかったか?


「災害級か分からないけど、大きな狼の魔物なら倒したので持ってますよ?ここに出しても大丈夫かな?」


「え?」


 俺はアイテムボックスから、グレートアーマードウルフを取り出した。謁見の間は結構広いから大丈夫だろう。


「え?アイテムボックス?」


「これは、災害級の魔物!グレートアーマードウルフううううううう!?」



「えっとぉ?解決?」



「おお、さすがは勇者様……いや、アリマ様!既に災害級の魔物を倒していた上に伝説のアイテムボックスまでお持ちとは、女神様の婿というのも……あながち嘘では無いのかもしれんな」




◇◇




 取り合えず、俺のお陰で国の危機は去ったと言う事で、あの大きな黒い狼は国が買い取ってくれる事になった。なんでもお祭りで国民に見せたり、肉を振舞われる事になるそうだ。


 俺も食べたかったけど、みんなで食べてくれるなら手間も省けるし、その方がみんなで楽しめるから良かったのかもしれない。


 国難を乗り切ったお祭りはなんか、色々と準備があるとかで、5日後に開かれることになり、俺たちはそのお祭りで今回の褒美を頂けるということだった。


 とりあえず用事も解決したと言う事で俺たちは、大衆食堂兼宿屋「猫の爪亭」に帰ってきた。部屋はそのままリリムと同じ部屋だ。



「それで、あの王族はリリムの子孫にあたるの?」


「アリマにバレるとはね。言っておくけど、ボクの年齢は絶対に聞かないでよ?エリスロード様よりは若いから!」


「女神さまと比べる所で察するよ。まぁ、俺は年は気にしないから安心してよ」


「女神様と結婚するアリマに、そんな心配いらないだろ?」


「大丈夫、俺は中古でも気にしない」


「な!それだけは許せないな?アリマは言ってはいけない事を今言ってしまったね?」


「え?やっぱり気にするの?」


「ボクは、もう500年はしてないから、処女なんだ!」


 すごい理論だけど、分かるよその気持ち。あと年齢バレてるよ?



 ――そして、五日後。



 都市中央部の噴水広場にある初代国王テシウスの像の前には、俺(勇者?)に倒された災害級の魔物の頭部が飾られていた。


 聖城の前の広場には、多くの国民が集まっており、全国民?いや、他の都市からも人が集まっているようだった。


 聖城のベランダもとい踊り場のような場所には聖王と王族、俺とリリムも臨席している。なぜリリムもいるかと言うと、初代国王テシウスの妻、初代王女のリリムであることがバレたからだ。


「此度、この国難を救ってくれた、エリスロード様の女神の使徒!アリマ・エリスロード様に感謝を!」


「「「「「「「「アリマ・エリスロード様に感謝を!」」」」」」」」

「「「「「「「「アリマ・エリスロード様に感謝を!」」」」」」」」

「「「「「「「「アリマ・エリスロード様に感謝を!」」」」」」」」


 え?何が始まったの?


「おお!使徒様だ!使徒様!」

「キャァァァァ!使徒さまぁ!」

「こっち見てぇ!使徒さまぁ!」


「「「「「「「「使徒様ばんざーい!」」」」」」」」

「「「「「「「「使徒様ばんざーい!」」」」」」」」

「「「「「「「「使徒様ばんざーい!」」」」」」」」


「エリスロード様の眷属にして、初代王女リリム様に感謝を!」


「「「「「「「「リリム様に感謝を!」」」」」」」」

「「「「「「「「リリム様に感謝を!」」」」」」」」

「「「「「「「「リリム様に感謝を!」」」」」」」」


 凄い歓声に酔ってしまいそうになる。


 なんかすごい事になってるんですけど?


 次に、今回の褒美について何か発表があるって聞いてたけど。王様は俺の方をちらりと見ると、自分の横に立たせるって、俺、王様の隣にいていいの?


「皆の者!全ての国民よ!今ここに宣言する!エリスロード様の使徒であられる、アリマ・エリスロード様に3人全ての王女を嫁がせ、エリス神聖国の全てを移譲する事とする!」


「はい!? えええええ!? 跡取りというか、王子はいないんですか?」


「うむ、いない!王女が3人しかいないのだ。ふっ……アリマ、後は頼んだぞ」


 っていうか、天罰!天罰来たらどうするの?エリス様!?



 と、いう訳で……何だか知らないうちに、俺はエリス神聖国の王様にさせられてしまったのだった。






あとがき


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