第5話 妾は試練と言うたはずじゃが?




 お風呂から出ると、リリムの顔がやけに赤くなっているように感じたんだけど光の加減かな?


 エリス様は、先にお風呂から出たからエリス様と何かあったのかもしれない。


「あ、あのベッドは、ボクの一つしか無いから……どうぞお二人でお使いに……」 


「何を言っておるのじゃ?リリムも一緒のベッドで寝るのじゃ」


「ふぇ!?」


「遠慮はせんでよいぞ?狭いなら広げればよいのじゃ」


 そう言うと一人用だったベッドが広がってダブルベッドのようになった。


「エリス様……そんな簡単に力を使っても大丈夫なんですか?」


「…………大丈夫じゃ」


 その間は何ですかあ!?絶対大丈夫じゃないですよね!?


「まぁいいですけど」


 では寝ますかと言って、俺が真ん中に寝て、右側にエリス様、左側にリリムとなる感じで川の字になって寝ようとした所で、エリス様から声をかけられた。


「婿殿よ、いい機会じゃリリム相手に、眷属解放を行ってみよ」


「はい?」

「ふぇぇ!?エリスロード様ぁ?」


 え?さっきのを?今?やるんですか?まじで?


「これもまたチュートリアルじゃ」


「え?」


 いや流石にちょっと……無理でしょ?


「婿殿よ?わらわは試練と言うたはずじゃが?」


「だってこう言うのは、ほらお互いの事をもっと良く知ってから……あ……エリス様?」


「ほう……婿殿は、お互いの事を良く知らぬまま、わらわと契ったとそう申すか?」


 エリス様の後ろにゴゴゴゴゴ!って文字が浮いているように見えるんですけど?


「いやいやいや!そんな、エリス様の事は、本当に大好きですよ?神に誓って!」


「そうかそうか……むふー♡、わらわに誓ってかの?そうか大好きか?しょうがないのう」

「そうじゃな、好き同士でないと眷属解放は出来んのう。では婿殿よ、リリムは好きか?」


「えっと……好きか嫌いかでいうと好きですよ?」


 さっき、見惚れてしまったのは確かだしなぁ。


「では、リリムよ!アリマは好きか?」


「ほえぇ!?あっ……あの……その……ボクは、その……そんな恥ずかしい事……言えません!」


「ほれほれ、解放したいのであろう?素直になった方がよいぞ?」 


「あう……あう……エリスロード様の婿殿なんて……恐れ多くて……こんなボクなんか相手に……はうぅ」

「遠慮はいらんと何度も言うておるに……わらわに遠慮しておるのじゃな?」


「…………チュートリアルもここまでかの」


「何か?」


「いや、こっちの話じゃ」


 エリス様が小声で何か言っていたような気がするけど……良く聞こえなかった。


「婿殿よ1回目の新婚旅行はここまでとするのじゃ。わらわは明日帰るとする」


 帰るための力が無いって言ってなかった?エリス様?あと、1回目って何?2回目以降もあるの?


「では、寝るとするかの」


「はい、おやすみなさいエリス様」


「お休みなさいエリスロード様」


 そして、精霊の森の夜は更けていった。



◇◇



 翌朝になりやっぱり、エリス様は家に帰るようだった。


「では、眷属以外に浮気はギルティじゃからな?」


「肝に銘じます!」


「あ、エリスロード様!ありがとうございました!」


「また会おうぞ!婿殿にリリムよ」


 しゅん!っという音と共にエリス様は異空間にある自宅に帰ってしまった。神罰が怖いから浮気は出来ませんよ。


 さてこれからの事だけど……。リリムが食事を作ってくれると言うので、それまでする事も無く、リリムのベッドに横になっている。くんくん……布団からリリムの甘い匂いがしてイケない気持になってしまう。


 ……おっと、ちょっとヤバかった。だめだ思い出して興奮してしまう。


 リリムに呼ばれリリムの作る絶品料理とまではいかないけど、朝の軽い食事を食べて食後に入れてくれたハーブティーを飲みながら今後の事を考える。


 ひとまずエリス様のお陰で服の心配はなくなったけど、防御力はゼロのままなんだよな。


 魔法は使えるから、問題は無いのかな?あとは……武器とかはあった方がいいよな。……武器かぁ。


 俺がこれから先のことを考えていると、リリムが心配して顔を覗き込んできた。


「アリマ……もし、キミが良かったらだけど……ボクも……その、眷属探しの旅に連れて行ってくれないか?」


「もちろん歓迎するよ。っていうか、こちらからお願いしたいくらいだし。俺とずっと一緒にいて欲しい」


「んん?え?」(えぇ!?プロポーズ??)


「リリム……」


「アリマ、あの……不束者ですが……よろしくお願いします!」


 リリムのその蕩けるような熱い眼差しに、俺の心は蕩けてしまっていた。


「こ、こちらこそ、よろしく頼むよ!」


 じゃ、旅の準備とかもあるし……。


 ……そんなこんなで俺は、リリムと一緒に眷属探しの旅に出ることになったのだった。



◇◇



 スタール王国と呼ばれる国は、エリス神聖国の南にある大国で、エリス神聖国とスタール王国に挟まれた巨大な湖に浮かぶ島国がリリアス教国と呼ばれているらしい。


 距離的にはリリアス教国の方が近いので、先ずはそこに向かう事になるとの事だ。


 リリアス教国に向かう途中には、エリス神聖国の聖都エルスハイムがあるので、街道沿いに行くと先ずは聖都エルスハイムに入る事になる。


 ここから聖都エルスハイムまでは精霊の道を通れば5時間もあれば着くらしい。聖都はエリス聖教の本拠地だけど、正直エリス聖教にはあまり関わりたくない。



「聖都までは精霊の道を使って休憩無しで行けば5時間もあれば着くんだけど、途中休憩を入れるから、一応野営の準備をしておくよ」


 と言ってリリムは昼になる前に、もう旅の準備を始めている。

 さっきからサラサラの緑色の髪の毛が部屋の中で行ったり来たりを繰り返している。


「リリム?何か手伝える事は無いかな?」


「特にないかなぁ……それじゃ、そこのシートを畳んでおいてよ」


「うん、任せて」


「それから、もう少し準備に時間かかるから部屋で待ってていいよ?」


「分かった。それじゃ準備出来たら教えて?リリム」


 女の子は良く準備に時間がかかるって言うけど……これって、デートの準備じゃないよね?





あとがき


続きが気になる。更新頑張ってと思っていただけましたら

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