第6話 それならさっき倒したから、もう大丈夫だよ?



 エリス様より頂いたドラゴン〇ーダーもとい、眷属レーダーによると、これから向かうエルスハイム方向に反応があった。まずはエルスハイムに行って眷属を探そうと思っていたら、リリムには何やら伝手があるようで、そこまで案内までしてくれるとの事だった。



 リリムの力で精霊の道を通って精霊の森の中を移動する。2、3時間歩いた所で小川があったので、そこで休憩を入れる事にした。


「アリマは疲れてない?」

「全然大丈夫みたい。まだまだ体力余ってるよ?」

「ボクは疲れたからちょっと休憩にするよ」


「なんなら、おぶって行こうか?」


「え?いや、そ、そこまでして貰わなくても大丈夫だよ」


「お姫様抱っこの方が良かった?」

「お、お姫様だ、だ、抱っこぉ!?」


 リリムは顔を真っ赤に染めて、あたふたし始めた。


 やっぱりリリムは可愛いな。エメラルドの輝きを持つ瞳に、瞳の色にも似た薄緑色のサラサラとしたボブカットがフルフルと揺れている。


「まぁ、それは冗談として……」


「冗談……なんだ……」


「え?」


「ううん?何でも無いよ?」


 この先は結界の外だから、魔物も出てくるらしい。


 まぁ、たとえ魔物が出たとしても、今の俺は服を着ているし防御力は無いみたいだけど、一応防具も付けている。


 着ているんだという安心感がいい。エリス様には、この異世界でも生きていけるようにと、最低限の修行を付けてもらったし、もう痴女のお姉さんにヤられそうになった時のような油断はしない。


 あの時と違って今は、リリムというエルフの美少女が傍にいてくれるのだから。

 

 リリムはちょっと胸の方は控えめだけど、それはエリス様も同じだ。そういえばミル姫とライナは結構大きい胸をしていたけど……。


 俺っておっぱいに、つくづく縁が無いなぁ。


 え?なんか今、ぞくっとしたんだけど?……冷や汗が止まらない?エリス様大丈夫ですよ?満たされてます!貧乳大好きです!


「アリマ?そんなにボクの胸をマジマジと見られると、恥ずかしいんだけど?」


「ご、ごめん!」


「アリマって、やっぱり……そ、そういう事……興味あるのかな……」


「無くはないかな?それなりには、有るつもりだよ?」


「ボクには、そう言うの良く分からないんだ。ほら、ボクって今まで男の子として生きてきたからさ。その、恋愛とか良く分からなくって……」


「リリムは、とっても美人で可愛いと思うよ?俺が保証する」


「な!……あ、あ、アリマにそう言って貰えると嬉しい……かな」 


「うん、そろそろ行こうか?」



 休憩を終えて結界を抜けると早速魔物の気配がした。気配察知は修行の成果でもある。右奥に2体、左に3体、ウルフ系の魔物のようだ。武器は持っていないので素手か魔法か、俺は防御が出来ないので選択枝は魔法になる。森の中なので火魔法は使えない。ここは風が土か……。


「フォレストウルフ?嘘?こんな近くに出るなんて」


「リリム下がってろ!」


 俺はリリムを下がらせると灰色のウルフ型の魔物2体に魔法を放った。


「グルルル……グガァァァァァァ!!!!」


真空刃ヴォートラーマ!!」


 ズババババ!!ズババババ!!


「「グギャァァァァァ!」」


 風系統の中級魔法「真空刃」だ。こいつはよく切れる。


 次のウルフ3体のうち1体は、他と比べて一回り大きい体躯をしていて色も黒い。リーダー格か?


「「「グガガァァァァァァァァァ!!!!」」」


土槍グランスピア!!」「土槍グランスピア!!」「土槍グランスピア!!」


 ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!


「「「グガャァァァァァ!」」」


 土系統の中級魔法「土槍」で3体を仕留める。いや。大きいのはまだ生きているようだ。ならば……。


岩嵐ストームフェルゼン!!」


 ズダダダダ!!!ズダダダダ!!!ズダダダダダダダ!!!ズダダダダダダダダダダダダダ!!!


「グギャァァァァァァァァァァ!」


 これなら、土系統の上級魔法「岩嵐」でとどめを刺す。これは土槍を嵐のように降らせる上級技だ。この程度の魔物ならばこれで十分だろう。


「こんなもんかな?」


 気配察知には何も引っかからないのでもう大丈夫だろう。


「アリマ!大丈夫か!?」


「もう周囲に魔物はいないようだよ?」


「いや!アリマの体の方だよ!?」


「ただのウルフ5体くらい特に怪我もないし大丈夫だけど?」


「だって、アリマこの黒い魔物……フォレストウルフじゃなくて、災害級の魔物グレートアーマードウルフだよ?」


「え?」


 でも、その黒狼、2発で倒せたから弱かったよね?災害級?そもそも、なんでそんな魔物がこんな近くにいるんだよ?


 取り合えず、肉として食えるかもしれないので収納魔法で保存しておく。これもエリス様との修行の成果だ。


 それ以降は、ホーンラビットとか人型の雑魚ゴブリンなんかのもっと弱い魔物しか出てこなかった。



◇◇

 


 森から出て街道に出るとそれまでとは打って変わって整備された道が見えて来た。


 整備されたといっても日本の様にアスファルトの道なんかではなく、幅3メートル程度の踏み固められた土の道だった。


 暫く街道を歩いていると馬車のような乗り物が近づいてくる音がしたので、道端の岩影に隠れてやり過ごす事にしたんだけど様子がおかしい。

 え?御者が居ない!?暴走している!?


「アリマ!あれ御者がいないよ?」

「止めよう!」


 暴れる馬車?を神聖術の安らぎの微笑み「安静フラームハイト」で止めると、暴れていたのは馬では無くトカゲだった。


「な……トカゲ!?馬車じゃないのか?」


「竜車だよ、この辺では馬じゃなくて地竜に馬車を引かせているんだ」


「そうなのか」


 リリムと話していると馬車?の中から可愛らしい黄色い髪に猫耳をつけた女の子?が出て来た。目が琥珀色で可愛い。


「助かったにゃ~」


「何かあったんですか?」


「大きな黒い狼の魔物にやられたにゃ。あれは正しく伝説級の魔物にゃ。それで御者もやられて、地竜が興奮して制御不能になったのにゃ」


 さっきの魔物かな?


「それならさっき倒したから、もう大丈夫だよ?」


「ふぇ?倒したにゃ?伝説級を?」


「伝説かどうかは分からないけどね」


「すごいにゃ!えっと、あちしは、マーニャにゃ」

「ボクはリリムだよ?」


「俺の名前はアリマ、アリマ・エリスロードだ」

「エリスロード様にゃ?ええ?神様にゃ?」


 そうだった、この国はエリス神聖国。エリスロード様を信仰する国じゃないか。


「あ~、それは内緒にしといてくれると助かるかな?うん、正確には神様の婿。まぁ今は使徒のようなものかな?」


「ほぼ、神様にゃぁあああ!」


 それから俺たちは、マーニャの竜車を連れて、一緒にエルスハイムへ向かうことになった。







あとがき


続きが気になる。更新頑張ってと思っていただけましたら

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