第8話 他に空いてないなら仕方ないよね




 聖都エルスハイムの某所では、第三王女マリーシャと第二王女ミルラルネ、その配下のナポリ―ネが現況確認を行っていた。ナポリ―ネは犬系の獣人であり、某パスタの名前ではない。


「やっぱり諜報部が無くなったのが痛いですわね。そう思うでしょ?ナポリたん」


「まぁ、諜報部は狂信派の部署でしたからね」


「それで?ミル姉さま?勇者様の行方の見当はついたのですか?」 


「精霊の森で見失ったので、精霊の森周辺を捜索中なのだけど、魔物が狂暴化していて……」


「災害級の魔物の目撃情報もあって……なんとも」


「ならば、高ランク冒険者でも雇って……、あぁ、ナポリたんの、その鼻で探してきなさいな」


「私が犬獣人だからって、そんな簡単に見つかるわけが……」


「その犬の鼻は飾りなのかな?ナポリたん?」


「せめて匂いの分かるものがあれば……」


「ありますよ?勇者様が着ていた服は回収してあります」


「はぁ?在るなら、それを先に言えよ!?」


 かくして、第三王女マリーシャとナポリたんによる勇者の捜索が始まったのだった。



◇◇




 聖都エルスハイムの南西の商業区の一角にある食堂『猫の爪亭』は獣人相手の料理屋で2階3階は宿泊出来るようになっている。


 その一階の奥の結界に張られた個室では、猫獣人の女主人と昔馴染みの客が重要な話を始めていた。


「アリマさん?……その腕輪はどうしたんですか?」


「え?これ?そういえばもう、存在感忘れてたよ。なんだっけな、外れない腕輪?」


「それは……間違いなく、パチェッタの作った腕輪ね」


「そう、パチェッタの……え?」


「やっぱり?そうか!どっかで見た事あると思ったんだよ」


 リリムは、やっぱりといった顔で天井を仰ぎ、遠くを見るような目をしている。


「その……パチェッタって?」


「呪術師よ?でも、ただの呪術師じゃなくて、その子もエリスロード様の眷属なの」


「ふーん、眷属ってことは、次の目的は決まった感じだね?」


「次は、行き先がパチェッタだといいね」


「それとリリム、今日も泊ってくんでしょ? ……でも困ったわ、今日は一部屋しか空いて無いみたい」


「うそ……昨日は空いてたよね?」


「急に埋まっちゃったのよ」


「別に、俺はリリムと一緒でも構わないよ?」


 リリムの家でも一緒に寝てたしね。


「……うん……他に空いてないなら仕方ないよね……」


 食事はそのまま個室で食べる事になり、パーラは「ごゆっくり」と言うと店の奥へと戻っていった。

 程なくして個室に料理を持って入って来たのは、マーニャだった。


「お料理お持ちしたにゃ、お待たせにゃ」


「マーニャ、ありがとう。そうだマーニャも一緒に竜車で旅に出ないか?」


「うにゃ?マーニャも連れてってくれるにゃ?」


「うん、考えてくれると嬉しいかな」


「分かったにゃ~」



◇◇



 俺とリリムが2日目に借りた部屋は、2階の突き当りの一室で、ベッドが部屋の大きさに対してかなり大きいような気がする。見た感じキングサイズのダブルベッドのような感じだ。


「リリム入るよ?」


 ノック無しで扉を開け、部屋に入るとリリムが慌てたようにシーツで体を隠している。


「あっ!アリマ!ノック!ノック忘れてるよ?」


 リリムの顔が真っ赤になっているように見えるけど気のせいかな?


「ご、ごめん!」


 俺が大き目のダブルベッドに横になると、リリムが後から緊張しながら布団に入ってくる。

 すると、リリムが俺の後ろから腕を回して抱き着いてきた。

 

「あ、あの……」


「リリム?」


「ボクも、アリマが、す、……しゅき♡……だから……していいよ」


「俺もリリムが好きだよ?」


「うん、ボクは……本当に……初めてなんだ。あの、眷属解放術。優しく……して?」


「大丈夫、俺も解放術は初めてだけど……、エリス様には十分伝授してもらっているから」


「いいよ、……ボクを解放してくれ」


「分かった」


 リリムの火照った体はとても美しく、控えめな胸も……とても綺麗だった。


「解放術式オープン!」


「んはぁ♡んん……すごい!これ……が、解放術♡なのか……はぁ……はぁ♡んん!ああああん♡」


「眷属解放!」


「んんっ!!んああああああああああああああああ!!」


「…………はぁはぁ、終わったよリリム」


「しゅごい♡アリマぁ♡力が!力が漲ってくるよぉ♡」


「アリマ♡……もっと♡足りないよ……」


 眷属解放したその後、リリムの解放された力を宥めるのに……朝までかかって大変だった。何が大変って、まぁ……俺の体力的にだ。


 俺はまだ、亜神の力というのを、舐めていたようだった。



◇◇



 一方、勇者探しをしていた第三王女マリーシャとナポリ―ネは、遂に手がかりを見つけていた。


「クンクン、ここ勇者の匂いがするよ?ここは?えっと猫の爪亭かな?」


「お手柄よ!ナポリたん!ふふふ……勇者様ついに見つけましたわ」


 それにしても、聖都内にいるとは灯台下暗しね。





あとがき


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